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異世界鳥獣人物戯画  作者: エンペツ
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アバン


アバン=アニメなどにおいてオープニング前に挿入される部分



<都内某アニメスタジオの会議室>


 3人の男が座っている。並んで座る2人と机を挟んで1人が座り向かい合っている、絵コンテがそれぞれの前に、キャラクター設定、美術設定が机の真ん中をドンっと陣取っている。

 2人側は制作進行と、演出、対面の1人はアニメーターだ。演出とアニメーターの前にはお茶が入った紙コップが置いてある。

 演出が説明している箇所にあたる設定を、制作が探しアニメーターへ見せる。アニメーターは演出の言葉に時々頷き、制作が示す設定をみながら、赤鉛筆で自分の絵コンテへとメモを取っている。



「演出の田中さんです」

「演出の田中です。宜しくお願いします」

「で、こちらが原画の山田さんです」

「山田です。宜しくお願いします」

 そんな挨拶で始まった打ち合わせは、そろそろ終わりが見えていた。




「えーと魔法陣?って3Dとか撮影とかに素材無いんですか?」


山田は絵コンテのページをめくりながら聞く


「すみません、一から作って欲しいと言う事でして、しかもこの話数のここでしか出てこないので、張り込み素材用に作成をお願いしたいんです。出現の動き的なものはこちらでやりますんで、タイミングと素材をお願いします。ただ、ネットにあるものを丸パクリとかはやめて欲しいそうで」


田中は申し訳なさそうに答え、紙コップに入ったお茶を一口飲む、長く喋っていたので喉が渇いたのだろう


「はあ、分かりました。なんか適当にそれっぽく作っときます」


だったら全部やってくれよと思いつつ顔には出さずに答える


「すみませんがお願いします。何か他に聞きたいことはありますか?」


「んー、いえ、とりあえずは大丈夫だと思います。」


山田はそう言いながら赤鉛筆を置き絵コンテを閉じる


「では、作業していて分からないことが出てきたら、制作を通すなり、レイアウトに書くなり、聞いてください」


「分かりました」


「えーとスケジュールなんですが、来週の末目指しでお願いしたいんですが、他社さんの作品とかどんな感じですかね?いつぐらいから作業に入られそうですか?」


制作が話の終わったタイミングを見て聞いてくる


「そうですねー、今週中頃から入れると思います」


 会議室の壁に掛けられている何の飾り気もないシンプルなカレンダーで日付を確認しながら答える


「分かりました。では今週末に一度、まあ他社さんの状況も含めて、作業状況の確認のために連絡させてもらいますね」


「了解です。夕方頃ならつかまりやすいと思います」


「分かりました。では作業の方宜しくお願いします」


「「「お疲れ様でした」」」


 そして席を借りているスタジオへと戻り、打ち合わせした作品とは別の、席を借りているスタジオの仕事を始める。そっちのスケジュールがそろそろやばい。

 ちびた鉛筆や色鉛筆、修正用紙から切り離したタップ、消しカス、棚でごちゃごちゃになっている設定等、ちらかった作監机が状況を物語る。ゴミ箱にはくしゃくしゃに丸められた原画用紙や修正用紙が、今にも溢れ出しそうなほど山盛りになっている。


 スタジオの作画部屋には、仕事をしている者、仲間同士で喋ったり、制作と仕事の話をしている者、セリフを喋って尺を計っている者、イライラして貧乏ゆすりをしている者、何か食べている者、動きの確認に立ち上がって何かの動作をしている者、机に突っ伏したり寝袋で寝ている者、ノートpcやタブレットで動画を見ている者、携帯機やスマホでゲームをしている者等がおり、ガガガガと鉛筆を削る音や、紙やタップが擦れる音がする。それぞれが思い思いの行動をしている。

