第1話 幸福な結末への問い
今日の授業と創薬研究を終え、日が暮れていく。
貴族の在り方について、礼儀作法、領地経営、歴史の勉強。
頭がどんよりとして重い。
疲れた――。
でも、貴族だからしっかりと学ばなくてはならない。
カーテンを開けると、月明かりが静かに私室を照らした。
――私、リリアーナ・フォン・フローレンスは、今日も恋愛小説を手に取る。
2つの名門の貴族。
その男女が周囲に反対されながらも、逃避行をしようとする物語。
彼らは逃避行を決意するが、誤解と悲運が重なって結局結ばれなかった。
私は本を閉じ、黙り込む。
――また、『結ばれなかった』のね。
私たち貴族の令嬢で流行っている恋愛小説は大きく分けて2つ。
王子様と結ばれるサクセスストーリーか、禁断の恋の物語。
前者は子供向けっぽく、少し物足りない。
後者は甘く切なく、心を揺さぶるけれど――結末は悲しいことが多い。
それも、結ばれるところまで行くことすらない。
結ばれた後に悲劇で終わるのではなく、結ばれない悲劇が描かれる。
どうして、こんな結末が多いのだろうか?
作者が思いつかないから?
……しっくりこない。
さっきの小説は描写の端々に、作者の技量が感じられた。
序盤・中盤の方は切なくも甘い――そんな恋が描かれていた。
とても生き生きとした表現で、私も読むのに熱中した!
きっとこの作者もそんな場面をずっと書きたかったのでは?
……なのに、物語は、終わりに近づくにつれて、世界に引き戻されるかのように悲劇へ向かう。
それではまるで……。
――ふっ、と卓上の蠟燭が消える。
部屋はより暗くなり、唯一の光源は柔らかな月明かりだけになった。
夜も遅い。
明日もまた授業と創薬研究の日々が始まる。
今日はもう眠るとしよう。
ベッドの中に入り込んで目を閉じると、恋愛について考えてしまう。
私はどんな恋をするのだろうか?
私の恋も、あの二人みたいに切なく甘くなるのだろうか?
――私は幸せな結末を迎えられるのだろうか?




