c-18「ゴブリンからの」
ヤマブキ達が見ている先へ視線を巡らせるとそこには、小学校低学年位の子供と幼稚園児位の背をした者がいた。胸に植物で作った何かを巻き腰蓑を履いた猫背で痩せた1人と、姿形は余り変わらないが少し背の低い1人がお互いに抱き合いフルフルと震えていた。
その様子とは裏腹に、目は落ちくぼんでいるが獰猛に釣り上がり、鼻は大きく前に突き出て鼻先には所々にイボが、口は横に大きく裂けギザギザとした歯が並び、耳は大きく尖り、手や足は大きく爪は伸び、肌は緑色で樹皮の様にゴツゴツし、人に恐怖感と嫌悪感を抱かせる容姿をしていた。
「あれはゴブリンね」
「おお、あれがゴブリンか。聞いた事はあるけど、顔とかすんげー怖いな」
「こんなところにゴブリンがいるわけないわ、もっと森の浅いところに居るはずだし、きっとこの騒動に巻き込まれたのね、しかし何故出て来たのかしら」
「魔力感知を使った時に何か見えたけどあいつらだったか、金太郎達も特に反応してなかったからほっといたけど、いや、金太郎は当てにならないか」
金太郎に視線を移すと未だに腹を出してフガフガ言いながら寝ている
「ゴブリンもだけど、魔獣や魔物の餌の1つとして大賢者が連れてきたのよね」
「まじかよ」
「繁殖力が凄いからね、しかしあんたの圧力に負けず良く近寄って来れたわね」
「何をしに来たんだろう?」
「弱い者がこの森で生きていくには、強くなるか、強い者の庇護下に入るか、種族として生き残るには減るよりも多く増やすかだから、多分あんたの庇護下に入れてもらおうと思ってるんじゃないかしら」
「庇護下にね~」
そんな会話をしている間にもゴブリン達がこちらへとゆっくり向かってくる。ヤマブキ達の唸り声が一段と激しくなると、ゴブリンは恐怖の為かさらに震えだし足を止めてしまう。
「ヤマブキ、やめなさい大丈夫だから」
山田がたしなめるとヤマブキ達は唸るのをやめ警戒しつつスッと伏せる。金太郎は相変わらず腹を出して寝ている。ゴブリン達はヤマブキ達の様子にまたゆっくりと足を進める。
「金太郎は案外大物だな」
そんな事を言っているとゴブリン達は恐る恐るヤマブキ達を気にしつつ山田の前までやって来た。山田はしばらくその様子を見ていると、ゴブリン達は跪き頭を下げて、背の高い方が何か喋り出した。が、声は不快な音を響かせ、ゴブゴブとしか聞こえず何を伝えようとしているのか全く分からない。ゴブリン達から少し獣の様な臭いもする。
「はーしょうがないわね」
その様子を見ていたアリーはそう言うと左のポケットに手を入れ目的の物を探しだし、頭上に掲げる
「テレレテッテテ〜翻訳コンニャグ実〜」
「それがスキルを与える実ってやつか。早速だな。しかし大丈夫か?その名前大丈夫か?みそ味じゃないだけ大丈夫か」
「何がよ?大丈夫よ。はい、口開けて」
ゴブリンの前だからビビる姿を見せられないと思ったのか、はたまた実の名前から変な味ではないと推測したのか、山田が素直に口を開けると、アリーはドングリ程の大きさの実を山田の口の中に投げ込む。山田はまたその実を噛んでしまう。
すると自分の中の世界樹に何かの実がなるイメージが浮かんだ。どうやら山田の体に備わった機能を開くと花が咲き、スキルを得る実を食べると実がなる様だ。
「う〜んグミみたいな食感で味はコンニャクみたいだけど、酷い味じゃなくて何だかホッとしてる自分と残念がってる自分がいるな〜」
「あんたが何を言ってるか分からないけど、これで聞き取れるし伝わるんじゃないかしら」
そう言われて山田はゴブリン達の方へ視線を移す。
「た、猛き獣を従えし森を統べる強き方、あ、会えて光栄ゴブ」
「おお、聞き取れるぞ、変な語尾がついてるけど」
「見苦しい姿で申し訳ないゴブ」
「そんな堅苦しい挨拶は良いよ、で今日はどうしたんだ?何か用かココノカトオカってか」
「・・・・・い、言いづらいゴブが、私達を貴方の庇護下に置いてもらいたいゴブ」
「良いよ」
軽い感じで即答する山田
「え?良いでゴブ?」
驚きガバリと顔を上げるゴブリン達。山田は右手の人差し指を自分の顔の横で立て
「でも1つ条件がある」
「じょ、条件でゴブか」
