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閑話 とある休日の一幕

遅くなった割にどうでしょうか、この出来具合

ブログ始めました http://mukamitaka1208.blog106.fc2.com/

「えー、今回新たに5人ほど本分隊に迎え入れることになった。」

そうパーシウスが言ったのは対空戦の3日後の土曜日の昼食時だった。

戦争中といえど作戦立案や休養の関係で、戦況が切羽詰まっていない限りにおいては軍も土曜半日、日曜休日という一般的なサクソンの社会的ルールに基づいていた。

せっかくの休日であるから町に繰り出そうかとしていたフィデリオにとっては若干不満であった。

「と、言うわけで自己紹介だ。」

パーシウスの声が人が減った昼過ぎの食堂兼会議室に響いた。


「アンドレイ・マルコヴィチ・ブラゴヴォリン2等兵。18歳です。よろしく願います」

痩せ型、長身の青年が言う。

「アリサ・ゲオルギヴェナ・ダール3等兵。16歳。暴走天使によろしく。」

ぱっと見その辺のギャルにしか見えない都市迷彩のリボンを頭に付けた少女だ。

「フックス・ヴァーゼル・ムーン2等兵。21歳。『衛生』の特技兵で……こいつがカール・ティベリウス2等兵。21歳。『爆薬取り扱い』の特技兵。無口なんだけどよくしてやってください。

……なんだよ、自己紹介くらい自分でするってか?おめーが普段しねえからやってやってんだろうが。バーロー。あ、それとも何か?想い人でもいるのか?……ちょい待て、なんで今こっちに拳銃を向ける?悪かった謝るごめん!」

若干太った小男が長身の無口男と同時に紹介した。

「トム・バート・ヴェルンブルーム1等軍曹。38歳独身。つてがあったら嫁さん見つけてくれ。」

咥えたばこで器用に喋る男が締めた。

「とりあえず16人になったが、別に気にするな。以上。解散」



気を取り直してフィデリオは基地から徒歩20分程のところにある都市「グレンベルグ」に向かった。

その側にはアーニー、クルーガー、マクシミリアン、ソニア、そしてアリサがいる。

なぜこんな大所帯なのか、事の発端は彼らが基地を出る時だった。


「そこの2人組、ちょっといいか?」

最初アーニーとフィデリオの2人だけだった所にクルーガーが話しかけた。

「グレンベルグに行くのだろう?だったら一緒にいかないか?」

別に断る理由も無いので彼らは承諾した。

「ちょっといい?そこの3人」

そこに話しかけたのは、人目もはばからずに、昼間からいちゃついている、若干あきれ顔をしたマクシミリアンと目を輝かせたソニアだった。

「グレンベルグに行くのならば、連れて行ってくれないか?こっちはどっちも方向音痴なんだ。」

(……頼りねー)

