表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐男さんは最低野郎  作者: にゃるらとほてぷ
第一章『一週間くらい引きこもる話』
1/8

0話

『フリーガイア・オンラインへようこそ!』


 女性の機械音声の声と共に景色は一変し、一瞬だけデジタルの発光現象の眩さに眼を閉じた。


次に眼を開けた時には、広がるのは草原や森林等の大自然と遠くに見える町並み。自分の周囲には同じようにログインし始めた人間が多数見えたが、別に気にする事も無く一気に町へと駆け出していた。


[始まりの町]


最初にどのプレイヤーも訪れる事となる場所なのではあるが自分の目的地はそこには無かった。




 世界初とも言えるVRMMO『フリーガイア・オンライン』


月に人類が普通に行ける程度には発展している現代。VR機器は元々が意思疎通が困難だったり終末期の患者向け、医療用機器として開発が進められていた。


それが民間へと浸透していくのには時間はかからず、国家プロジェクトの一部として開発にはかなり力が入れられていた。


そのせいでまた消費税が上がった事には眼を瞑ろう。


かくして、紆余曲折を経てようやく民間用としてお値段が徐々に下がり出して来た頃。満を持して販売されたのがこのゲームである。


ちなみに現在のフルダイブ型VR機器の値段は10万円から20万円という相場で、このゲームのパッケージ版については2万円という良い値段をしている。それでも売れに売れてテレビのニュースには長蛇の列が出来ているとの事。


月額課金1000円という低価格で、課金についてはサブアカウントの取得・アバターの容姿変更の二種については2万円以上とかなり高額。


ゲーム内で役立つアイテムについては実装しないとの事で、コラボグッズは実装したとしても初期装備品程度の効果しか無いとの事。


このゲームの世界設定は地球が一度崩壊し、その後に再生した世界との事。かなりざっくりとしていたり、情報はあまり開示されていない。


それについては理由があり、このMMOでは一から自分達で作り出すという事がテーマらしい。当然ながら、それだけはつまらないので、剣と魔法とモンスターのファンタジー要素が存在していた。


金銭の単位はゴールドの設定で、1日は24時間で、9時から15時で昼。15時から21時で夜。21時から3時で昼。3時から9時で夜というローテーションで6時間事に昼と夜が切り替わる。この時間設定については製品版となった現在では、プレイヤーのアンケートにより変更される可能性があるとの事。


内容については自由度の高いスキルLV制のMMOで、HPやMPの表示はゲージのみで数値は無し。ステータスについては最初から無しで、好評であれば世界各国にも配信予定だとかどうとか。


このゲームの特色とも言える自由度―――はっきり言って、何でも出来るの一言に尽きる。


現段階ではグランドシナリオの実装も含めて未定ではあるが、第二の人生を過ごすという意味では最高の環境だろう。


元々は寝たきりの病人等の医療用として開発が進められていた経緯があるのだが、制限を解除すれば性行為も可能である。


………一部のネットユーザーは「ガタッ」となった事だろうが、大丈夫だ期待してくれ。


ゲームにログインしてシステムを変更すれば現実と間違うような感覚を楽しめる。


そのせいでβだと何人ものプレイヤーがパンツの中身がリアルと同期して大変な事になった事か…全裸待機しているユーザーも多いとの事。ただし、そういう行為をする場合にはそれなりの制限を伴うという事は当然の話である。


第一の関門として、PC同士で…となるとお互いの同意の上というのが必須条件だし、NPCとも出来るが人間と変わらぬ知性や感情を持っている為に簡単にはいかない。


ナンパしろ、会話しろ、話かけろ、私だっておんにゃのこに簡単に話かけるって無理だと思う。


強姦ですって? 逮捕されますよ?


