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異世界鳥獣人物戯画  作者: エンペツ
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c-16「世界樹の恵みと魔力感知」

「わっはっはっはっは~アリーちゃん48の必殺技の1つドロップキックの味はどうだ。悪は滅びるのだ~!ゲップ。あらあたしとした事がはしたない」 


 アリーはまだ怒りが収まっていなかったのか、イタズラ心に火がついたのか、はたまた上下関係をはっきりさせておこうと思ったのか、その全てなのか、違う理由なのか、本人にしか分からないが、頑固な便秘が数週間ぶりにスッキリしたような晴れやかな顔をして、自分のポケットを漁り目的の物を探し出す。


「てれれれっててー世界樹の恵〜」


 世界樹を通しての山田の知識の受け売りか、アリーは以前山田もやったどこかの猫型ロボットの様に、お腹辺りにある右ポケットから、ポケットより明らかに大きい、ドングリほどの大きさの実を得意げに取り出し頭上に掲げた。


「あいたたたた」


 眉間を抑えながら起き上がる山田。そんな山田の前にふわりと飛んで行き、その実を突き出すアリー。


「この実を食べると、出〜来〜ま〜す」


「おい顔面から吹っ飛ばされたのはなんだったんだ」


「か〜ん〜け〜な〜い〜で〜す〜」


 一世代前の某猫型ロボットのモノマネを続けながら山田の鼻の穴に実をねじ込むアリー


「おいやめろ、鼻の穴に入れるなグリグリするな。奥に入っちゃうから、取れなくなるから、分かった、何か分かったから」


 鼻の穴にねじ込まれた実から爽やかな柑橘の香りが鼻腔に広がる。

 アリーを振り払うようにして手鼻の要領で片鼻を指で抑え、ふんっと鼻息で一気に実を飛ばし手で受け止めて、まじまじと観察する。鼻くそが付いているように見えるのはきっとこの実の模様だろうと思うが、指でサッと拭う。ササっと拭う。どうやら模様だった。

 山田は自分に鼻くそが溜るのか分からないが、自分の鼻くそが付いていた実を食べなくて良い事に少しホッとする。

 鑑定してみようと思ったが、さっきの出来事が思い起こされ、あんな事にはならないだろうとは思うがびびって躊躇してしまう。

 アリーに聞いてみようかとも思ったが、『あたしの出すものが信じられないのか』とか、まだとても短い付き合いだが大いに面倒臭い事になりそうな気がしてやめる。

 見た目がレモンに似ている為か見ているだけで口の中に唾液が溜まる。


「なあ、これってやっぱり酸っぱいのか?」


「食べてみたら分かるんじゃない?」


 モノマネと言えるクオリティーではなかったが、もうすでに飽きてしまったのか、山田の前を涅槃像の様な姿勢でフヨフヨと飛ぶアリーの口調は元に戻っていた。

 山田は暫く手のひらにある実を見つめていたが、ええいままよと一気に口に入れる。噛まずに飲み込めば良いものを何故か噛んでしまう。


「すっぱー」


 少し弾力のある皮を押し潰すように噛むと、見た目より明らかに多い果汁が弾け、凄まじい酸味の暴力が口の中を一気に侵食する。

 目を閉じ口をすぼめ身悶えする山田。急いで飲み込むが、唾液が出る辺りなのか顎の下あたりが痛い。


 すると自分の中に光を感じ、と同時に枝についた蕾のイメージが浮かび上がる。その光が蕾へと吸い込まれると、虹色の光をキラキラさせながら蕾がゆっくり花弁を開いて行く。花弁が開ききると眩しい光が溢れ光に埋め尽くされる。

 光はすぐに収まったが、眩しさに閉じていた目を逆に開けてしまう。アリーへ鑑定を使った時の様に目がやられたといった事もなく、光の眩しさに一瞬忘れていた酸っぱさがまた主張を再開しだすと山田はまた顔を顰める。


