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英雄

今回は、少し物語を進めるだけ。塹壕から抜け出した王国軍が、大量の兵士に囲まれて絶望するASCIIアートを試したいから。



第六章


王都東方戦線

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「起きろ。頼むから起きてくれ」


誰かがルイーザの肩を揺すっていた。声は遠く、まるで水中から聞こえてくるようだった。魔力の過使用による目眩と吐き気がルイーザを襲い、意識が朦朧としていた。


「........…」


ルイーザは目を開けることすらできなかった。腕の感覚はなく、喉は焼けるように痛んだ。


「起きろ。もう大丈夫だ」


その声には不思議な力があった。ルイーザは重い瞼を何とか開け、目の前の人物を見上げた。


目の前の景色が焦点を結ぶまでに数秒かかった。そして、ルイーザの脳が目に映る光景を処理するのにさらに数秒を要した。


「あ…あなたは…」


ルイーザの言葉は途中で途切れた。目の前に立っていたのは、王国の英雄、〈白き剣〉レオンハルト・アルベリヒだった。


「え…?」


ルイーザの脳は拒絶反応を示していた。英雄が、ここにいるはずがない。彼は北方の氷壁山脈で遠征中のはずだった。これは幻覚に違いない。魔力枯渇による妄想だろう。


「幻ではない」彼はルイーザの思考を読み取ったかのように言った。「我々は帰還した」


レオンハルトの後ろには二人の人影があった。〈蒼き炎〉アイリス・フォイアヴェント、王国随一の魔導士。そして〈慈愛の手〉サラ・ヒールガルト、聖殿最高位の治癒術師。神話から抜け出してきたかのような三人組が、この塹壕の中に立っていたのだ。


「氷壁山脈での任務を終え、王都に戻る途中だった」レオンハルトが説明した。「伝書鳩からの緊急警報を受け取り、急いで戻ってきた」


アイリスが一歩前に出た。「最後の五日間は睡眠も取らずに走り続けました。間に合ってよかったです。」


サラがルイーザの前にひざまずき、優しく手を差し伸べた。「大丈夫よ。治してあげる」


温かな光が彼女の手から溢れ、ルイーザの体を包み込んだ。驚くべきことに、体の痛みが和らぎ始めた。枯渇していたはずの魔力回路が、再び活性化していくのを感じた。


「不可能だ…魔力回路の損傷は…」


サラは優しく微笑んだ。「不可能なことはないわ。あなたは十分頑張った。あとはルイーザたちに任せて」


塹壕内の他の魔導士たちも、驚愕と歓喜に満ちた表情で三人を見つめていた。希望の光が、絶望に満ちたこの場所に差し込んできたのだ。


「第四十七波、突撃開始!」


東の地平線から響く声。また同じ顔を持つ兵士たちが湧き出てきた。


レオンハルトは静かに立ち上がり、塹壕の縁に向かった。「我々に任せろ」


彼は何の迷いもなく塹壕から飛び出した。アイリスとサラもすぐに続いた。


「待って!あれだけの数には…!」


ルイーザは叫んだが、もう遅かった。三人は既に敵陣へと突き進んでいた。


レオンハルトの腰には伝説の剣、〈光明剣アルバトロス〉が輝いていた。彼がそれを鞘から抜くと、太陽の光を集めたような輝きが平原を照らした。


「王国の民に安寧を」


彼の静かな言葉が風に乗って聞こえてきた。次の瞬間、彼の姿が消えた。いや、消えたのではない。あまりの速さに目が追いつかなかっただけだった。


複製兵の最前列に銀色の閃光が走った。次の瞬間、数百以上の複製兵の頭が宙を舞った。血しぶきが赤い霧となって舞い上がる。


「何…だと…?」


ルイーザは息を呑んだ。その剣技は、もはや人間の領域を超えていた。


アイリスが腕を高く掲げる。彼女の詠唱は聞こえなかったが、突如として青い炎の渦が現れた。それは轟音と共に広がり、複製兵の一群を丸ごと飲み込んだ。彼らの悲鳴は一瞬で消え去り、後には千を超える黒焦げの死体だけが残された。


サラは二人の後方で印を結び、透明な障壁を展開していた。敵の攻撃はすべてそこで弾かれ、二人に届くことはなかった。


「信じられない…」


ルイーザの横にいた若い魔導士が呟いた。「あれが…英雄の力…」



複製兵は相変わらず狂気じみた笑顔を浮かべていた。しかし、今回はその笑顔が凍りついた。


「.....分裂能力で世界を侵略しちゃうよ帝国、万歳!!!」


彼らの掛け声は変わらなかった。しかし、その声には初めて恐怖が混じっていた。


レオンハルトはまるで風のように敵陣を駆け抜けた。彼の剣の軌跡は銀色の光の帯となって複製兵たちを切り裂いていく。彼が通り過ぎた後には、ただ無数の死体の山だけが残された。