そういう事をする場合、条件はお互いの同意。


あとは年齢制限……法律って厳しい。


所詮は管理しているのは主にAIだろ?とβユーザーの有志達がクラッキングを仕掛けたが……結果は全滅し、無茶しやがってというアスキーアートで掲示板は埋まっていた。


触らぬ神に祟り無し。世界のトップとかいうクラッカー集団も参戦したらしいですが、軒並み逮捕されて警察の皆様もホクホク顔らしいです。


ついでにリアルマネーでの現金取引についても高性能AI様が監視なされているという事なので、発見次第即終了という具合らしい。


一応、大規模な都市には風俗街もある………のだが、未成年者お断り。ついでにお金はたっぷりかかります。後は病気を保有されている方もいらっしゃるので注意してください。


あ、自分ですか? 勿論 行きましたとも。ええ、行きましたよ。すっごいお! 人間ってエロスに対してはもう半端じゃないくらいに高い技術力を発揮しますね。


偶然にも開発スタッフの方とお話する機会があり、お話を伺った所………………


『確かに女性スタッフには白い目で見られたさ………でもね、エロは必要なんだよ。ああ、勿論ボクはDTだ。でも……だからこそ中身にはこだわったんだ。まずシリコンで――――――』


とまぁ、小一時間は力説され――――――そして握手。ようやく2・5次元で本当の嫁を手に入れたと……スタッフさん、あんた最高だよと声を大にして言った。


 他にも各種、何でも出来るというのが売りなのだが………そんなリアル要素が高めなこのMMOなのだが…ただし、その難易度は非常に高い。具体的に言うと「お前ら、今日から原始人からスタートな。」と言われるようなものである。


それについては町並みを見ればすぐにわかる。


城壁を抜けて町に入ると…その町並みはかなり汚らしい。ゴミとかは落ちてないにしても…町並みがボロいし、用水路はあるっぽいがあまり近くには寄りたいと思わない。


文化レベルに関しては中世ヨーロッパよりも下に設定されているらしく。プレイヤーへ支給される初期装備はいずれも木製である。


一応は店売りには鉄製品もあるので、これはβテスター達からの多数の要望により改善された……まぁ、これについてはまだマシという程度だろう。だからと言ってそれなら生産職が優遇されている―――というわけでも無い。


 例えば剣を作るとしよう。その時にどうやって鉄鉱石を溶かして、形を整えるのか。そもそも鉱石の分別は? 魔物から素材を剥ぎ取ったとして革はどうやってなめすのか? 一応の救済措置として高性能AIを導入しているNPCに弟子入りする徒弟制度や、調合等のレシピブックも存在している。生産職でさえ、この有様である。


 そう…これだけでもお腹いっぱいなのに問題なのはモンスターとの戦闘もあるのだ。


VRについては、それなりに普及してきたと言ってもまだまだ一般向けとは言えないし。そもそも、問題はそこじゃない。もっと分かりやすく説明しよう――――――



「ぎゃあああああっ!!!」「えっ、これ、はや――――」「嘘っ、ちょ、まっ!?」



遠くから聞こえてきた悲鳴…それが答えである。


「野生の中型犬以上のサイズの犬に襲われるって…現実じゃまず無いからな。」


 ある程度の武道を身につけているならともかく、一般人の素人がどうにかなるようなもんじゃない。自分にしても今は懐かしい思い出である。この周辺だと狼がポップするが、一番印象に残っているのはゴブリンである。


ゴブリンが雑魚って嘘だ。あいつら、集団戦闘をこなす狩人である。初期でどうにかなるとしたら周辺地域で沸く兎くらいだろう。


先程のは正式名称は『ウルフ』でただの狼です。続いて兎と言ったのは正式名称『一角兎』角の生えた兎で人間を襲う。動きは二種類とも素早いが、兎の方はまだ狩りやすい。基本は突進だけなので回避して攻撃すればどうにかなるもんである。


もっとも、戦闘に関しては救済措置としてスキルを所持していれば動作サポートのアシストが働くのでどうにか身体は動くし、ようはなれである。その代わり、アシストを多様していれば弊害としてスキルLVが上昇しにくいという欠点もあった。


