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百合の花  作者: ふみりん
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ぬか漬け

千代は5人の子供が所帯を持ちお盆とお正月に皆で集まるのが何より楽しみだった。

孫を連れて来るので総勢20人位になる。料理は千代と末の娘の担当だ。

お盆は15日に送り火をして皆で肉を食べる。トンカツ、ポテトサラダ、刺身等を支度する。夏休みと言うこともあって狭い家だが真由美の家族は泊まる事もあった。

皆色々あるだろうに、こうやって家族が集まって、仕事や子供の事、昔話に花が咲く、本当に有り難かった。


お盆を過ぎても暑い日には三男は黒い海水パンツの下に赤いふんどしを締めて真由美を連れて海に入った。時々クラゲにさされて赤くなってくることもあった。お盆を過ぎたら海は止めた方が無難だ。

お昼にはそうめんを用意する。

出汁を椎茸、昆布、鰹節でとる。「美味しいね」と大好評だ。料理は少しの手間で味が変わる。忠が好きだった料理を子供達が好きなのは遺伝であろう。三男は湯なましが好物で、孫の真由美はがんもどき食べたいと言うので、遊びに来るときはせっせと作る。


千代は結婚してから糠床を駄目にしたことがない。毎日掻き回して、きゅうり、人参、大根、夏にはなすをいれたりした。これも忠の好物で毎朝の食卓に並んでいた。孫の真由美はも真似してぬか漬けを作ってみたが、味が違うことにきがつく。長年の経験で足したり引いたりするものがあると言う。90歳迄ぬか漬けを作っていた千代に一緒に習っておけば良かったと後悔した。


四男が歯科医院継いで数年した頃、忠が事後にあった。犬の散歩中に車にひかれてしまったのだ。一命は取り留めたが寝たきりになってしまった。病院を退院すると看病の日々が始まった。朝は顔をガーゼで吹き、柔らかい食べ物を口に運んだ。髪も延び色白の忠は女性のような顔立ちになっていった。老々介護は身体に堪える。気合いは入っているが忠の身体を起こすのは1人では用意ではなく、家族の手を借りた。

お見合いで一緒になった夫だったが、見送った時は自分も一緒に生命を絶とうと思った事もあった。心配した真由美の母や娘達が話しに来てくれた。人と会うことも何だか気が重い。そんな日がどのくらい続いただろうか?心の痛みは時間が薬だった。


悲しみの中でも欠かさなかった事がある。

朝のお経と糠床のかくはんだ。お経を唱えると心が落ち着く。先に旅立った子供、夫の極楽浄土を願い、自分の心を落ち着かせていた。





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