6 ハンターの奇襲と、俺の『融合』
縮む力は強力で、あっという間にカメオの大口が迫る。
舌を戻す勢いそのままに、バグンッと一飲み。
俺はカメオの腹の中へと消えていき――とはさせねえよ!
カメ野郎の口の中で、俺は怒鳴る。
「くっせー! よくも俺を食いやがったなっ。
足が折れちまったじゃねーかっ。
てめえの養分をよこしやがれっ」
俺はギャラクティック・リーパーの愛用キャラ、ガルド13の能力を舌に捕まった時点で発動させ、カメレオンと「融合」していた。
この7年間、ただ稽古で、指を飛ばされていただけじゃない。
俺はこの7年で、自在に能力を発動させるコツを掴んでいた。
未だに使える理屈はよく分からないが、使えるなら使わなきゃもったいない。
俺の体から這い出る、何十本もの「融合管」が、アクセル・カメオの体内を蹂躙していく。
俺はアクセル・カメオとなった。
収まりきらない白銀の融合管が体表面に現れて、幾つも垂れ下がる。
鉢植えに収まらない木の根が、飛び出したような感じだ。
左右別々に動く目玉の視界で酔いそうになるけれど、何とか慣れるしかない。
俺は体長3メイルの魔物となって、闇の森を爆走する。
「GARARARARA!(速い、ヤバい、気持ちい―!)」
場所は分かんないけれど、アテが無い訳じゃない。
デス・テンタクルは、ゴブリンを好んで食べる。
うちの家庭教師の座学で、そう習った。
コードウェル家は国境を守る要なだけあって、子供の頃から「闇の森」の知識を叩きこまれる。
ゴブリンはとても繁殖力が高くて、無限湧きみたいに増えていく。
そんなゴブリンは魔物たちの格好のエサとなっていて、別名「森のごはん」と呼ばれていた。
集落はだいたい沢の近くを歩けばぶち当たるので、俺はそこら辺を重点的に回ることにした。
沢を何本か爆速で回って、該当の集落がヒット。
デス・テンタクルは食事中だった。
夜行性のイカは、闇夜に紛れて何十本もの触手を伸ばし、ゴブリンの寝込みを襲う。
触手には、触れると針が飛び出す仕掛けがあって、それに刺されると痺れて動けなくなる。
そんな触手に、ゴブリンが20匹以上絡みつかれていた。
そいつらが逃げることができず、すすり泣いている。
月明かりの下、放射状に延びる触手の中心に、こんもりとした大きな影が薄っすらと見える。
あれがテンタクルの本体だろう。
俺は木の裏に隠れつつ、右目でイカの食事を眺め、左目で辺りを見回した。
(冒険者たちは何処にいるのさ?)
討伐に来たはずの部隊が見当たらない。
(何してんだ? 今食事中で襲撃する絶好のチャンスだろ?)
キョロキョロしてたら、背後に気配を感じた。
俺はアクセル・カメオの本能で、首を180度回し、ピンク色の舌を闇の奥へと飛ばす。
舌先に何かが張りついて引き戻してみれば、ハンターが一人くっついていた。
そのまま丸呑みにしちゃったので、慌てて吐き出す。
カメオの本能が、吐き出したくないと駄々をこねて大変だった
3分ほどかけて吐いたら、ハンターがぐったりしている。
(なんかごめん)
俺はアクセル・カメオから抜け出て、呻いているハンターの首ウラに、右手を融合させる。
ガルド13のスキルは便利だけど、融合できるのは、一回に付き対象は一つだけ。
そこが面倒くさいけれど、何体でも同時に融合できたら、ギャラクティック・リーパーのゲームバランスが、アホになってしまうからなんだろうなとは思う。
融合から外されて、アクセル・カメオがきょとんとしている。
ちょっと、きもかわいい。
「カメオ、僕の言葉が分かるでしょ。ここはもう良いから、どこかに行きな」
カメオは、俺の言葉が理解できてビックリしていた。
「お前の背骨に、融合管を一本残してある。それを通じて、僕の言葉が分かるんだよ。
ここは戦場になる。死にたくなかったら早く逃げな。
すぐそばに、デス・テンタクルがいるから」
それを聞いたカメオが、猛ダッシュで森の奥へ消えて行った。
俺は、うつぶせで倒れているハンターに話しかける。
「他のハンターたちは、何処にいるの?」
「う……う~ん」
俺はちょっと延髄をくすぐってやる。
「おきて」
「あひっ」
「大きな声を出さないでね、直ぐそばにテンタクルが居るんだから」
「かっ、体が動かねえ」
「大丈夫、直ぐに動くようになるから。ハンターたちはどうしたの?
50人以上来ているんでしょ?」
「誰だ、てめえはっ」
「誰だっていいでしょ、そんなこと。それより質問に答えて」
融合している俺にウソは付けない。
「がっ……ぐっ……。少し離れた場で待機している。俺は監視役だ」
「なんで討伐しないの?」
「馬鹿か、夜行性の魔物に今挑んでどうする。
朝方の、活動が鈍くなる時間を狙うんだよ」
ああそうか、たらふくエサを食って、ぼうっとする所を待っているわけか。
「なるほどなあ」
ゲームだと制限時間があるしな、ギャラクティック・リーパーをやってると、そこに気が回らない。
そういうところ、俺は抜けちまうんだな。
朝駆けの奇襲、いいねっ。
けどなあ――