おっと、まだ足りない。このゲームには餓死が存在している。食べ物を一定時間摂取しなければステータスが低下するし、じわじわと体力が減って死ぬという事もある。後は水分の摂取も必要でかなりリアル志向のゲームと言えるだろう。ぶっちゃけマゾい。


回復アイテム?そんなの高額に決まってます。薬草を拾う? 鑑定が無ければ見分けられないし、初見だとただの草です。あ、毒草も混じってますよ。


武器が壊れた? じゃあ、直してください。直せないなら新しく買え。金が無いなら働いて返せ。


唯一許されているのは睡眠によるステータス障害くらいで、それはまぁ人間寝なきゃ死ぬだろってそれは大丈夫らしい。


――――――念の為に、忘れない内に途中で寄り道してNPCが開く店で、初期所持金として支給されている1000Gを全て使用して食料品を購入した。


 そうこうしている間に、目的の場所―――都市間トランスポーターへとやってきた。始まりの町の中心部に存在しているゲート。マップ構成に関しては地球に似せている。さらに日本全国各都市のサーバー拠点を結ぶゲートで、現在居る場所のマップは東日本の東京エリア。


αからβまでどっぷりとこのフリーガイアを楽しませて頂いているが、こんな大都市エリアでは狩場どころか生産拠点となる場所までぎっしりとなるだろう。だから、早々に東京からさよならして目的地は……


「北海道が二箇所に東北が一箇所、東京エリアは二箇所、関西も二箇所か…後は四国と九州関係………んー、どうするかな。」


各エリアともにそれぞれ人間やエルフ、ドワーフ、獣人、竜人、魔族等が小規模ながら国家として統治しているエリアとなっている。


 最低でも一ヶ月は狩場は満員御礼になると予想して人の少なそうな地域を考える。かと言って、人が少なすぎれば何かとそれはそれで問題だろう。ソロプレイ専門だとしても生の情報が欲しい場合もある。迷っていても時間の無駄だし、せっかくのスタートダッシュである。すぐに迷いを振り払って選ぶのは――――――


『北海道―――釧路エリアに転送致します。』


南の方は何だか暑そうだし苦手意識がある。それに場所からして、北海道の方が今回のプレイスタイルに向いていあるだろうという事で選択した。




ご紹介に遅れました、PC名は『ハンニバル』と申します。


実は回線落ちしまくりのログイン祭りにならないかと心配していたが、そんな事は無かった。


 アバターの性別は男性。外見年齢は20半ばくらい。種族については人間・エルフ・ドワーフ・獣人と多種多様だけど今回はフォクシー(♂)を選択、狐ですね。種族の方は獣人系統に分類されます。


見た目的にはアニメに出てくる黒髪赤目の執事っぽい優男系…良いじゃないか、せめてアバターくらいはこういうのを許してください御願いします何でもはしません。身長は実際と同じで178cm。体型は標準体型。


服装は布の服上下である。狐の耳と尻尾もあるのだが、こちらは出し入れ自由。めんどいので今は収納状態で普通の人間にみえます。


 ここで種族について軽く触れておく。選べる種族は人間・エルフ・ドワーフ・獣人系複数・悪魔からドラゴニュート系等など無数にある。とは言っても、基礎となるアバターの外見に差があるくらいで大きな差は無い。


将来的に種族特性を追加するが、このゲームではプレイヤー自身の技量に優先されるし。多少、高額ではあるがアバターの容姿変更を使用すれば大丈夫との事。


 続いてスキルの話になる。αからのテスターで、特典として通常は初期のスキル枠は10なのだが。βからのテストプレイだと追加1枠。数少ないαからのスタート特典としてさらに追加1枠で12枠。


スキル枠についてはスキルの総合レベルが一定値を超えたり、イベントの上位特典で追加されたりするらしい。それにも制限があるのだが…他からしてみたらチートやチーターやと罵らせそうな現状だが、報酬としてはもっと余分に請求したいくらいなのだ。