装甲車操縦士と砲手なのに、である。

「地図があったら間違えないんだけどね。」

そう言ったソニアを見、

「大体の方角は分かっているんだが」

言い訳がましく言うマクシミリアンを見た3人は顔を見合わせてから承諾した。

「小隊長、格好良いぃ(はぁと)」

それを物陰から見つめる都市迷彩のリボンを付けた少女、アリサ。

彼女は承諾を得ることなく、気配を消したまま5人を追尾した。



「さて、到着。」

6人は大したトラブルも無く目的地グレンベルグに到着した。


別行動をとる予定だった彼らだが、全員が大型書店へと入った。

その中で彼らはどんなところへ行くかと言えば、クルーガーとマクシミリアンが新書、アーニー、ソニア、アリサの3人がファッション誌へ向かい、

フィデリオは何を見ようかと考えていた時、不意に若い女性の悲鳴が上がった。

「何だ?」

最初に気付いたのはクルーガーだった。

「強盗?」

「殺し?」

推測したのはアーニーとアリサだ。

「強盗だろう。見えにくいがぱっと見だと、刃物男が若い女性を人質にしているようだ。」

「同様に確からしい。」

目の良いクルーガーとマクシミリアンが言った。

「どうする。警察おまわり来るのを待ってもいいが、何なら俺らでどうにかするか?」

他の5人に向き直ってクルーガーが聞くと、誰も反対の意思を出さなかった。

それを肯定と受け取った彼はゆっくりと、どこから出したのか分からないマグカップを4つ手に持って強盗に対峙した。

「兄ちゃん、何してんだ?ヒマならおっさんとサイコロ博打しないか。別に悪いようにはしない」

彼は気を抜かずにマグカップとサイコロを9つ投げて続けた。

「ルールは通常の『嘘つきの数当て』と同様。ただしさいころは9つが2人で18個だ。……

!」

その時強盗がナイフを握りなおした。

「おっと、変な気は起こさない方がいいぜ」

彼はホルスターに手を掛けた。

 そして、マグカップにさいころを投げ込み、言った。

「おっさんが勝ったらおとなしく自首しろ。その代わり、お前さんが勝ったら少なくとも警察おまわりが来るまではお前さんの自由を保障しよう。」

 強盗はそれに同意したのだろう。無言でさいころをマグカップヘ投げ込んだ。

「おっさんの先攻。

 1が4つだ。」

 彼らのやっている『嘘つきの数当て』とはさいころ博打の一種で、それぞれの持つさいころの目の数を当てたり、相手のかましたハッタリを見破ったら勝ち、というルールだ。

「2が3つ」

強盗は顔色を変えずに宣言した。

「3が4つ」

「おっさん、あんた何したいんだよ」

小声で聞いたフィデリオを見事に無視し、クルーガーは続けた。

「2が7つ」

ポーカーフェイスを全く崩さない強盗が2度目の宣言を行う。

「5が4つ。……お前さん。一体何をしたいんだ」

 何の目的があってか唐突にクルーガーが強盗に話しかけた。

「4が6つ。……お前なんかに分かるか」

「6が5つ。……聞き方を間違えたな。お前さん、何のためにこんなことしているんだ」

クルーガーは慎重に言葉を選んでから言った。

「4が8つ。……幸福のためだ」

「6が6つ。……お前、人と自分たち、どっちかを選べと言われたらどちらを選ぶ。」

唐突に違うようなことを言ったが、その相手が動揺することはなかった。

「人を蹴落としても偉くなって、楽して暮せってひい爺さんが言ってたらしい。だからそれを地で行くだけだ。……4が10」

「お前さんとはもう少し突っ込んだ話をしたかったんだが……嘘だな。俺のマグには4は1個しかない」

その時強盗の目が危険な光を放った。

それと同時に銃声が2つ響き、同時にクルーガーが飛び出し強盗のあごにつま先蹴りをお見舞いした。

「そういう生き方も、アリなのかも知れない。だけどな、人間お天道様の下を歩いて行けるくらいの道徳観と、思いやりってのは持ち歩くべきだと思うぜ」

「……偉そうに説教垂れてんじゃねえよ。税金泥棒が」

その声には諦めに近いものがあった。

「「……小隊長。本気で当ててもいいですか」」

そのセリフにひどい憤りを覚えたのだろう。拳銃を持ったままのアーニーと、どこから来たのか同様に拳銃を持ったヘルマンが言った。

「弱装ゴム弾でも街中で発砲なんかするんじゃねえ!この馬鹿部下共が!」

クルーガーは自前の自動拳銃―ゴート・グレートミニスター―のトリガーガードに指を引っ掛けてくるくると回しながら怒鳴ってから野次馬が引くのを待った。



 野次馬が引くのを待った彼らは、強盗を警察に突き出してから、なぜこんなへんぴな田舎にあるのかが街の七不思議にもなっている中華街へと向かった。

「結構な大所帯になっちゃったわね」

小声でぼやいたソニアが、山のように盛られたあんかけ焼きそばを人数分に分けているのを横目にして、フィデリオはクルーガーヘ話しかけた。

「すごいですね、小隊長」

「博打の腕か?あんなのは場数踏んだらそこそこうまくなるもんだ。

 おい姉ちゃん、ビールもう一本。大瓶で」

追加の注文をしつつクルーガーは軽くあしらった。

 だが、彼が聞こうとしたのはそれではなかった。

「啖呵です、啖呵。あんな状況であんな啖呵切れるのはそうはいないですよ」

「親父が牧師やっててよ、その受け売りなんさ。ほんとはもっとロクなことを言うべきなのかも知れなかったな」

そういうとクルーガーはそっぽを向き、配られた焼きそばに手を伸ばした。

その隣には「隊長、格好いぃ(はぁと)」などと言う少女が、さらにその隣には焼きそばを配りつつも、いちゃつくバカップルが1組、その向かいには仲が良すぎていちゃついているようにも見えるスナイパー兄妹、が座っている。

「さ、食べましょう」

そう言ったアーニーを横目にフィデリオが注文した2人前の炒飯が消えるのに5分とはかからなかった。



「ねぇ、フィー」

夕食からいつの間にか酒盛りになってしまったその場で若干顔の紅くなったアーニーがフィデリオに話しかけた。

「何だ?」

「……好きしゅき

その発言を何もなかったかのように彼は追加注文の3人前の五目汁そばを啜った。

「良いねえ。若いの」

左腕にアリサがしがみついているクルーガーがしみじみと呟いたのもまたスルーだ。

「旨い」

3人前の汁そばは消えるのに15分かからなかった。



「さて、皆さん。もう夜遅いし、何人かは泥酔状態だし、今夜はどこか宿取りませんか?」

言いだしたのは今もヘルマンを担いで、アーニーを背負っているフィデリオの隣を歩いているローサだった。

その計画に異論を唱える者はいなかったので、軍御用達の安宿をとることになり、今はその最中だった。

「フィー、大好きだいしゅき

寝ぼけているのか、はたまた寝言なのか、しばらく愛称で呼ばれている彼は若干困惑していた。

「お二人は仲がよろしいんですね。」

唐突に話しかけたローサの背中の上には「うぅ、母ちゃん、もう、食えねえ」等と呻くような寝言を言い続けているヘルマンがのっかっている。

「まあ、な。同郷だし、一時期ひとつ屋根の下だったし」

「結婚してた、とか?」

こう聞かれたら笑い飛ばすしかない。

「そんな訳ねえだろう。俺は下宿人で、こいつはその家の娘さん、って訳だ

 そっちこそだいぶ仲良さそうじゃないか」

逆に聞き返してみた。

「兄さんは、私がいないとてんで役に立たないんです。接近戦はお手上げだし事務処理は小学生にやらせた方がよっぽど早い。掃除洗濯は下手だし料理作らせたら下手な化学兵器より殺傷能力が高い代物が完成するんです」

「そうか。お互い厄介な連れがいるもんだな」

「そう、ですね」



それから数日後、ヘルマンが料理修業を始め、アーニーがとある女性分隊士の元で花嫁修業を始めたのはまた別の話である

絵文字は環境依存になるんで(はぁと)ってことにさせていただきました。

しっかし曲者ばっかだな。この分隊

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