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 ホ〜ホケキョ!

 翌日

 鶯の鳴き声がコミカルに感じる朝、育美は昨日のピコリンと言う名前を思い出しニヤけながら起床した。

 夜が明けたら来ると言っていたが、結局吉原家のチャイムが鳴る事はなかった。そして今日は学校。

 育代はいつもの様にリビングでテレビを見ながら朝食を摂り、さそり座が今日の最高運勢である事を見届けてから自宅を出発。

 昨日やって来た男の服装とさそりで毒つながりか……とバカな発想をしながら駅まで歩いていると、全身黒ずくめのキリスト教会の牧師さんが近づいて来る。それを繁々と見る育代。

(へー。なにげに正式な牧師さんの服初めて見るよ。意外とカッコいい服なんだね)

 そんな呑気な育代を出会い頭の顔面パンチ的なセリフが襲う。

「おい。用件はどうした?」

「えっ?!」

 昨日の残念な服はどこへやら、今日は牧師さんの服を着ている男の顔は、よく見ると紛れもなくピコリンであった。

「何を驚いてる? そんな暇はないぞ? 用件を言え」

「……」

「早く!」

「あ、あの〜」

「なんだ?」

 本来であれば変質者扱いでガン無視か最寄りの交番や子供110番の家に駆け込むところであったが、育代は不思議と危機感は感じていなかった。

「そ、その前に聞きたい事があるんですが?」

「だから、なんだ?」

「私が十年前にあなたを呼んだっていうのはほんとなんですか?」

「は? この期に及んで人を虚言癖扱いか? しかも高い燃料費を使わせておいて」

「……」

「ほんともクソもない。そんな事を論じるのは、ブラックホールは黒じゃないと同等の無意味な質問だぞ? なぜならお前が俺を呼んだからだ。しかもお願いしたい事があると」

「……」

(やっぱり……私が小さい時にお父さん達に言った話と同じだ……)

 ピコリンの一方的な怒りの発言が、昨日両親から聞いた思い出話しと整合性がとれている事に落胆する育代。しかし、ここは落ち着いて一つ一つ不思議に思う非科学的な事を解決しなければ、このまま困惑を続けていく事になる――育代は『冷静』という属性を己に叩き込んだ。

「も、申し訳ないんですが、まず私があなたを呼んだ事は、どうやってあなたが認識したのか教えてもらえないですか?」

「テレパシー宇宙郵便だ。しかも速達の強制赤紙発行だが?」

「え?」

 要約すると、つまり育代が小さい頃に両親に訴えていた想いが、念となりそれがテレパシーという電波になり、郵便物――つまりなんらかの手紙という形に具現化。それが最速で男に届くに辺り強制力を発動した。という内容だ――と思う。昨日より多少免疫がついていた育代もそう理解する事にした。

「あなたは、どうやって来たんですか?」

「折り畳み式宇宙船だが?」

「……」

(この人はなんでいちいち、喧嘩ごしでそんな事も知らないのか的に言ってくるんだろう?)

「もう聞きたい事は終わりか?」

「えっと、あなたは地球の人間じゃないんですよね?」

「ああ。惑星ギガメッシュの人間だが?」

「そうですか。じゃあ昨日から今まではどこにいたんですか?」

「宇宙船だが?」

「な、なるほどですね。ご飯は食べたんですか?」

「ああ。宇宙食をとても美味しく頂いたが?」

「……」

(全部即答だよ……)

「お? もうこんな時間か……おいおい……無駄話しでまたしても20分費やしてしまったじゃないか。また明日夜が明けたら来る。じゃあな」

 突然そそくさと背を向ける男。それを絶句しながら見送る育代。しかし、3歩ほど進んで男は振り向く。

「おい。俺にはピコリンという立派で由緒正しい名前がある。明日からはそう呼べ。わかったな育代?」

「え?」

(呼び捨て?)

「おい! わかったか? 育代!」

 昨日の残念な服装ではない男の荒ぶる声と真剣な眼差しに、頬を赤らめうつむく育代。

「あ、はい……」

 何度もくどいようだが、吉原育代が住むこの世界は間違いなく現代の令和である。


 

 

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