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第41話 VSブルータルオーク・レックス3

 リーナとフィーネがボスを引きつけてくれたことで、A班以外の攻略パーティの面々もなんとか落ち着きを取り戻し、取り巻きを相手にするE班以外のメンバーがA班の元へと集合した。

 そこでB班に一人、C班に三人、D班に二人の犠牲者が出ていることを把握し、ソウタはかなり心を痛めた。


 作戦会議はソウタ、ニックの二人が主にアイデアを出し進められた。

 さらにはVRMMOの知識が豊富らしいB班リーダーの長剣使いのアドバイスも加わり、作戦は迅速に立てられていく。

 二分と経たずに新たな作戦が形になり、決まった役割を素早くニックが割り振り会議は終了した。


 ちなみにいい感じに決まりかけていたところで、空気の読めないミツルがフラリと近くにやって来て、「何やら皆さんお困りのようですね。ここはどうでしょう、僕を中心に攻める作戦はいかがですか?」と首を突っ込んできた際、余裕がなかったのか温厚なニックが「あんたちょっと黙ってろよ!!」とマジ切れしたのは、ソウタは正直ボスより何倍も怖かった。


 そんなこんなで決まった作戦は次のとおりである。

 A班のソウタ、リーナ、ライル、ニック、そしてB班リーダーの長剣使いが第一線のアタック担当。

 B班の残り四人とC班の残り三人のうち一人が第二線のアタック担当。

 D班の残り四人のうち二人は魔法での後方支援。

 そして、回復役にはフィーネ、C班の残り二人、D班の残り二人の五人という布陣となった。


 フィーネ以外の回復役のプレイヤーには、パーティメンバーの手持ちのポーション全九十七個のうち五十個を均等に配り、それで傷ついたプレイヤーを回復する手筈となった。

 回復のタイミングだが、ソウタ以外のプレイヤーはHPが七割を切ればブレスで即死してしまうため、回復役の面々にはいつでもポーションを使えるように準備しててもらい、HPが七割を切ったプレイヤーが出たら即時回復するという迅速な行動が求められることとなった。


 また、ブレス後はボスに隙があるため、その時のみ各々が自分のポーションで体力を回復することに決まった。



 兎にも角にも、ボス戦にはタイムリミットは存在しないが、ポーションの総数九十七個が尽きればパーティにもはや勝ち目はないので、それを使い切る前に勝負を決めなければならない。

 攻略パーティは今一度気を引き締め直すと、それぞれの持ち場に移動し、再始動した。


 ちなみにリーナとフィーネは会議の間の三分弱の時間、見事にボスを誘導し続け、危なげなく囮役をこなし切ったのだった。




 その後、作戦が上手く機能した攻略パーティは、ブルータルオーク・レックスのHPを順調に削り取っていった。

 HPが一割を切ったところでボスのブレス攻撃の頻度が少し上がり、全員が肝を冷やしたが、なんとかそれにも対応し、戦闘は激しさを増しつつ進行した。



 そして十分後。

 まさに死闘となったボス攻略だったが、ソウタやリーナを中心とした前衛の猛攻によって、ブルータルオーク・レックスのHPはとうとう残り1%を切った。


 この残量になればソウタやリーナならあと一発、他のプレイヤーでも三、四発も攻撃を打ち込めば普通に倒すことができる。

 予期せぬアクシデントはあったものの、長かったボス攻略もようやく終わりが見えてきて、一時間近く緊張状態が続いていたプレイヤーたちの表情にも少し余裕が現れた。


 だが、それは決して油断や気の緩みといったものではない。

 むしろそれは無駄な身体の力が抜け、程よいリラックス状態となった最高のコンディションだった。


 ――――しかし。

 その直後、そんなパーティの面々を嘲笑うかのような事態が発生することとなる。



 ニックの合図でソウタ、リーナを先頭に前衛のアタッカーが一気にボスとの距離を詰め、とどめを刺しに行ったその時それは発動した。

 ブルータルオーク・レックスが突然真上に大きく飛び上がったのだ。

 今までに見たことない攻撃モーションに面食らったソウタたちは思わず動きを止める。


(ここに来て新たな攻撃……!? まずい!!)


