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コケッコー御結婚【完結】【ハッピーエンド】  作者: 尻鳥雅晶
縁・オブ・ザ・ワールド

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26/48

Wの喜劇

 あなたは異性を「振った」ことがありますか。

 逆に、「振られた」ことがありますか。

 もし、振られてばかりだと言うかたがおられたら、ちょっと考えてみませんか。

 それは本当に「振られた」のでしょうか?


 それはまだ20世紀の話。


 当時、京都に住んでいた女性、Wさんは、趣味の関係でたびたび上京していました。そして私は、「先輩」の紹介で彼女とデートする運びとなったのでした。

 場所は上野の遊園地。夜の特別オープン日です。このイベントは彼女が行きたいと思っていたものでした。ひょっとしたら、行くのが目的で、相手は誰でもよかったのかも知れません。


 スレンダーで朗らかな彼女は、トロンと垂れた大きな目をキラキラさせてとても楽しんでいるように見えました。夕食の時分となり、私たちは予約していたレストランにて楽しく会話をしたのですが……


 それは私が、笑える話のつもりで旧友Kの恋愛話をしたときのことです。急に、彼女の機嫌が悪くなりました。リカバーするスキルを持っていなかった当時の私は、なすすべもなく気まずいままデート終了となってしまったのでした。


 まあ、今だってそんなスキル持ってないけどな!


 真相は後日、先輩が教えてくれました。Wさんは確かにとても楽しい時間を過ごし、私を気に入りかけていたのですが、いきなり他の女をした私に悲しくなって冷めたとのことでした。私の話したことは友人の話であって、自分自身の話ではありません。Wさんはとても早とちりしやすいタイプだったのです。


 なんだそうだったのか。もっと話題を選べばよかったな……


 やがてWさんは他の人と結婚しましたが、先輩を通じてまた会う機会がありました。

 私が上野で起きたことを話すと、Wさんはトロンとした目を見開いて言いました。


「それじゃ、私、ふられたようなもんじゃないですか」


 その口調は冗談めかしていましたが、はっ、となりました。

 確かに彼女の言う通りだったからです。


 彼女が食事中に機嫌を悪くしたとき、私は仕方ない、と思ってしまった。なぜ機嫌を悪くしたか聞こうとしなかった。自分にそんなスキルがないと思ったからだった。


 やってみもせずに、そう思ったからだった。


 後で真相が判ったときも、先輩に言付けするでもなく、Wさんに連絡しようとするでもなく、ただちょっと反省しただけだった。そんなことをしても高値の花と感じたWさんが自分に振り向いてくれるはずがないと思ったからだった。


 やってみもせずに、そう思ったからだった。


 Wさんは真相を知らなかった。

 ()()()アクションするべき人は自分しかいない。

 しかし私は何もしなかった。なぜなら。

 自分にとって彼女はその程度の存在、どんなに美人だと思っても、どんなに楽しい時間を過ごしても、大事な大事な自分のプライドが傷つくリスクをかけられない程度の存在、だったからだ。


 ()()()何もしなかった。


(ヒドイ言い方……)


 うん、そうだね……

 振ったのは彼女じゃない。この私だ。

 なんで俺は、「振られた」なんて安穏な立場、「被害者様」だなんて思っていたんだ……

 ゴメンね……Wさん……


 モテない人間でも、異性を振ることはあります。

 いや、モテないからこそ、恋愛スキルがないからこそ、振ることがあるのです。


 前話において、私はカン違いしたZの女性会員たちのことを書きました。私は後からでも彼女たちに電話をかけて、真相を告げることは可能でした。

 でも私はそれをしなかった。


 彼女たちはとても魅力的でしたが、いったん持ってしまった気まずさを乗り越えてまで、つきあいたいと思うほど大きく魅力的ではなかった。

 自分にとって彼女たちはその程度の存在、大事な大事な自分のプライドが傷つくリスクをかけられない程度の存在、だったからです。


 この話は、ただそれだけの話です。


 たとえ責任がなくても、事態をコントロールできる側が何とかするべきだった……

 こんな私の考えは、長男だけが持つ妙な自意識のせいかも知れません。



 さて、次回とさらにその次の回は、私にとってとても大切なことを教えてくれた、ふたりの女性、若く可愛いNさんと、外見も中身も美しいXさんの話を書きます。


(誰よそれ。ムカつくんだけど)


 君が知らなくてもいい人の話さ。

 ハニー、愛してる。

ご愛読、ありがとうございます。

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