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「分裂能力で世界を侵略しちゃうよ帝国、万歳!!!」

今回はストーリーの続きです。

# 第二章:燃ゆる壁


王国南部戦線・イシュレア要塞外縁

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月食の三夜目


男は、城壁の上に立っていた。


イシュレア要塞の堅牢な防壁。その上から、彼は敵の群れを見下ろしていた。

空気は灰と血の匂いで満ちている。三日前から続く戦いで、男の喉は乾き、目は充血していた。


弓を引く。弦が頬に触れる。矢筒から取り出した矢の羽根は、かつて青かった。今は血に染まり、茶色に変色している。

放つ。


矢は風を裂き、敵兵の眉間に突き刺さる。

しかし敵の表情に痛みはない。むしろ、微笑んでいるようにさえ見える。


二本目。三本目。


リズムは崩れない。呼吸に合わせて無意識に矢が放たれる。敵は絶え間なく現れるが、それでも彼の弓は止まらない。

指先は血豆だらけだ。痛みはとうに感じなくなっていた。


彼の名はレイン。王国軍最精鋭の弓兵部隊、「蒼穹の矢」に所属していた。かつては誇りだった。

今はもう、生き残るための技術でしかない。


眼下に広がる地獄。


城壁の外、数百メートル先。泥の平野に、無数の人影が蠢いている。

昨夜の雨で地面は泥濘と化し、敵兵たちの足首まで沈んでいる。それでも彼らは進軍を続ける。


帝国兵。帝国兵。帝国兵。


顔が、同じ。声が、同じ。足並みが、同じ。

それが、かの「螺旋皇帝」の能力だった。自らを複製し、増殖させる禁忌の力。

一人から百人へ。百人から万人へ。そして今や、百万の軍勢となって王国を侵攻している。


異様な光景。それがもう"日常"だった。

レインは矢筒に手を伸ばす。残りは十二本。十二の命。


「分裂能力で世界を侵略しちゃうよ帝国、万歳!!!」


あらゆる方角から響く異様な勝鬨。壊れた機械のスピーカーが、狂ったように再生し続けているかのようだ。

同じ顔、同じ声、同じ狂気じみた笑い声。


矢を放つ。


五百の突撃兵が前方で殺到してくる。

彼らは薄汚い鎧を纏い、錆びた剣を振るう。装備は貧弱だが、数がすべてを補う。

そして何より、彼らは「死」を恐れない。なぜなら、自分はまだ他に無数に存在するからだ。


だが、次の瞬間——空が燃える。


要塞から解き放たれる火矢、炎弾、龍炎級の咒文。

屈強な魔術師たちが咆哮と共に術を放つ。高位魔術「灼熱結界」の発動だ。


それは嵐。鉄と火の嵐。


前衛の帝国兵は焼かれ、吹き飛び、砕け散る。まるで波が岩に砕けるように。断末魔も聞こえぬまま、塵へと戻る。

炎に包まれた人影が踊るように倒れていく。黒焦げの肉の匂いが風に乗って城壁まで届く。


戦場の東。砕ける。

西。砕ける。

南。砕ける。


同じ顔、同じ声が、何度も焼かれ、潰され、溶けていく。

熱波が城壁を洗い、レインの皮膚を焦がす。彼は目を細め、光景を見つめる。


だが止まらない。


新たな群れが、地平の彼方から現れる。死を恐れず、足を止めず、笑みすら浮かべながら。

今度は千人。焼け焦げた同胞の死体を踏み越えてくる。


「分裂能力で世界を侵略しちゃうよ帝国、万歳!!!」


その声は巨大な波のように響き渡る。

レインは耳を塞ぎたかったが、両手は弓を握っている。


矢を放つ。矢が喉を裂いた。

敵の血が噴き出す。だが彼らは泥人形のように進み続ける。

今や群衆は防壁の百メートル先まで迫っていた。


レインの隣では、若い兵士が震えている。「や、奴らは人間じゃない……化け物だ……」

レインは答えずに別の矢を取り出した。「集中しろ。奴らは血も肉も持つ人間だ。射抜ける。」


背後から低い声が聞こえた。


「デルタ塹壕が……落ちたらしい」


振り向くと、隊長が王国軍の将校と向かい合い、声をひそめて話していた。城壁の石に背を預け、両者ともに、顔には深い疲労の色が滲んでいる。

隊長の鎧には、ところどころ打撃の痕。顎には三日分の青髭が生えていた。


「包囲軍の数は?」と隊長。


「百二十万だ」と、将校が絶望的な数を提示する。「南、東、西。三方を完全に囲まれている」


「馬鹿な……兵站は? あれだけの数、維持できるわけがないでしょう。」


