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立てた。

「やったわね、おめでとうヴィンくん!」

「逆に今やっとなのか……と思ったけどね…」


8カ月。

俺は今つかまり立ちからの一人立ちという成長をようやくし終えたところだ。

前世もあって立つ事への恐ろしさは微塵もない。

が骨格の成長は吸血鬼の子であろうと人間の子であろうと同じらしく、”人間にしては少し早めの一人立ち”程度で収まることが出来て良かったと思う。

両親にこれ以上無駄な不信感など抱いてもらいたくはないし。

今まではハイハイで苦労しながら外に出るか両親に外に連れて行ってもらうかだった魔法練習がこれで一段と楽になるはずだ。

座ってしか両手が空かなかった頃より大分進化する。

サルから人間になった地球の歴史は凄いことだったのだと今更ながら実感した。





エーレンは最初から魔力を(無限)にすると飽きてしまうから、と言った。

ということは使えば使うだけと増えるってことではないか?…それも限界などなくやればやるほどやった分だけ(無限)に伸び続ける、そんな可能性がある。

気がついた俺は朝、顔を洗うのも水魔法(ヴァッセァ)に、飲み水も水魔法(ヴァッセァ)に、兎に角色々な場面で使いまくった。

これにより、不慣れによる魔力の抵抗は大分収まり、脱力感にも随分と慣れたように思う。

…ただ、水の温度を上げ下げするのはまだ難しく、術者の居る土地の常温しか出せない為に…毎回悲鳴をあげたくなる程冷たいというのが物凄い難点だ。



「よし、」


水魔法(ヴァッセァ)水球(オーブ)


俺は何も発さず魔法を構築する練習をしている。

…この世界の多くの魔法は詠唱がない。

想像力と魔法名を紡ぐだけの魔法は楽で分かりやすい。

だが、それって魔法出す前にネタバレしているのではないか?とも思った。

皆、魔法名を口に出してから魔法を構築する。

もしそれに反応出来るような反射神経を手に入れられれば、それに対応した反応が出来るのではないか。

そして、もし自身が無言で魔法を構築出来ればそのヒントを与えずに戦闘を行えるのではないか。


この世界は楽しいけれどエーレンへの風当たりがどの程度のものなのか俺はまだ知らない。

けれど少なくとも邪龍の(しもべ)という称号を得ている俺は非力ではいけないような気がするから。


……ん?そう言えば称号ってどうやって見れるんだろう。

教会でも行くのかな?

もう少し話しても大丈夫な歳になったら両親に聞いてみるか。



水魔法(ヴァッセァ)水球(オーブ)


うん、大分ペシャらないようになってきた。

分裂も…OK、それどころか。


水魔法(ヴァッセァ)水針(エギーユ)


少々物騒だが水は威力さえ変われば氷に成らずとも武器になることも確りと証明された。

納得の出来だ。

これはもう合格点だろう。

立つ練習と魔法の練習を同時に行っていたから完成が遅れてしまったが次からはそんなことがないようにする。

そして、今回の本命。



「………水魔法(ヴァッセァ)氷剣(グラースサーブル)】」


父が嘗て使ってくれた魔法。

実はこれ、結構難しい。

何故ならただの水剣(サーブル)であってもそもそも球や針と違って形が複雑だからだ。

おまけに凍らせなくてはならない。

だが現実は凍れと想像して直ぐに凍るわけでもない。魔力が(ハテナ)信号を送ってくるのがこの身体で分かる。

言うことなんて聞いてくれやしない。

……そしてそちらに集中していると、


「冷た……っ」


とても持ちたくない柄も冷たい氷剣(グラースサーブル)(威力も足りない&イマイチかっこ悪い&そもそもほぼ溶けている)のが出来るのだった。

無言どころか魔法名を口に出しても不合格。

それを見て父はそんな簡単に越えられてたまるかと笑う。

くそ、要練習だ。





雪を溶かした庭に父と二人で居る。


「今日は土魔法(テール)をやるよ」


水魔法(ヴァッセァ)の治癒魔法、温度変化はかなり子供にとって高度な技術なので鍛錬を怠ってさえいなければ年とともに出来てくるとのこと。

0歳8カ月などで魔法鍛錬をしている人間など他に居ないので判断基準は不明だがもう十分な合格点だと顔を引きつらせて父は笑った。



「じゃあまず基本から。

土魔法(テール)(トルー)】」


父が指差した場所に魔法陣が浮かび煌めくと5cm程度の穴が開いた。

…地味、だな。

ただ戦闘の時そこに足を取られるのは地味に痛いかもしれない、が。

魔法陣が浮かび上がった所をわざわざ踏みたいとも思わないし…いや、先に罠を仕掛けておくという面では必要か?

俺の微妙な顔を見て父は笑った。


土魔法(テール)は今あるものを借りる魔法なんだ。

たとえばこんな風に、

土魔法(テール)防壁(ルンパート)】」


手の先に魔法陣が浮かぶと周囲の土が寄せ集められ大人の頭まである防御壁が3mの横幅を持って出来た。

叩くとしっかり堅い。


「でもこれ微妙な防壁なんだけどね、本当はもっと堅くするんだ。

でも…どう?ちょっとはやる気出た?」


やっと歩けるようになった程度の身長だ、この防壁が物凄く高く(そび)え立っているように見える。

ああ、確かに。子供のやる気を出すには十分だ。

俺のやる気の無さを見透かされていたようで少し恥ずかしい。

こくりと頷くとやってみた。


土魔法(テール)(トルー)】」


そういえば自分と離れた所に魔法陣を置くのって初めてで勝手が分からない。

手を通して魔法陣に魔力を吸収されているのにその間には何も見えない。

必死に5cmの穴を想像し、やがて出来た。


…心なしか水魔法(ヴァッセァ)より大変だった気がする。


それは父も感じていたようで、


水魔法(ヴァッセァ)の方が適性がありそうだね」


と笑った。

土魔法(テール)で苦労するなら絶対苦労する光魔法(リュミエール)はどうなってしまうのだろう。

溜息が出かけた。

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