「申し訳ないんだけど、ちょっと修正して良いか?お前らが嫌だって言うなら、まあ、しょうがないけど、姿形に誇りを持ってるとか、でも出来ればさせて欲しいな〜、だって顔が超怖いんだもん。それにちょっと臭うしさ、痛くはないはずだから」
「よ、良くわからんゴブが、そんな事で良ければ自由にするゴブ」
隣の小さいゴブリンも頷いている。
「お前らはあれか?姉妹か?」
「そうゴブ、同じ同胞の150番目と190番目の姉妹ゴブ」
「大家族も裸足で逃げ出す数だな。そうかそうか姉妹か、そうだと思ったよ」
「兄弟姉妹は200ほどゴブ。でもほとんど食べられたゴブ」
山田には表情の判断はつかなかったが、少し悲しそうな顔をしている気がした。もしかしたら仲の良かった兄弟姉妹がいたのかもしれない。
「繁殖力が凄いと聞いてはいたけど、なかなかヘビーな人生だな〜・・・・・そうだ、その前に鑑定使うけど隠蔽とかカウンターとか無しな」
「良くわからんゴブが、好きにして欲しいゴブ」
「その意気や良し。レッツ鑑定」
山田は右手で作ったピースサインを横にして右目に持っていき左目を瞑る。必要ない動きだが。
名前ー無し
種族ーゴブリン
職業ー無し
<繁殖><悪食><探索><気配遮断>
≪称号≫
<太古の森の餌><なけなしの勇気>
「姉も妹も一緒だな、名前と職業は無いのか、沢山産まれるのと付けても食べられちゃうから名前はつけないのか、はたまたそう言う文化が無いのか、しかし餌って結構酷い称号だな、俺の前に来れたのはこの、なけなしの勇気って称号のおかげか」
「きっとそうね、ただのゴブリンがここまで来れるわけないもの」
「了解した。それじゃあ行くぞ」
山田がそう言うとお互い抱き合って身を固くして目をギュッと閉じるゴブリン達。
そんな様子を眺めつつ山田は<作画>スキルと<修正>スキル<デザイン>スキルを発動する。と同時にアリーがBGMとばかりに鼻歌を歌い出す。
まるで変身シーンの様に、抱き合っていたゴブリン達は離れ、腕を横にぴんと張り足も延ばし空中に浮きゆっくり回転する。まぶしい光が足元から胴体顔へと登っていき体全体が光に包まれる。ゴブリン達は眩しさに目を閉じる。
姉妹ゴブリンの足の光が弾けハート型になって消えていくと、汚く色艶が悪く樹皮の様にゴツゴツしていた足が、少し緑味を帯びた白さと潤いを持った可愛い子供の様な足に、その足に履いた真っ白い靴下とメリー・ジェーンタイプの青い靴がキラリと光る。妹ゴブリンの方は同じ様に色違いの赤い靴を履いている。踵と踵をを軽くトンと合わせるとハートが飛び消えて行く。
同じ様に手の光が弾けると、ふっくらとして柔らかそうな可愛い手と、腕には靴と同じ色の革の腕輪。
胴体の光が弾けると、服は白い丸襟の青と赤の色違いのワンピース。もちろん下着も履いている。
顔の光が弾け、姉妹ゴブリンはゆっくり目を開く、クリクリとした大きな目に、姉は柔らかく綺麗な琥珀色の瞳、妹は透き通った碧眼。鼻筋の通った小さい鼻、少し尖った小ぶりで形の良い耳、瑞々しい花びらを貼り付けたような柔らかそうな赤い唇、牙を並べた様だった歯は白く揃った美しい歯並びに、天使の輪が眩しく絹の様に美しい艶めいた柔らかくなびく黒髪のショートボブ。
姉妹が右手と左手を合わせて1回転すると髪とワンピースの裾をなびかせながらゆっくり地面に着地する。
可愛さをギュッと詰む込んだ様な容姿の子供達がここに誕生した。
「間髪入れずにレッツ鑑定」
名前ー無し
種族ーラブリン
職業ー山田の従者
≪装備≫
<山田のワンピース>
設定=各種耐性・各種強化・自動回復・自動修復・自動洗浄・温度調節
<山田の下着>
設定=自動修復・自動洗浄
<山田の腕輪>
設定=アイテムボックス・自動修復・自動洗浄・個人認証(山田・ラブリン姉)
<山田の靴下>
設定=自動修復・自動洗浄
<山田の靴>
設定=脚力強化・自動修復・自動洗浄・靴擦れ防止
≪スキル≫
<魅了><探索><俊敏><怪力><健康><器用><忍耐><身体強化>
≪称号≫
<山田の眷属><山田の加護><作り直されし者><アイドル><新種族><勤勉><忠誠><ちっぽけな勇気>
「え?何これ。種族変わってるやん。1文字変わっただけだけど、スキルも称号も変わってもうてるやん。名前付けてないのに眷属になってるし、何で?」
流石に年末年始は休んだので投稿できました。