ぱた、ぱた、ぱた
・・・ぱた、ぱた、ぱた。
心地のいい音が、私の耳に聞こえる。
…パタパタ、パタパタ。
耳触りのいい音が、勢いよく私に近づいてくる。
パタパタパタ!パタパタパタ!
「やっと追いついた。」
ぱた、ぱた・・・。
耳当たりのいい音が、穏やかに私の横で流れている。
ぱた、ぱた・・・。
この、実に和む空気を纏った音は、息子の足音である。
ぱた、ぱた・・・。
雑踏の中でもひときわ目立つ、息子ならではの、どこにいても息子と分かる、足音。
ぱた、ぱた・・・。
ウォーキングに行くために家を出たは良いが、靴を履いた瞬間にトイレに行きたくなってしまい、引き返してですね。
ぱた、ぱた・・・。
スッキリしたので、元気よく私に追い付いた模様。
ぱた、ぱた・・・。
一体いつ頃からだろう、息子の足音がやけに個性的になったのは。
ぱた、ぱた・・・。
うんと小さい頃は、歩くたびに「ぴキュぴキュ」音を鳴らしていた。
ぱた、ぱた・・・。
わりと小さい頃は、歩くたびに「とてとて」いっていたような気がする。
ぱた、ぱた・・・。
ぼちぼち育ってからは、歩くたびに「ぼてぼて」いうようになった気がする。
ぱた、ぱた・・・。
足の大きさが私と同じになった頃には、もうパタパタいっていたように思う。
ぱた、ぱた・・・。
なんだろう、足の裏が地面に垂直に落ちて空気を踏んでいるような…。
ぱた、ぱた・・・。
なんていうんだろ、足の裏が地面とぶつかり合って絶妙に破裂音が生まれているような…。
ぱた、ぱた・・・。
靴が大きいのかな?
ぱた、ぱた・・・。
25センチもあると、接地面積も大きいから音が大きくなるのかも。
ぱた、ぱた・・・。
歩き方が関係しているのかな?
ぱた、ぱた・・・。
足の裏全体で地面を踏んでるから、変な音がするのかも。
ぱた、ぱた・・・。
息子の足音聞いてると、なんだか心なしか、癒されるんだよね。
ぱた、ぱた・・・。
うん、実にいい足音だ。
ぱた、ぱた・・・。
「お母さんの足音、面白い。」
ぱた、ぱた・・・。
「…ハイ?」
ぱた、ぱた・・・。
「なんか、ぼりゅぼりゅいっている。」
息子はニコニコ笑って、私の足運びにリンクさせてくる。
ぱた、ぱた・・・。
・・・ぼす、ぼす。
自分の足音は、あんまり気にしていなかった。
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
そういえば、私も足音がうるさいタイプだ。
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
「足音で分かる!」
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
なんだ、ただの…似たもの親子だったってことか。
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
「そお?君の足音もなかなか分かりやすいよ!!」
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
もしかして、早朝の閑静な住宅街を歩くのは…わりと迷惑な親子だったり、する?
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
・・・ブブ、ブゥン!!
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
ごー!!
ぱた、ぱた・・・。
ぼす、ぼす・・・。
幹線道路に出たら、早朝から勢いよく都会に向かっていく車の音が聞こえてきた。
「あ、信号点滅しそう!!はしろ!!!」
パパタパタパタ!
ボボスボスボス!!
ガー!
パパタパタパタ!
ボボスボスボス!!
ザ、ザザザ!!!
パッタ、パッタ・・・。
ボッス、ボッス・・・。
「・・・わりと疲れた。」
ゴー、ガー、ブゥン!!
「うん?なんだって?車の音がうるさくて聞こえにくい、ウーン、君もっと声を張りなさい!!」
ゴー、ガー、ブゥン!!
「はい!!」
ゴー、ガー、ブゥン!!
心地の良いパタパタ音も、ガサツなボスボス音も、喧騒に紛れて耳に届かない。
「ねーねー、今日さあ、帰りに焼きたてパン買ってこ!!」
「いいねえ。」
私と息子は、騒音に負けじと朝もはよから声を張り上げてですね。
おかしな会話をしながら公園に行って、ラジオ体操して、顔なじみの皆さんに挨拶をしてですね。
ウォーキング帰りに大喜びでパンを買ったわけですけれどもね。
「なんかおいしそうだったから貰ったー!!」
「焼きたてパンおいしかったよー!!」
「おいしかった。」
「…ちょ!!何で根こそぎ食べる?!コーヒー入れる五分で…食い尽くすな!!!」
安定の、自分の分まで食べられるというパターンに、怒鳴り声を上げたというお話ですよ……。