「10倍濃縮よ」


 そんな顰めっ面に、アリーが両方の手の平を開いて前に突き出し得意げに答える。何の10倍濃縮だよと突っ込みたかったが、口の中のすっぱさや眩しさや疑問。いろんな刺激と格闘している山田には無理だった。普通のレモンの酸っぱさ10倍濃縮なのか、ビタミンなのか。


「んんんんん」


 何とか絞り出した声は呻き声のようなものだった。

 急いでテーブルの上にある飲みかけのお茶をスキルで手元に動かして一気に口に流し込み酸味を流しなんとかひと息つく。


「うう〜まだすっぺ〜」


 すると、自分の中に淡く光る大きな木を感じる。意識を向けてみると、それはまさに小さな世界樹。

 その世界樹から細い管の様な物が手の先から足の先まで身体中へ張り巡らされ、虹色をした物がそこを流れている。枝には幾つかのそれぞれ色も形も違う花が咲いている。さっきの花もその中に咲いている。


「ほら色々感知できる様になったでしょ?」


「え?あ、いや、一つずつ処理したいんだけど」


 急かすアリーに言われ、自分の中に大樹を感じつつ山田は自分の内側へと向けていた意識をゆっくりと外側へと向け、自分の体を確認すると、虹色の何かが目の前をユラユラと立ち昇っていて見えにくい。見ている様でもあり感じている様でもある不思議な感覚だが、どうやら山田自体の魔力が邪魔をしているようだ。


「何だこれ、これが魔力か?なんか虹色の水の中にいるみたいで見えにくいぞ」


「それは多分あんたの魔力ね」


「自分の魔力が見えちゃってんのか、消すにはどうすりゃ良いんだ?」


「消しちゃダメよ、自分の魔力は見えないようにすれば良いじゃない」


「どうやってだよ」


「気持ちとか、気合いよ」


 アリーはテーブルへ戻って椅子に座りなおしケーキをパクリと食べながら答える。

 何か他に説明があるんじゃないかとその様子を暫く見ていた山田は、1度目を閉じ深く息を吸い、自分のオーラは見えない、自分のオーラは見えない、と心の中で唱える。ため息に近い息を吐き瞼を上げると、虹色が赤や青、黄色、緑と色んな色に変化しやがて視界がクリアになる。


「おお、普通に見える。って、え?気持ちの問題なの?」


「良かったじゃない、スキルのコントロールも覚えられて」


「え?そういう事なの?やっぱり気持ちの問題なのか?まあ、いいけど」


 いまいち納得できない山田は寛いでいる金太郎達に視線を移すと、身体を虹色のオーラがゆらゆらと包んでいる。と同時に何か力を感じる。さらに金太郎とヤマブキの胸辺りから山田の胸の辺りへと虹色の紐の様なものが伸びている。


「おお、見えるぞ、感じるぞ。・・・ってあれ?お前の魔力は感知できないぞ」


 目を擦りながらアリーをマジマジと見つめる。アリーは上品にケーキをスプーンで掬い、幸せを噛みしめる様に美味しそうに食べている。


「女には秘密が多いのよ」


「そうですか・・・・・魔力感知って、魔力ってこんなにはっきり目で見える様なもんなのか?もっと感覚的なもんだとイメージしてたけど、まあ見えてて感じてるっていう不思議な感じだけど」


