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プロローグ
教室の隅で俯く陸斗に、冷たい声が浴びせられる。
「なんでいつもそんな顔してるんだよ。気持ち悪い。」
周囲のざわめきが遠く感じられ、自分がまるで透明人間になったような錯覚に襲われる。
「あはは、ごめんね、笑」
(笑わなきゃ……僕だって笑いたくて笑ってるわけじゃないよ……でも、笑わないと……)
何も言い返せず、ただ胸が締め付けられる。
帰り道、背中に刺さる視線と嘲笑を感じながら、陸斗は小さく呟いた。
「僕は、いなくなりたい……」
家に帰ると、玄関先で父の声が聞こえた。
「ああ、やっと帰ってきたのか。遅すぎだろ。」
「もう帰ってこないかと思った。期待させやがって。」
その言葉は、陸斗の胸に冷たい刃のように突き刺さった。
部屋に入っても、誰も彼の存在に気づかない。
まるで彼はそこにいることさえ許されていないかのようだった。
「僕、生きてちゃダメなのかな……」
毎晩のようにそう呟いていた。
彼女と出会うまでは。