最終話 どこかで見たり聞いたりした事がない終わり方
とりあえず、ピコリンに振り回される生活から解放された育代。
その夜、気持ちを整理するために、のちに黒歴史にもなりかねない、ポエムに近いラブレターもどきをノートにしたためていた。
ねぇ、ピコリン。
散々振り回したのに、あなたはいつ戻って来るの? ちゃんと私をお嫁さんにしてくれるの?
急に私の前に現れたピコリンだったけど、私は急に好きになったの。寝起きで謎のテンションだったけど、キスもしたの。そしたらあなたはセクハラだって。どこまでもデリカシーがない人だったよね。
それにいつもいつもふざけた服装でさ。最後のお医者さんの手術服はなに? あなたは医者で近くの惑星で緊急手術をしていたとでも言うつもり?
好きになったんだけど、全然ピコリンの事知らないよ? なんで1日20分しか地球にいられない謎設定なの? 趣味、好きな色、嫌いな食べ物……もっともっと色々な話がしたかったよ。
あなたが帰ってから、私の心は大きな穴が空いたようです。だから、ちょっとでいいから会いたいよ。折りたたみ式宇宙船とか、現代よりも技術が発展してるんでしょ? だったら魔法とかワープとかして来て会いに来てよ。私と結婚してもいいなら、ピコリンも私の事好きなんでしょ? 私のどこが好きなの? 見た目? 性格?
書き出したらキリがないよ……
でも、わかった事があるの。
エイリアンが本当にいるのであれば、結婚したいとか思っちゃダメなの。だって、時間の流れとか価値観とか技術とか違い過ぎるから。こんなに悲しくて、よくわからない思いをしなきゃいけないならね。
2025年5月10日
私がピコリンが大好きです。
育代はそれを机の引き出しにしまった。
こうして、どこかで見たり聞いたりした事がある設定のような育代の物語は幕を閉じた。
◇◆◇◆◇◆
ピポピポピポーン!
チャイムの連打。
(誰? ……なんか懐かし……え? まさかっ?!)
ガチャ
「おい。迎えに来たぞ」
「えっ?! ピコリン?」
袴姿のピコリンがそこにいた。
そして抱きつく育代。
これは紛れもない事実の現場。
果たして、これは何年後であろうか。それは想像にお任せするとしよう。
〈完〉