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11 俺の秘密基地はゴブリンの村

 

「うおおおおおおおお!」


俺は闇の森を駆ける。

ゴブリンの集落を目指して。


あれはちょう一年前だったかなあ。

デス・テンタクルを始末したあと、何だかゴブリンに懐かれてしまった。


俺の体の一部である「融合管」が入ってるから、そうなるんだろうけどもさ。

VRMMODGAWFSABTULS時代とは違って、その懐き方が生々しいんだよ。


ゾンビみてえに、俺の指示を待つんじゃなくて、俺が近づくと嬉しそうな顔しやがんの。

そんな顔されると、俺だってまんざらでもないだろ?

なんだコイツら、顔はいかついけどカワイイな♡ってさ。


それで、イカのせいで村を失ったから、村造りなんかも手伝ったわけ。

ちょくちょく、通うようになったんだよ。


でコイツら「森のごはん」なんて言われているだろ?

放っておいたら、そこら辺の魔獣に食われちまう。

せっかくスタートアップから手伝った村を、荒らされたらムカつくだろ?


だからあの時、一緒に融合管を仕込んだアクセル・カメオを、警護に付けてやった。

1匹じゃ心許ないから、計8匹。

新たに融合管を仕込んで、集落を守らせた。

とまあこれが、俺と秘密基地2号店の馴れ初めだった。


「おおおおおおおお!」


俺は今、その2号店にダッシュで向かっている。


「はあ、はあ、はあ、はあっ」


ガルド13だったら、フィールドを駆け巡って、30㎞、40㎞余裕で走ってたんだけどなあ。

8歳児だからって、息切れするのは情けない。


「ふう、ふう、ふう、ふうっ」


真夜中でも、ゴブリン村はみんな起きている。

森のごはんであるゴブリンたちは、熟睡なんてことはしない。

鹿や馬みたいに、ウトウトを十数分だけ繰り返す、超眠りの浅い種族だった。


俺の姿を見てゴブリンの子供たちが、嬉しそうに寄ってきた。

何て言うか、角の生えた緑色のパグ犬が、2本足で寄ってくるような感じ。

見慣れるとカワイイ。


「ガウッ、ガサチンッ(あ、ガサチンだっ)」

「ギャウッ、ガサチンッ(わーい、ガサチンっ)」


俺はゴブリンたちに、ガルドサーティーンと名乗っていた。

けれどコイツらは上手く発音できず、俺をガードサーチーンと呼ぶ。

それが更に(なま)って、今では「ガサチン」と呼ばれていた。


「よう、お前ら邪魔するぜ。村長いるか?」

「ギャワワッ(いるよ、ねえ、おみやげは?)」

「ギャウン(アンズほしい)」


「今日は急に来たんで、何もねえよ」

「ク~ン(え~っ)」

「ブフッ(けち)」


「悪いな。今度、吹き矢作ってやっから」

「ガウッ(やったっ)」

「ギャブ、ガサチンッ(ガサチン、やくそくだよ)」


こいつらは人間の言葉は喋れないけれど、村のゴブリン全員に融合管を仕込んであるから、思念波(テレパス)で意思が通じ合えた。

俺はガキたちをまとわりつかせながら、村長の住む掘っ立て小屋へ向かった。


「こんばんは村長」

「ガウッ、ガサチンッ(おやガサチンどの、どうしました?)」


村長は、囲炉裏端にどかりと座り込んでいた。

ガキがパグなら、こっちはデカいブルドックだ。


デカいと言っても、成獣ゴブリンの身長は、人間の子供ぐらいの背丈しかない。

そんな大人ゴブリンが、あぐらをかけず、縫いぐるみみたいに座っていた。


俺は村長に、かくかくまるまると経緯を説明する。

砦近くにある川で、人間に出会った奴はいないかと尋ねた


「ギャイウ(ああ、それなら)」


そして連れてこられた一匹の若いゴブリンにも、俺は質問する。

すると若いゴブリンはこう言った。


「ガーウ、ガウガブッ、ガサチンッ。

(あの女? ああ、直ぐに分かったよ。ガサチンの部族の女でしょ。

ガサチンと同じ白い髪、赤い目だし、同じ匂いがしたよ。

だから頭を下げたんだ。他の人間だったら、そんな事しないよ)」


「何度か話したの?」


「ギャウ、ガフッ、ガップ。

(川でよく会ったよ。なんか話してるけど、全然分からなかった)

