胸の傷跡を見た日
手術から数日後、病院ではじめて傷の検査をする。包帯をとって傷痕を見た。
わかってはいた。わかってはいたけれど、あまりにもショックだった。胸があったところは長い傷跡が残り腫れている。黒い糸で縫われている。
まっすぐに切れているだけかと思ったら、傷の上と下がすごく腫れている。特に上の部分の皮膚がボコボコだ。
真っ赤になっている傷はまだズキズキと痛む。下のチューブ用の2つの穴もすごく痛い。
一面に塗られた黄色の消毒剤、赤い傷跡、内出血の青色。あまりにもひどい。
自分の傷跡を見られない人もいるという。 辛いけれど、目をつぶる訳にはいかない。しっかり見つめて、病気と向きあおうと思った。
それでもやはり涙が出た。
それにしても、こんなにも凹凸がありで縫い目も汚いのは想定外だった。
胸のあった場所の下からぶら下がっている体液排出用のチューブ2本を抜いたのだが、これがものすごい激痛だった。
今まで経験したことのない痛みだった。
歯を抜くよりも、出産よりも痛かった。
抜いた瞬間汗が吹き出す。ぐったりして大泣きした。長い針金を体内から抜き出すような感じか。2本めが本当に辛かった。もう一回あの痛みを経験するのかと思うと倒れそうだった。
なぜこれほど痛かったのか後からわかった。ばい菌感染をしていたのだ。指先でさえ傷口に菌が入ると赤くなりズキズキして痛むのに、かなり大きめの胸の穴2つだ。そこから長いチューブを引き出すのだから、痛いはずであった。
その夜、高熱がでた。