 現在ソウタのHPは六割、他のプレイヤーは概ね八割残っており、たとえ最後の最後にブレス攻撃を受けてしまってもなんとか耐えきれる残量を維持していた。

 だが、さらに強力な攻撃が来るとしたら、下手をすると全滅しかねない。

 そして、このHPが残り僅かの状態で放たれる新たな攻撃など、ブレスより強力であることは容易に想像できる。万事休すだ。


 最高到達点に達したブルータルオーク・レックスが、隕石の落下を思わせる凄まじい速度で急降下してくる。

 もう回避行動をとる時間はない。回復も当然間に合わない。出来るのは少しでもダメージを減らすために防御姿勢をとることのみだった。


 全プレイヤーの血の気が引いた瞬間だったが、ブルータルオーク・レックスは特に何か攻撃を繰り出すことはなく、そのまま地面にズシンと着地した。

 着地しただけとはいうものの、その衝撃で地面が大きく揺れ、揺れはボス部屋全体に伝わりプレイヤーたちを打ちのめした。

 どうやら土壇場のこの場面で繰り出されたのは、落下による地震攻撃だったようである。


 そうと分かっていれば、着地の瞬間にジャンプすることでほとんどダメージをくらわずに済んだわけだが、初見のソウタたちにはどうしようもなかった。

 しかしながら、この攻撃によるプレイヤーへの被ダメージは幸いにもブレスのような絶望的なダメージ量ではなかった。


 ソウタで三割弱、他プレイヤーも多くても五割弱HPを削られるだけで済んだのだ。

 本来であれば安堵する場面なのだが、そういう訳にはいかなかった。

 なぜならこの攻撃にはスタン効果が付与されていたからだ。


 プレイヤーたちは見事にピヨらされ、約三秒の行動不能を余儀なくされてしまう。

 そしてその刹那。

 あろうことかブルータルオーク・レックスはその目を光らせると大きく口を開き、ブレス攻撃のモーションに入った。

 これをくらえば今のプレイヤーたちのHP残量なら、全員が例外なく即死する。

 プレイヤーたちの心を絶望が支配した。


 誰もが思った。このボス攻略は失敗だ――――と。

 このまさに絶体絶命と言うべき状況では、そう思ってしまうのも致し方ないだろう。

 実際、この直後ブレス攻撃が直撃し、ボス攻略パーティは全滅するはずだった(・ ・ ・ ・ ・)のだから。


 そう……、はずだった(・ ・ ・ ・ ・)



 今の地震攻撃で、全プレイヤーがスタンして動けなくなっていたならば。



「まったく……、手こずらせてくれたなあ。このバカつよオークめ……」



 たった一人、スタン状態を回避していたソウタというプレイヤーさえいなければ。



 なぜ地震攻撃でソウタだけがスタン状態にならなかったのか。それは運が良かっただけと言わざるを得ない。


 『FLO』のようなVRMMORPGには、『LUK』というステータスがある。

 これは運の良さを表すステータスであり、この数値が高いとクリティカル率が高くなったり、モンスターのアイテムドロップ率があがったりする。


 そして『FLO』では、『LUK』には状態異常を稀に回避する効果もある。

 ただしその効果は、状態異常耐性を上げたり、状態異常耐性が上昇する装備を身につけた場合の効果に比べれば微々たるものだ。


 しかし、全プレイヤーの中でレベルが断トツで高いソウタは『LUK』の数値も断トツで高い。その分その微々たる確率は他プレイヤーと比べ、当然跳ね上がる。

 加えて、マナたちからお礼に貰ったラックリングを装備していたため、更にラックの突出度が高くなり確率は上がっていた。

 それが今回のソウタのスタン回避を可能にしたのだった。



「さあ、覚悟しろよ。ブルータルオーク・レックス――――」


 ソウタは拳を握り、地面を蹴る。

 ソウタのステータスで突出して高いのは、何もLUKだけではない。AGIもこの場にいるプレイヤーの中で最も高い数値だ。

 それは今にも発動しようとするブレス攻撃が放たれる前に、ラストアタックを決められるほどに。


「――――――これで終わりだああああああああああッ!!」


 ボス攻略パーティ全員の思いを乗せた渾身の右ストレートがブルータルオーク・レックスの顔面に叩き込まれ、勝負は決した。

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