計画
明後日愈々第四惑星に着陸する。私は、これから着陸までの計画を説明することにした。
「ではこれから、計画の説明をします。」
「今燕号は、第四惑星から約30万キロメートル地点にいます。予定では、明後日の早朝ごろには着陸態勢に入ることが可能になります。」
宇宙船の中の時間は、日本時間に設定されている。今の速度のまま航行すれば、48時間程で着陸が可能になる。今は午前5時32分。詰り、2日後の今辺りには着陸が可能ということだ。
「着陸態勢に入る前に、第四惑星を数周し目視で着陸地点の精査をします。ここで着陸地点の最終決定をし、着陸へと計画を進めます。ここまでで何か質問はありますか。」
「あの。」
ハルが声を上げ、間髪入れずに質問した。
「何故、目視なのですか?レーダー等の機器の方が正確ですよね。」
当然の疑問だ。勿論機器の方が正確ではある。
「機器の方が正確ですが、機器には心がありません。機器による精査は、数値やデータ上の最良地点でしかないのです。然し目視による精査では、着陸後の行動まで考えた上での最良地点を打ち出すことができます。勿論機器も使用しますが、飽く迄も念の為にです。」
ハルが納得のいかない顔で頷く。
「では続けます。」
「着陸後ですが、斥候としてトンぺに周囲の確認をしてもらいます。問題ないですか。」
「勿論ですよ!僕に任せれば地球外知的生命体なんて…」
無駄なことを言い始めたトンぺを無視して計画を説明する。
「安全確認が済み次第、私達も外に出ます。」
「機材の中に簡易的な乗り物があるので、必要なものを持って周囲の探索をします。」
「一ついい?」
ハナンが私を遮って質問した。
「もし、地球外知的生命体に遭遇したらどうするの?」
「その場合ですが、友好的であればコミュニケーションを図ります。」
「然し、私達に敵対的であれば話は別です。攻撃を仕掛けてきたときは応戦します。実はそれを見越して銃火器を積んでいます。」
「「「「え!」」」」
まぁ、驚くのも仕方がない。このことは私しか知らないことであったから。ただ、この人たちは射撃訓練を受けてきたのに鈍感過ぎではないだろうか。気づいているかと思っていたのだが。
「じゅ、銃火器だなんて…。上手く扱えるかな。」
「大丈夫です。どうせそんな存在は迷信ですから。」
「そうだよ!この僕に任せりゃハルが打つ機会なんて生まれさせねぇよ!」
「落ち着けお前ら。」
ハナンが場を静めた。
「そ、そうですよ。飽く迄これは最悪の事態です。もしもの話です。」
お願いだから起きないでくれ。確実にこの人たちは収拾がつかなくなる。
「これで計画の説明を終わります。」
着地してからのことなど今考えたら鬼が笑う。態勢に入れるまでゆっくりするとしよう。私が考えを巡らせていたその時だった。
「ちょっと。」
ハナンが私を呼び止めた。
「何ですか。さっきの計画に不備でもありましたか?」
「そのことについてだが、斥候にトンぺは不適当だ。」
そう言われればそうだ。トンぺはかなりのお調子者で有名である。そのような人は斥候には向いていない。然し誰に代役を務めさせるべきだろうか
「…確かに。トンぺの性格を考えると不適当ですね。」
「じゃあ何でトンぺに決めたんだ?」
「そうですね…。トンぺは何にも臆せず調査をすると思ったからですかね。」
「何故そんなに曖昧に答えるのだ。」
「なんとなく決めたのです。急にパッとトンぺが出てきたので。」
「でしたら、ハナンさんがやりますか?その方が私は安心するのですが。」
何だか優柔不断な自分に腹が立ってきた。
「いいぞ。断る理由はない。」
「ありがとうございます!」
そう言いながら私は自室へ入った。このことは明日全員に伝えよう。
「皆さんに計画の変更を伝えます。」
私は計画説明の翌日、全員を集めた。
「斥候についてですが、トンぺではなくハナンさんに務めてもらうことになりました。」
どの位間があったのだあろうか。その沈黙を破ったのは当の本人トンぺだった。
「なぜですか!私では務まらないとでも言いたいのですか!」
当然の反応だ。こうなることは予想されていた。私は用意していた応答をした。
「計画を見直したところ、その方が妥当であると判断した為です。」
「そうですか。まぁ、私の心は太平洋くらい大きくて深いので要求をのみますよ。」
なんて物わかりのいい人なのだろうか。その後の冗談は頂けないが。
「ありがとうございます。それ以外に何か意見等ありますか?」
全員首を横に振った。計画実行は明日。気を引き締めていこう。