ガーウ、ガーウ、ガブウッ。

(でも、身振り手振りで、ちょっとは分かった)」


「何で俺に、それを伝えなかったんだよっ」


「ギャッ? ガガウ、ガサチン?

(え? だってガサチン、俺に女のこと聞いてないよ?)

ガブブ、ガーウ、ガサチン?

(それにガサチンの砦に住んでいる女を、なんでガサチンが知らないんだよ?)」


「くううっ」


俺が女のことを聞かなかったから、俺に話さなかった?

なんだそれ?

村長を見れば、一緒に首を傾げている。


くっそゴブリンは、ホウレンソウがなってねえ!

情報の共有は、部隊の死活問題でしょーがっ。


俺は頭を切り替える。

今はミッション時。切りかえなきゃ詰む。


事情が分かったなら、次は証拠隠滅だっ。

俺は村長の小屋をでて、広場を横切った。

村長たちも付いてくる。

俺は自分の小屋へと向かう。


そうなのでした。

このゴブリン村には、俺専用の小屋があるのでした。

この村で一番でかい掘っ立て小屋だ。


扉代わりのすだれをくぐると、そこは俺が快適に過ごすために持ち込んだ、様々なモノがあった。

テーブルにイス、カーペット、マグカップ、鍋やフライパンなどの調理器具。

それらはみんな、肥え太る街「バベル」のゴミ捨て場から、拾ってきたものばかりだった。


俺はゴミだからといって、決して卑下しない。

だってそうだろ?

秘密基地ってのは、そういう物でビルドするもんだ。


調度品の他に、ドングリや松ぼっくりも大量にストックしてある。

そのまま食うと不味いけれど、あく抜きすると結構うまい。

俺の大事なカロリーたちだった。


俺は部屋を見まわし、壁に引っかけてある麻のカバンをとり、調度品を片っ端から突っ込んだ。

このカバンは実家の宝物庫から、黒曜石のナイフと共に借りパクしたもので、どんな物でも楽々入っちゃう魔道具(マジックアイテム)だった。


「ギャウッ(それ、たのしそうっ)」

「ガウ、ガウンッ(おれもっ、おれもいれたいっ)」


子供たちが何をしているのかと、足にじゃれついてくる。


「これは遊びじゃねえのっ。

明日の朝には、ここに俺の姉たちが来るんだよ。

だから隠してんのっ」


「ガブッ?(なんでかくす?)」

「ガサチンッ、ブッ(ガサチン、ねーちゃんいんの?)」


「俺は姉たちに、内緒でここに来てんの。

バレたら、すっごい怒られるんだよっ」


「ギャギャ、ギャウッ(あはは、うっそだー)」

「ガサチン、ガガガウッ(ガサチンは強い、だれも怒れない)」


「あのな、俺の姉たちを舐めんなよ。

俺が気に入らねえからって、毎朝俺の指をぶった切るんだぜ。

ニヤニヤ笑って、競って切るんだぜ。

そりゃもう俺なんて、血まみれのボロボロよ」


「ギャ(えー!?)」

「キャウッ(こわい!)」


「だろ、怖いだろ? だから隠してんの。

明日にはここに来るから、お前たちも切られないよう、気をつけろよ」


俺がウィンクすると、緑色の小さなパグたちが、身を寄せ合って震えだした。

見れば大人ゴブリンたちも、ぶるぶる震えている。


あれ? ちょっと言い過ぎた?





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