 実を言えば、この『フリーガイア・オンライン』は初期のテスターからしてみたらバグが満載であった。歩けない、動けない。そんなのはまだ良い方である。突如、全身に激痛が発生したり。ログアウトのボタンが消失していて「えっ? いきなりデス・ゲームですか!?」と驚いた。


会話してたらNPCの首が360度回転し続けた? そんなの序の口ですよ。ちょっとトラウマになりかけたけど…先程の初見プレイヤーのように、狼に美味しく内蔵を食べられた事も何度もあったけど……


本当にこれゲームになるの?と疑問視していたが、テスターという名の人体実験の被験者として最後まで残っていた事もありこのような特典を頂いたのである。βテストの時など、歩いても唐突に下腹部に洒落にならない痛みが訪れたりもしないし。


ログインした瞬間に高度5000mからの紐なしバンジーを体験する事も無いとわかった瞬間……思わず涙した。感覚設定が通常では50%、それがいきなり100%になるとか怖いです。本気で何度死んだと思った事か………


心折設計のゲームですら中々に見られない驚異のバグ率である。


 最初の頃は絶対に人体実験だよな…と思って、開発スタッフを訴えようと思ったが。菓子折りを持ってお詫びに来るくらいにガチでバグ満載だった――――そんなこんなでαからの参加者である最古参の自分はβまで持って行けた事に本当に感謝されてしまった。


 そしてとうとう製品化である……感慨深いものである。スキルレベル制で、スキルレベルが上昇すればSPスキルポイントを入手出来て、それに対応して新しいスキルを覚えたりというシンプルな定番システム。それなりに育っていたものの、βからのテスターも含めてスキルLV等はリセットされてのスタート。


さてさて、改めて数百種類を軽く超えるスキル群の中から最初に選択したスキル構成はご覧の通りである。



 スキル12/12


 《農業入門Lv1》《林業入門Lv1》《木工入門Lv1》《石工入門Lv1》

 《料理入門Lv1》《鍛冶入門Lv1》


 《身体能力強化Lv1》《隠蔽入門Lv1》《初級斧Lv1》《初級槌Lv1》

 《水魔法Lv1》《土魔法Lv1》


 スキル控え


 SP 0



 戦闘?何それ美味しいの?というガチ生産職系の構成となりました。これから北海道というエリアに行くまさに屯田兵スタイル。


 どうしてこんなスキル構成にしたかって理由は単純である。このゲームの自由度の高さを象徴するように、土地を自由に開拓して拠点を立てる事も出来るのだ。【生産者セット一式】の中には「土地購入権利書」が付属している。そのアイテムを使用すると一定区画の土地が無料で購入出来るのだが、これには若干裏がある。


 具体的には東京と北海道では購入出来る土地の面積に違いがある。この情報についてはWikiにも流れてないので知っている人間は限られている。


 あ、それとパッケージ特典として付属されていたアイテムもあったんですが『生産者セット一式』にしました。さらに、βからのテスターにも同じ物が配布されたけど、追いオリーブオイルならぬ追い『生産者セット一式』を選択。α特典もあるでよ!とどめの追い『生産者セット一式』で三倍どん。


 なにぃ? まだ足りないだって? 実は土地権利書だけもう一枚あるんですよ…一度、洒落にならん激痛をログイン中に味わいまして。その時にお詫びとして請求したのがこちらにありますので―――――合わせて四枚の土地購入権利書。北海道エリアなら4ヘクタールの土地が購入可能ですってよ奥様。


東京エリアだと四枚でも1ヘクタールとの事。利便性を考えれば確かに東京エリアは魅力的ではあるが、初期から土地を好きに開拓して生産スキルを上げ放題だと考えると旨みは大きい。理由は他にもあるが、とにかくゲートによる転送がスタートするまで待機となる。

 

 






















 念の為にログアウトボタンが存在するかどうか確認した…うん、大丈夫だ。


 デ、デス・ゲームにはならないよ! 信頼と安心のフリーガイア・オンラインだお!








9月30日、多分 最終修正?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