オレンジ
オレンジ
机の上のつめたいオレンジ
手が当たって、ひややかだと思った
分厚くてつめたい皮の奥には
水分をたっぷりとたくわえた小さな粒が
ひしめき合うように詰まっているのでしょう
そのひとつひとつも またひややかで、
沈黙で、ただ凝集している
粒と水分と小さな泡と透明な薄皮。
それに、無数にはびこる白いスジ。
オレンジの内部を想像する
つめたい宇宙 静かな小世界
机の上のオレンジは
となりで私が紙に書きつける音を
聞いているでしょうか
内部にまで響いているでしょうか
コンコン、コンコンという振動で
小さな粒は泡を吐いているでしょうか