「ああ、崩壊寸前だ。敵兵の多くは痩せ細っている。昨日から始まった無謀な突撃も、口減らしの意味もあるのだろう」


将校の目は赤く、言葉に苦悶が滲んでいた。「北からの援軍は……三日前に途絶えた。連絡はまったく取れていない。恐らく、包囲網が完成したのだろう」


レインは耳をそばだてていた。北には王都がある。王都が包囲されていれば、この要塞も見捨てられる運命だろう。


「……なら、持ち堪えれば...」


「ああ。あと数日、この要塞が耐えれば……やつらは自壊するだろう」


その言葉が、胸の奥に火を灯した。

勝てるかもしれない。

この地獄を生き延びて、帰れるかもしれない。


生きて帰る。あの丘の上の家に。あの笑顔に。

幼子がいる。まだ三歳。手紙も書いた。字は乱れていたが、きっと伝わる。

妻は強い。農地を守りながら、待ってくれている。


その未来が、彼の矢を導く。


矢を放つ。

また一体、同じ顔が倒れる。

そしてまた。

そしてまた。


矢筒が空になったとき、補給兵が走ってきた。「新しい矢です!」

その声には震えがあった。若い兵士の顔は青ざめている。


「何があった?」とレインは問う。


「西の塔が……突破され.....奴らが……奴らが城壁を登っています」


レインは西の方向を見た。確かに、一つの防衛塔の石壁に大きな穴が開いていた。砕け散った石材の隙間から、敵兵の影が次々と侵入している。穴の周囲は血に染まり、崩れた石材は死体で覆われていた。


そして、それに続くように、城壁の各所に梯子が掛けられていた。


「集まれ!西の壁へ!急げ!」隊長の声が響く。


レインは新しい矢筒を背負い、走り出した。心臓が早鐘を打っている。

西の壁に到着すると、そこは既に混沌の渦だった。


城壁を登ってくる敵兵。彼らの顔は皆、同じだ。狂気じみた笑みを浮かべている。

兵士たちは必死に応戦している。剣で、槍で、素手で。


レインは城壁の上から矢を放った。敵の頭が弾け飛ぶ。

だが次の瞬間、別の同じ顔が現れる。


「分裂能力で世界を侵略しちゃうよ帝国、万歳!!!」


その声は、今や城壁の上からも聞こえていた。

振り向くと、十数体の敵兵が既に城壁を越えていた。彼らは兵士たちに襲いかかっていく。


レインは弓を背負い、腰の短剣を引き抜いた。

「我らがイシュレアのために!」と叫び、敵に飛びかかる。


刃が肉を裂く感触。血しぶきが顔にかかる。

彼は次々と敵を倒していった。しかし、倒れる一体ごとに、新たな敵が壁を越えてくる。


城内からは警鐘が鳴り響いた。塔の上からは火矢が放たれる。

大地は揺れ、城壁は震動する。何か巨大な魔術が発動したのだろう。


血と汗で視界が滲む中、レインは戦い続けた。

剣を振るい、蹴り、殴り、噛みつく。もはや兵士ではなく、獣のように。


そして気づいた。彼が戦う敵は、皆同じ顔をしていた。

それなのに、微妙に表情が違う。この男は恐怖を感じている。あの男は憎しみに満ちている。別の男は虚ろな目をしている。


「お前たちは……本当に同じ人間なのか?」レインは敵の喉元に短剣を突き立てながら問うた。


敵は血を吐きながら笑った。「我らはすべて……螺旋皇帝……」

そして息絶えた。


夕暮れが迫っていた。空は血のように赤い。

城壁の至る所で戦いが続いている。しかし、徐々に王国軍が押し返していた。


イシュレアの防衛線は、まだ崩れていない。


レインは疲れ果てた体を石に預け、深く息を吐いた。

手の平には深い傷。腕には噛みつかれた痕。

だが、生きている。


そして彼の頭上では、王国の旗がまだ誇らしげに翻っていた。


東の空から夜が迫っている。まもなく視界は悪くなる。

だが、その闇は敵にとっても同じだ。


レインは再び弓を手に取った。

明日も戦う。明後日も。そして勝つ。

生きて、帰るために。


**イシュレア要塞は、まだ燃えていない。**


だが、遠くの地平線上には、新たな敵の大軍が、無数の松明を掲げて進軍していた。

それらはすべて、同じ顔をしていた。

研究内容; AI性能の比較:第一話を書いたCHATーGPTと、今回使用したClaude 3.7 sonnetの違いを研究。


観察:Claude 3.7 sonnetの日本語の方が流暢に感じられるのは、気のせいであろうか。



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