眠れぬ夜の邂逅
眠ることが怖かった。
目を閉じるたびに、闇が心を覆い尽くす。
現実は冷たくて、手を伸ばしても掴めない孤独がそこにあった。
誰にも言えない痛みを胸に抱え、陸斗はただ、ただ沈んでいった。
眠りは逃げ場のはずだった。
でも、夢にすら安らぎはなかった。
目覚めるたびに押し寄せる不安と恐怖が、眠ること自体を恐れさせた。
そんな夜、ふと目を開けると、見知らぬ野原に立っていた。
空は澄み渡り、風が静かに髪を揺らす。
そこに、ひとりの少女がいた。
白く透き通った肌に、淡い紫の瞳。
光のように儚く、まるで夢の欠片のような存在だった。
「やっと会えた。」
澪の声は、切なさと温もりを帯びていた。
「ずっと待ってたよ、陸斗。怖がらなくていい。ここは私たちだけの場所だから。」
胸がざわつく。
知らないはずの彼女に、なぜか懐かしさがこみ上げる。
それでも、陸斗の心は警戒で固まっていた。
「……誰?」
震える声で問いかけると、澪の瞳が一瞬だけ悲しみに沈んだ。
だが、すぐに明るい笑顔が戻り、
「ごめんね、急にびっくりさせちゃったかな。私は澪。よろしくね。」
「……俺は陸斗。」
言葉は硬く、警戒は解けない。
澪は微笑みながらも、どこか切なげに言った。
「知ってるよ、陸斗くん。ずっと前から。」