表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/44

第6話 初戦闘とレベル上げ

「うわあ……、綺麗な景色だな……」


 ソウタがフィールドへ出ると、そこには広大な草原が広がっていた。

 遠くを見やれば森や湖、そしていくつもの山々がそびえ、ここが一つの島であることを思わず忘れそうになる。


 改めてFLOのクオリティに舌を巻きつつも、さっそく狩りを始めようとしたソウタだったが、始まりの街周辺はすでに我先にと多くのプレイヤーがモンスターを狩りまくっており、とても割って入れる状況ではなかった。

 仕方がないので、誰もいなさそうなところまで移動することに決める。




 ソウタは三十分近く草原エリアをひたすらに歩き続け、ようやく人気がない場所を発見した。

 この辺がちょうどよさそうだなと思っていると、目の前にクリーム色の毛をした兎のモンスターが一匹出現した。

 モンスターの頭上には『カームラビット』という名前が表示されている。

 ソウタの掌にじわりと汗が噴き出した。



 今目の前にいるモンスターは、おそらくFLOにおける初期雑魚モンスターだろう。それもたった一匹だ。

 ヒットアンドアウェイに徹すれば、残念ステータスの自分でも倒すことが出来ると内心では思っている。

 しかし、先ほどの出来事のせいで自分のステータスに自信が全く持てないソウタは、なかなか戦闘に踏み切れない。



(くそっ! ビビってる場合じゃねえぞ綾織蒼太。ソロでやっていくってさっき決めたばかりだろうが。こんなところで躓くようじゃ、これからやっていけないぞ!)

 

 ソウタは頬を両手でパンと叩き、自分に喝を入れる。

 軽く深呼吸して呼吸を整え、カームラビットへ向かって走り出す。


「うおおおおおおお!!」


 まるで凶悪なボスモンスターへと挑むかのような雄叫びを上げ、ソウタは初期装備のノーマルロッドでカームラビットを殴った。その攻撃により、HPゲージが一割ほど削れる。

 すると攻撃を受けたカームラビットはソウタを敵と認識し、すぐに反撃の体当たりをかましてきた。


「おわっ!」


 ソウタはその攻撃をひょいっと避け、隙のできたカームラビットを杖で殴る。

 それを何度も繰り返し、カームラビットを無事に倒した。


「良かった……。少し時間はかかったけど、さすがに序盤のザコモンスターくらいなら普通に戦えるみたいだな」


 自分が善戦できると分かり安堵するソウタ。

 そもそもソウタはゲームに関しては全般的に得意であり、VRMMOもそこらのプレイヤーよりかは当然上手い。こんな序盤のザコ敵程度ならステータスが残念であれ苦戦するはずなかったのだ。