 なかなか混沌としているが、山田はこの自由な感じが好きだった。



 キリのいいところで休憩を取り、気分転換も兼ね本格的に作業へと入る前に魔法陣を調べ始める。まあ、丸パクリじゃなけりゃいいんだから、ネットにある魔法陣を少しアレンジすればいいかなと、適当に描きはじめた。ああでもない、こうでもないと、どうでもいいことにこだわってしまい、気分転換のはずが案外熱中してしまった。何個か描き終わり


「いでよ我がしもべ!なんちゃって」


 なんてふざけて魔法陣に手を置く。すると突然全ての魔法陣が光り出した。と同時に周りの騒音が搔き消え、山田は急に静かになった違和感と、魔法陣が光った混乱と驚きと不安でキョロキョロと辺りを見回す。

 すると、右隣のアニメーターが落とした消しゴムが、空中で止まっている。左隣の演出はクシャミをする寸前の顔で止まっている。後ろを見ると椅子から立ち上がろうと尻を上げた状態で止まっている監督。他にもマグカップに水を入れている途中や、飯を食べてる途中等、山田以外の全ての時が止まったかのように停止していた。

 異常事態にフリーズしていると、目の前の棚に置いてある、設定や自分が気分転換に描いた落書き、描きかけの仕事などの用紙がガサガサと揺れ、そこに描かれていただろう大きさのまま、キャラクター達が紙から抜け出す。キャラクター達は山田の目の前まで来ると、頭を下げたり、笑顔で挨拶したり、手を振ったりしている。呆気にとられていると、キャラクター達は楽しそうに嬉しそうに、各々の動きで山田の周りを回り始める。

「えっ!?えっ!?」っと我に返るが、自分の周りをグルグルと回るキャラクター達に、どうしていいのかおろおろしていると、キャラクター達はそんな山田の事など斟酌しないとばかりに輝き出し、どんどん加速していく。

やがて一つの光の帯になり、あっという間に、目を開けていられない程に輝き、山田の発した「嘘っ!まぶしっ!」という間抜けな言葉も飲み込み、光に塗りつぶされ、ゆっくりと光が戻ると、そこにあった人の痕跡は全て無くなっていた。




「あれ?あそこの席って空いてたっけ?誰も使ってなかったっけ」

「さあ、今使って無いってことはそうなんじゃないですかね」

「誰か入ってもらうか」

「まあ、空けててもしょうがないですもんね」

「そうだな」

「あとすみません、ここの一連のカットなんですが、なんか打ち合わせしていなかったらしくて・・・」

「え?まだやってなかったの?まずいじゃん」

「いやーそれが担当制作も演出も気がつかなかったらしくて、というか、もう打ち合わせを終えてたと思ってたらしいんですよ、さっき香盤表見て埋まってなかったんで、聞いたんですがね」

「もうあんまりスケジュール無いぞ」

「そうですね、まあ誰か当たってみます」



山田 貴之 35歳

その日、1人のアニメーターが少し?の迷惑を残して、この世界から消えた。

彼が存在していたという証拠も記憶も、全ての痕跡が消えた。

まるで、彼が始めからこの世界に、存在していなかったかの様に。






お読みいただきありがとうございます。

これが見切り発車の見本です。気分転換に書き始めました。

いつもは絵を描いて暮らしているのですが、文章で表現をするというのは凄く難しいです。

流石に魔法陣とか無理があるかな~とも思ったのですが、仕事中に死ぬとかは現実的にありそうだし、たまに話には聞くので避けました。

これからどうするか分かりませんが、基本テンプレだと思います。

アニメーターという仕事や能力を、拡大解釈&曲解し、都合の良い様に使って進めて行こうかなと思っています。

初めて物語を文章で表現するというのと、素人ゆえの拙さで、誤字脱字お見苦しいところもあると思いますが、温かい目で見守ってください。

どれくらいの頻度で更新するかは分かりませんが、よろしくお願いします



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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がアニメーターの能力でどんな活躍をするのか楽しみです。
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