第2話 笛の音が鳴り響く
しばらく歩いた俺は、繁華街の入り口に着いた。繁華街は、誇張抜きでマンション周辺の3倍くらいは眩しく思えた。
「……目がさすがにやられる。無理だなこりゃ。」
吸血鬼かってくらい光がしんどい。最近ずっと部屋にいたにしてもヤバすぎる。
「‥しゃーない。ここは諦めよう。」
そう言って俺は繁華街を立ち去ることにした。ぼんやりと聞こえる喧騒と、色々な食事のにおいが弱まっていく。
「つーか、新しくピザ屋とか焼き肉屋、あとにおいから考えるにたこ焼き屋もできたのか?ピザ、マジで旨そうななにおいしてたな。」
商店街の変化を感じながら、どーでもいいことを考えて、どこへ行くでもなく、俺は歩いていた。そして、気づけば街の端の、山沿いの集落のあたりに来ていた。
「やべ、どんだけ歩いてたんだ?」
自分でもビックリするくらい歩いていた。自転車でここまで来ようとしても、20分くらいかかるのに、どうここまで来たのだろう。
♪~
「ん?」
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~
確実に、どこからか笛の音が聞こえてきている。何かを失ったような、喪ったような、哀しげな音だった。でも、その音がそれを乗り越えていけるだけの強さをくれる、そんなふうにも聞こえるのが不思議だった。
「どこから聞こえるんだ?」
別に、そんなに珍しい音色だとは思わなかったが、こんな美しい音を聞くのは久しぶりのように感じて、気づけば俺は音の出どころを探していた。交差点、T字路を曲がり、少しずつ音に近づくのを感じる。
「こっちか。」
気づけば夢中で走っていた。少しずつ周りの住宅の数は減っていき、もう周辺は畑ばかりになっていた。来た道を振り返ると、少しずつ山を上っていたようで、さっきいた場所が小さく下に見えた。しかし、やっと音の出どころらしきところに辿り着いたようだ。
目の前には…………神社。
「なんかすげぇけど、この山の中に神社なんてあって来る人いるのか?」
まぁ、このあたりの集落の人が来るのかな、と適当に納得しながら俺は鳥居をくぐった。
♪~
笛の音が、轟き、鳴り響く。神社の敷地内と敷地外では、まるで力強さが違っていた。まるで神社を訪れる者、俺に力を与えるかのように笛は鳴っていた。
そして、その音を奏でていたのは、一人の少女だった。