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コケッコー御結婚【完結】【ハッピーエンド】  作者: 尻鳥雅晶
メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・ミー

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イケメン仮名

「あェ……」


 Cさんは私の顔を見るなり、小さな、変な声を出しました。


 新宿の駅ビルにあるカフェ。

 チェーン店だけどちょっとオシャレで、シフォンケーキと水出しコーヒーがとても美味しい店です。

 大きな窓からは当時まだ再開発中だった南口周辺の景観が見えました。


 私の申し込みに、会う段階までのOKを初めて出してくれた人は、カフェの入り口に立っていました。私は約束の5分前に来たのに、それより前に来て待っていてくれたのです。

 おちついた白い洋服を着た、ショートカットの似合うアラサーの小柄な女性。

 その女性Cさんは、私が名乗ると急に、あきらかに落胆しているのに、それを隠そうともしない雰囲気を出したのでした……


 これは……アレだな。


 私はCさんのその雰囲気に、覚えがありました。

 あれは10数年前だったか……

 旧友のKに、ある女性……Dさんに会ってみないか、と言われ、いそいそと出掛けたときのことです。

 Dさんは私の顔を見るなり、このときのCさんと同じような声を出し、このときのDさんと同じような顔をしたのでした。


「詐欺だろ、これは」とも言いたそうな顔で。


 私の本名の苗字は、とてもイケメンの苗字です。マンガやドラマの中で、私と同じ苗字のキャラは、ほぼ例外なくイケメン・美少女です。


 まさか「尻鳥」が本名だなんて思ってないよね!?


 だから、Cさんや、Dさんのように、本人の顔より先に名前を知った人が、変な先入観を持ってしまうのは、仕方のないことかも知れません。


 ※ご注意1 Cさんにはアポ時に苗字を告げていました。また、女性会員の中には写真を見ないで会う会わないを決める人もいると聞きます。


 ※ご注意2 もちろんCさんやDさんに、直接確かめたわけではありません。ひょっとしたら名前は関係なくて、ズボンのチャックが開いていたのかも知れません。

 ……2回もかい!?


(アハハハハハハハハ、はずかしー)


 ハニー、笑いすぎ。


 この苗字そのものについて、私はプラスだともマイナスだとも思っていません。

 こういう苦労もあるからです。

 まあ、気に入らない苗字を持っている人からすれば、気にしないでいられて、人に覚えてもらえるというのは大きなプラスだと言うかも知れませんが。


 ハニー、君は私の苗字に変わって、どうだった?


(手続きが大変だったよ)


 それはゴメン。

 いや、そうじゃなくて、人からどう思われるか、ということだよ。


(すごい素敵な美人だって思われるけど、ぜんぜん困ってない。私にふさわしい苗字ですものオーホーホッホッホッ)


 君が喜んでくれてよかったよ。


 さて、第一印象に失敗した私は、それを挽回することはできませんでした。

 デブが汗だくで、しどろもどろの会話。電認作戦アタッコ・ランポどころではありません。

 Cさんの「それ、もう聞きました」という台詞が印象に残りました。


 Cさんと別れたあと、私は失敗を確信しました。後日判明した結果もその通りでした。がっくりと肩を落とした私は、そのときこう思いました。


 せっかく新宿まで来たのだから、ラーメンを食べて帰ろう……


 なじみの店で、運ばれてきた大盛りチャーシューメン。

 なぜか湯気が目に滲んで特大チャーシューがよく見えません。

 白濁の豚骨スープを口に運んだ私は、呟いたのです。


「あれっ、ここのスープ、こんなにしょっぱかったっけ……」



(まあ、ラーメンだなんて、いけない人。だから太るのよ)


 僕は世界一のメンクイだから君と結婚したんだよ?


(またそういうこと言ってゴマかすぅ)


 さて、次回は、さらに色々な女性に出会います。


(また他の女の話)


 ゴメンね。ハニー、愛してる。


ご愛読、ありがとうございます。

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