 何か突っ込んだら駄目な気がして話題を変える山田。


「あんたの場合は体にもともと備わってる機能だし、そんなもんなんじゃない?」


 相変わらずケーキをパクパクと食べながらどうでもよさそうに答えるアリー。

山田は魔力感知を何度もオンオフしたりして確認してその度、おお見える、おお消えた、といちいち感動していた。


「あの実で出来るようになったんじゃないのかよ」


「ん〜、まあ、ある意味そうね、スキルを与える実もあるけど、あの実で閉じてた機能を使えるようにしただけ」


 一瞬考え、面倒になったのか口に咥えていたスプーンを山田に向けてフリフリと振りながら雑に説明するアリー。


「おい魔力感知ってスキルじゃないのかよ」


「スキルよ、でもあんたにはそういう感じで備わってるのも結構あるのよ、楽で良いじゃない」


 良かったわねとパクリとケーキを頬張る。


「いや、もうちょっと説明を」

「それより目を閉じてみて」

「って、ん?急にだな、流石にこれは警戒しちゃうぜ」


「いいから」


「おいおい、そんな2度も騙されると思ってるのか?俺もバカじゃないぜ」


 そう言って親指と人差し指で上下のまぶたを上げて、意地でも目を閉じるかと山田


「ああ、もう面倒くさいわね」


 そう言うが早いか、アリーは一瞬で山田の目の前まで行き、拳を握った右手と左手を同時に前に突き出し眼球にパンチする。少し回転を加えて。


「あんぎゃああああああああああああああ」


 目を抑えながら悶絶し地面にゴロゴロと転がる山田。


「ほら目を閉じてても分かるでしょ」


「いぎゃああああああああ!また目かよおおおおおおお」


 アリーが語りかけるが、それどころではない山田


「いつまでゴロゴロしてんのよ、休日のお父さんか」


「これが仕事の疲れを取ってるように見えるのか!どんな例えツッコミだよ!」


〈修正〉スキルを使って目を治す山田、だが目を開けるとまた殴られると思っているのか目は閉じたままだ。頬には少し涙の跡が見える


「お前は俺のサポートじゃなくて酷い目に合わせに来たのか?」


「そんなわけないじゃない、あとお目付役もね、いいから、ほら感じるでしょ、わかるでしょ」


そう言いながら山田の頭の上にふわりと座るアリー。


「何が?って、え?何これ、自分の周りに何があるか見えるというか分かるというか不思議な感じだ」


 目を閉じた暗い世界に虹色の粒子が対象の輪郭をキラキラと形取り動いている。自分を中心に360度の広範囲をマナを通して認識出来る。地面も空もまるで球体の中にいる様に。

 その世界に魔力の塊が山田の近くに幾つかとかなり遠く離れた位置の所々に点在している。もちろん金太郎達や、アリーの魔力は見えないがアリーの姿も象られ見る事が出来る。


「それが魔力感知よ、この世界はお母様のマナで溢れているからそういう使い方もできるってわけ、まあそんな使い方は普通は処理しきれなくて脳味噌が焼き切れちゃうけどね」


 大賢者のハイスペックというのはあながち嘘じゃなかったのかもと思いながら、またオンオフを繰り返し、おお見えた、おお消えた、とやっている。


「てか、目を開けてても分かるじゃないか、普通に丸見えじゃないか」


 目を開けて見ると視界が360度ぐるっとどころか地面も空も見える。脳がどういう処理をしているのか違和感無くそれが当たり前の様に見る事が出来た。少しの虹色を伴って。


「お、上手いわね〜、これが本当の丸見えってか」


「うわ~なんか恥ずかしい~意図してないところでってのはなんか恥ずかしい~」


 少し頬を赤らめつつ山田は誤魔化す様に目を開けたままでオンオフを繰り返している。


「まあ、目を閉じた方が分かりやすでしょ」


「まあ、確かに。要するに、対象の魔力が見えるし、周りの事も分かるって事か」


「だいたいそんな感じね。要は使い方よ、スキル一つでいろんな使い方が出来るってわけよ」


「これで死角なしだな、本気出せば結構遠くまで感知できるみたいだし、敵がどこから来ようと丸見えだぜ」


「隙あり!」


アリーはそう叫ぶと同時に山田の髪の毛をブチブチと毟り取る


「うぱぎゃあああああああああ」


この短い間に何度目かの絶叫をすると、頭を抱えて蹲る山田。


「油断大敵よ」


その頭からふわりと浮かび、毟り取った髪の毛を、西部劇のガンマンが銃口の煙を吹くようにふ〜っと飛ばしながら、どんな物にも完璧はないと諭すアリー。







 難しいですね~。読む人に理解と忍耐と努力を求めるのはどうかと思うんですが、しょうがないです。書いてるやつがあれなんだから。ご都合主義に拍車がかかるぜ~

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