アイリスの魔法は次元が違った。彼女が腕を振るうたびに、複雑な魔法陣が空中に現れ、そこから解き放たれる炎や雷や氷が複製兵たちを殲滅していく。


「これが…英雄級の力か…」


ルイーザたちがこれまで戦ってきた絶望的な戦いが、まるで子供の喧嘩のように思えた。


三人は着実に敵陣へと近づいていった。彼らの周りには常に死体。複製兵たちは狂ったように攻撃を続けたが、それは全て無駄だった。


「王国を粉砕せよ!」


複製兵たちの叫びが、次第に弱々しくなっていった。


そしてついに、万を優に超えた大集団は、消滅した。






レオンハルトが敵の塹壕に到達した。彼は躊躇うことなく飛び込み、内部へと消えていった。アイリスとサラもすぐに続いた。


塹壕の中から、青い光が漏れ出してきた。続いて轟音が響き、地面が揺れた。


ルイーザたちは固唾を呑んで見守った。十分…二十分…時間が経過していった。















そして、帝国の塹壕の奥から、三つの人影がゆっくりと現れた。


煙と血の霧が立ち込める戦場の中、彼らはまるで死の海から還ってきた亡霊のように、静かに、確かな足取りで王国側の塹壕へと歩き始めた。


その先頭に立っていたのは、レオンハルトだった。

姿がはっきりと見えた瞬間、塹壕の中にいた全員が息を呑み、言葉を失った。


彼の白銀の鎧は、今や赤黒い返り血に濡れていた。だが、その歩みに迷いは一切なく、肩を張り、剣を収めたその姿には、一騎当千の覇者としての風格が滲んでいた。


その顔には疲労の色も見えたが、眼差しには激戦を乗り越えた者にしか持ちえない、確かな満足と誇りが宿っていた。


塹壕に到達すると、彼は一瞬立ち止まり、全体を見渡してから、はっきりとした声で勝利を宣言した。


「敵の指揮系統を壊滅させた。螺旋皇帝本人はいなかったが、この前線を指揮していた幹部たちは全て片付けた」


続いて、アイリスが傷一つない姿で歩み寄り、端的に報告を加えた。


「塹壕内に潜んでいた複製兵も、すべて排除済みです。東の前線は、安全です。」


その言葉に、塹壕内の空気が一変した。まるで戦場の重圧が解けるかのように、兵士たちの顔に次々と光が戻っていった。

ルイーザたちは信じられない思いで東の地平線を見た。先ほどまで人間の壁のように並んでいた敵兵は、今や死体の山となって横たわっていた。地平線までの大地が、赤と黒で染まっていた。


帝国軍は、二十一日間で四十六波、一波あたり約一万の敵兵で攻めてきた。塹壕の中には、相当な兵力が潜んでいたに違いない。それを三人で撃退したことになる。


「嘘だろ…」


若い魔導士が呟いた。彼の声には畏怖と安堵が混じっていた。


ルイーザ長官が震える足で立ち上がった。「英雄レオンハルト様、王国はあなた方の帰還を待ち望んでいました」


彼女の声は感情で震えていた。二十一日間続いた悪夢のような戦いが、ついに終わったのだ。


塹壕内に歓声が上がった。疲労困憊していた魔導士たちの顔に、初めて笑顔が戻ってきた。泣き崩れる者もいれば、まだ信じられないという表情で東を見つめる者もいた。


レオンハルトは静かに頷いた。「休む暇はない。我々は明日にでもイシュレア要塞の奪還に向かう」


アイリスもまた肯定の仕草を見せた。「要塞を取り戻せば、東部領の回復も早まるだろう」


サラは穏やかに微笑んだ。「まずは皆さんの回復が先です。今夜はルイーザが全員を治療します」


その言葉に、魔導士たちからさらなる歓声が上がった。


レオンハルトは塹壕の縁に立ち、東の地平線を見つめた。「明日、我々は反攻を開始する。王国の領土を取り戻し、二度とこのような悲劇を繰り返さないために」


ルイーザは初めて、勝利を確信した。英雄の帰還により、戦況は一変したのだ。イシュレア要塞の奪還、そして王国東部領の回復。長かった暗黒の時代が終わり、新たな夜明けが訪れようとしていた。


英雄の姿を見つめながら、ルイーザは誓った。この戦いの記憶を、決して忘れまいと。そして、この国を守るために命を懸けた同胞たちの犠牲を無駄にしないために、ルイーザもまた剣を取り続けようと。


太陽が沈み始め、東の地平線を赤く染めていた。それは血の色ではなく、新たな夜明けの予兆のように思えた。

今回使用したAI:本文の創作はclaude 3.7 sonnet、部分的な編集は人+Chat-GPT.



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