第5話 何気なく
※この作品内の登場人物の発言・行動には、一切の差別の意図はありません。
「「いただきます!!」」
うんうんうん、何もないただの白米なのにうまい。ウマすぎる。炊きたてじゃなくてこれってどーなってんだ?
「これ、おいしいな。」
思わずこぼれる。
「そんなに変わったことはしてないですけどねー?多分、使ってるお米の品種も優さんの家と一緒だと思いますけど。」
そうなのか?そんなに急に変わることある?……まあいいか。おいしいに越したことはない。
「朝食、トーストからご飯に変えようかな。」
「それもいいかもしれませんね。ご飯はお腹持ちがいいので、朝食に適しているっていう話も聞きますし。」
俺は結局、朝食を光風神社の中でいただいていた。彼女は丁寧に俺が起きるのを待っていたらしく、テーブルの上には綺麗に二人分の朝食が並べられていたのには驚いた。やっぱり、俺をここに留まらせたいんじゃ?‥‥いやないな。ちなみにさっき、朝食にトーストを食べていたことは思い出せたのだが、昔から習慣として行ってきたことは難なく思い出せるようだった。……正直、自分でもどんなときにあの気持ちの悪い感覚が襲ってくるかわかんねぇ。
「というか本当に、優さんが起きなさすぎてびっくりしましたよ。目覚まし時計とスマホのアラーム、念のため両方かけておいたってのに起きないんですもん。」
「え、そうなの?‥まあ昨日はなんだかんだ……7.8kmは歩いたり走ったりしただろうから、疲れてたんだと思う。自分では実感ないけど。」
「そんなに移動したんですか。とんでもないですねー。」
ご飯を口の中に入れながら彼女は言う。
「今絶対「ご飯おいしーなー」とか考えて、俺の話聞いてなかっただろ。」
この人、話題振るだけ振って後は興味なくなるタイプだ。
「そんなことは、多分ないですよー。」
それはある時の言い方。てか、今も「みそ汁沁みるわー」みたいな顔しながら返事されたし。
‥‥‥‥朝食を食べ始めてから、急速に彼女がフランクになってる気がするんだけど気のせい?
「なんか急に俺に対しての接し方友達みたいになってない?」
「話してるうちに、優さんが正常な人なのが分かったからですよ。」
「いや、どういう疑い?」
「こんな山の中だと、ちょっと社会で生きるのが大変そうな人もやって来ますからねぇ。勝手に入ってきて、叫んで、目の前でぶっ倒れて、……そんな人をちょっと簡単には信頼出来ないっていうか。」
「じゃあなんで俺を建物の中に入れたんだよ。」
「それはまあ…………気分っていうか直感っていうか‥、まあそんなものですよ。」
アブねーなおい。
「それ危なすぎるだろ。マジで死にかねないし止めないとヤバいぞ。」
「今回の優さんの場合が特別なだけで、多分大丈夫です!」
‥マジで心配。
「「ごちそうさまでした!!」」
結構ゆっくり朝食をとって、気づけばもう9時も過ぎている。親は仕事の昼休憩で12時過ぎに一度家に戻ってくるが、まださすがにここを出る必要はないだろう。しかも、朝食をご馳走になって、何も片付けをしないというのも、人として問題だろう。どうするか‥。
「手伝いましょうか、お皿洗うの?」
「あれ!?もう帰っちゃったかと思ってました!!」
朝食食べる前は今にも帰ろうとしてたし、そう思われもするだろう。
「いや、ちょっと手伝いくらいしようと思って‥。」
「ありがとうございます!!」
俺は、流し終わったお皿を拭き始めた。
ふと、あることに気付く。
「そういえば、名前、まだ聞いてなかったですよね。神社の名前は聞いたけども。」
「そういえばまだ言ってなかったような‥‥、というか、今更ですか!?そんなに私に興味ないの!?ひどくない!?」
……この人、怒ってるときが面白いかもしれない。キャラ崩壊がスゴい。
「まあでも、教えますよ。私は神楽翠、19歳です。」
‥‥‥‥‥?
「年上!?!???」
この人、こんな感じで俺より2つも上なんだけど?