どこかで見たり聞いたような出会い方
県内有数のお嬢様学校である私立白濁女学院。そして高等部二年、吉原育代が住むこの世は紛れもなく現代であり令和が舞台である。
それにもちろん、魔法や超能力など超人的なスキルなども存在しない日本である事に間違いない。
とある日曜日の19時。
一人で自由気ままにのんべんだらりと留守番をしていた育代の両親が帰宅すると事前に伝え聞いていた時間である。
『ピポピポピンポーン!』
『ピポピポピポーン!』
チャイムの連打がリビングにこだまする。いかにも早く玄関に来い! そしてドアを開けろ! と言わんばかりの強い圧を感じる鳴らし方であった。
「はい、はあい! 今、開けるからちょっと待ってよ!」
『ピポピポピポピポピポーン!』
「そんなに連打しなくても聞こえてるから!」
更に圧を増すチャイムに育代は、リビングから小走りにパタパタとスリッパを踏み鳴らし、文句を言いながらカギを解錠してドアを開ける。
「なんなの? 連打し過ぎじゃ――」
『ガチャ』
「なんの用だ?」
「えっ?!」
(なに? この男?)
そこにいたのは両親ではない。背たけ180センチはあろうかという、目は黒いが金髪の男。そして残念な服装。
「早く用件を言え」
「えっ!?」
育代が驚き、返す言葉もないのも無理はない。
両親が帰宅したと思ったら、チャイムを連打され、慌ててドアを開けるも立っていたのは見知らぬ男。そしてわけのわからない発言。更にオレンジ、白、黒の縦縞ストライプの入ったTシャツにベージュの短パン――という、すね毛が薄いのだけが救いな毒々しく残念な服装。
「俺を呼んだのはお前だろう? とぼけたフリをしても無駄だぞ。全部わかっている」
(は? この人なに言ってんの?)
「えっと……どちらさま……ですか?」
「おい。俺はわざわざ呼ばれて来たというのに、なぜ名乗る必要がある?」
「はい?」
(ほんとになんなのこの人? あ! まさか変質者?!)
「なんだその知らぬ存ぜぬみたいな顔は? まさかたった十年前に自分が言った事を忘れたのか?」
「え? 十年前?」
「……はあ〜」
残念な服装の男は残念そうに深いため息を吐いた。
「あの……本当にどちらさまですか? 警察呼びますよ!」
気は強い性格ではないが、わけわからんちん状態MAXの育代は、危機回避のため語気を少し荒げた。
「なんだと? 呼び出したのはお前だろ? これ以上とぼけるなら迷惑行為の被害にあったと、こちらも宇宙裁判所に訴訟を提起するぞ」
「えっ?」
(は? この人ほんと何言ってんの?)
「こちらは高い燃料費を使い、わざわざ最速でやってきてやったのにも関わらず、すっとぼけるなんて立派な迷惑行為だぞ? それにこちらには証拠がある」
「は? と、とにかく出てって下さい!」
育代は全体重を乗せて、両手で男の胸を突き飛ばすように押す。しかし、仁王立ちしてる男は全く動かない。
「なんだ? 迷惑行為に飽き足らず、今度は暴力行為か? この惑星の人間はとんでもないな」
「は?」
この小競り合いにより、令和の現代に住む育代は堪忍袋の尾が切れた。
「……さっきから、宇宙とか惑星とかいうワードがちょいちょい出てくるけどあなたは自分がエイリアンとでも言いたいわけ?」
「ああ、そうだが?」
「え?」
吉原育代が住むこの世は紛れもなく現代であり令和が舞台である。決して宇宙人などは存在しないかもしれない。