「よし、この調子でどんどん狩っていこう」


 いくらか元気が戻ってきたソウタは辺りにいるカームラビットを次々と倒していき、一旦狩り尽くすとリポップするまで待機。

 そしてリポップするや否や杖でボコボコ殴り、カームラビットを一掃する。

 十匹ほど倒したあたりでソウタのレベルが2に上がった。



-----------------------------------


【名前】ソウタ

【レベル】2

【職業】魔法使い

【所持金】1240フィース


【HP】82/82

【MP】0/0

【STR】24

【DEF】18

【INT】36

【MDF】32

【DEX】15

【AGI】14

【LUK】11

------------------------------------



 分かっていたことだが、やはりMPは0のままであった。

 何かの間違いで上昇してくれないかと心の隅で思っていたソウタは小さく溜息をつき、次なる獲物を求めて少し場所を移動することにした。






「おらあっ!」


 移動を終えたソウタが現在戦っているのは『ラピッドラット』というネズミのモンスターだ。

 大きさは五十センチほどでネズミにしてはなかなかの巨体なのだが、その動きはカームラビットと比べてかなり俊敏で、ソウタの放った攻撃は見事に避けられてしまう。

 そして、攻撃後に発生する硬直時間により一瞬動きが止まったソウタに、ラピッドラットは突進してくる。


「へぶっ!」


 横腹にもろに突進をくらったソウタは思わず声を漏らした。HPゲージが三割近く減少する。

 FLOの世界では、痛覚はかなり緩和されて再現されているようなので痛みはほとんどないのだが、体に衝撃自体は加わるため、つい声が出てしまう。


「こ、こいつめ……、お返しだ!」


 ソウタはすぐに体勢を立て直すと、思い切り杖を振り下ろす。

 今度はしっかりと命中し、ラピッドラットのHPを削りとった。

 そして間髪入れずにもう一度振り下ろし、ラピッドラットに攻撃がヒットしたその瞬間だった。


「げっ! 壊れた!」


 ソウタのノーマルロッドが綺麗なポリゴンの欠片となって飛散してしまった。


「おいおい……、武器が壊れたってことはまさか……。このゲームは武器に耐久値があるのか!」


 ソウタの推測通りFLOの武器や防具には耐久値があり、戦闘で使い続けて耐久値が0になると壊れてしまう仕様である。

 そのため耐久値が0にならないよう鍛冶屋で定期的に修理する必要があるのだが、その仕様を知らなかったソウタはノーマルロッドを耐久値0まで使ってしまい、壊してしまったのだ。


 そもそも魔法使いが使う杖系の武器は、剣や斧などと比較して耐久値がかなり低く設定されており、殴って戦闘に使うのはあまり向いていない。

 そんな武器でもう二十匹近くモンスターを狩っていたのだから、壊れるのは当たり前だった。


 武器を失ったソウタは攻撃方法を素手に切り替え、ラピッドラットをなんとか撃破した。

 するとアイテムがドロップした。


「お、アイテムゲット。何だろう?」


 ゲットしたのは『剣力石』という名称のアイテムだった。

 ソウタはアイテムボックスを開いてアイテムの説明欄を確認する。


【剣力石】

 剣の強化素材。鍛冶屋へ持って行くことで剣の攻撃力や耐久値の最大値を上げることが出来る。


「おお、強化素材か。剣の強化素材があるということは、当然杖の強化素材もあるのが道理だよな。どれどれ……」


 FLO大全で強化素材の項目を調べると、杖の強化には『杖力石』という素材を使うことが分かった。

 そして、剣力石や杖力石といった強化素材はモンスタードロップだけでなく、街の素材屋でも入手は可能とのことだった。

 だが、三十分かけて歩いてきた道を戻るのも面倒だし、杖の買い替えや素材の購入にもそこそこお金がかかる。

 ソウタはどうしたものかと少し考え込み、


「まあ、始まりの街で買える杖なんて装備したところで攻撃力弱いだろうし、強化したってどうせ割とすぐに壊れちゃうよな。そのうち強い杖が手に入るまでは素手でやっていこう」


 そう決めたソウタはメニューを閉じる。


「よーし、もう少しレベル上げを頑張って、レベル3まで上げるのを今日の目標にしよう」


 ソウタは先程ラピッドラットから受けたダメージをポーションで回復すると、狩りを再開した。




 ソウタはその後もひたすら素手でモンスターと戦い続けた。

 殴ってばかりなのも芸がないなと、たまに蹴りも混ぜたりしつつ順調に経験値を稼いでいく。

 これじゃあまるで魔法使いというより格闘家だなと自虐的な笑いを浮かべつつ、モンスターを屠ること二時間。

 あっという間に夕方になり、ソウタのレベルは目標だった3に達した。


「ふう……、なんとか目標達成。今日は帰って休むとしよう。色々ありすぎてなんか疲れた……」


 ゲームなのに疲労感も見事に再現されていることに驚きつつ、ソウタは始まりの街へ戻り、軽く食事をとってすぐに宿で眠りについたのだった。


強化素材の読み方は、剣力石けんりょくせき杖力石じょうりょくせきです。

文章力の強化素材も欲しい…………。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