表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/44

第39話 VSブルータルオーク・レックス

 ボス攻略は、パーティの陣形が上手く機能したこと。

 そして、二回目ということでボスの手の内が概ね把握されていたこともあって、驚くほど順調に進んだ。

 前回のボス攻略ではボスのHPを半分削るのに三十分程かかったそうだが、今回はまだ二十分も経っていないのにもう半分を削り切ろうとしている。


 それは今回加わったソウタという絶対的な強さのプレイヤーの存在が大きかったが、飛び入り参加となったラスターも相当な貢献度だった。


(す、すげえ……)


 以前ライルから相当な実力者とソウタは聞いていたが、想像以上だ。

 その洗練された動きは努力だけでは到達できない圧倒的な才能を感じさせた。攻撃速度がとにかく尋常ではないのだ。

 そのスピードは普通の剣士プレイヤーが一撃入れる間に下手をすると三撃入れられる速度だろう。

 本当にいけ好かない奴だが、不覚にも味方に加わってくれて心強いとソウタは思ってしまった。


 そして、もう一つ驚いたのはミツルの戦いぶりだった。

 相当集中しているのか、今朝の素振りの時よりも明らかに剣のキレが増している。

 ブルータルオークの攻撃を完璧にしのぎつつ、着実にダメージを与えているばかりか、E班の味方のフォローまでこなしている。

 本当にあれはミツルなのかとソウタとリーナは何度も我が目を疑った。


「おいおい、ミツルの奴やるじゃんか。見直したぜ」


「本当ね。ソウタ君に負けたのが悔しくて、相当修行したのかもね」


「かもな。こりゃ俺も負けてられないな」


 ソウタはリーナと短いやり取りを終えると、ボスへと意識を戻しギアを一段階上げた。





 さらに戦闘は進み、バトル開始から二十分。とうとうブルータルオーク・レックスのHPが半分を切った。

 いよいよブレス攻撃が解禁されるタイミングだ。

 プレイヤーたち全員がボスの目に注意を向ける。


(さあ、いつでも来い!)


 ソウタが心の中でそう呟いたその刹那、その目が赤く光り、ブルータルオーク・レックスは大きく口を開いた。

 爆音とともにその口からすべてを焼き尽くすブレスが炸裂する。


「………………ッ!!!」


 ブレス攻撃はニックの言っていたとおり破滅的な威力で、高レベルのソウタでも一気に五割もHPを削られた。他のプレイヤーたちは七割削られているので、それと比べればマシだが、どちらにせよシャレにならないダメージだった。


「皆さん、回復を!!」


 ブレス攻撃に面食らっていた各班の回復役プレイヤーが、ニックの声に反応して回復魔法で班員のHPを回復させる。

 多少回復に手間取った一同だが、どうやらブレス後はボスに硬直時間があるらしく、十分に回復時間を取ることが出来た。


 また、ブレス攻撃を使うのには一定の間隔があるようで、次が来る前にしっかりと回復して体勢を整え直せば、問題なく戦うことが出来ることも同時に分かった。

 一撃の威力は絶大だが、そこを耐えられれば恐れることはなさそうであり、ソウタはこの戦いに少し希望を見出せてきた。





 その後も誰一人死亡することなくボス戦は進み、十分後にはボスのHPが25%を切った。

 この瞬間プレイヤーたちのリザインルールの使用権限がなくなったが、もはやその頃には誰一人そんなことは気にしていなかった。

 次またやり直せばいいなどという甘い考えは誰の頭にもなく、全員が目の前の敵を今倒しきることしか考えていなかったのだ。



 そしてさらに十分が経過し、アクセル全開となった攻略パーティの猛攻によってとうとうボスの残りHPが3%を切った。

 そろそろラストアタックを狙えなくもないタイミングであり、ソウタがふとラスターの方を見やると、丁度そこでラスターに動きがあった。


「おいお前らあ!! 出番だ!!」


 その大声に反応し、B~E班に散らばるラスターの仲間たちは即座に彼の元へ集まり、攻撃力強化魔法を何重にもかける。


「うーし、そんじゃあラストアタック決めさせてもらうぜえ!! 道を開けろてめえら!!」


 乱暴な物言いで他のプレイヤーたちをどけさせると、攻撃力が極限まで高められたラスターはとどめの連続攻撃を仕掛けにボスへ向かって走り出す。

 素早く十分に間合いを詰めたラスターは、間髪入れずにボスへと剣を振りかざす。


「ひゃっほーう! ラストアタックいただきー!!」


 だが、そこで事件は起きた。

ブルータルオーク・レックスが腰につけていた紫色の飲み物を手に取ると、グビッと一気に飲み干し、HPを残り20%まで回復したのだ。


「何っ!?」


 予想だにしない事態にラスターの動きが止まる。

 そこにボスの強力な四連続の斬撃が襲いかかった。


「うわああああああ!!」


 その攻撃をすべてまともに受けたラスターのHPゲージが、一瞬で残り僅か数ミリにまで削られた。


「く、くそおおおおおおお!!」


 ラスターは死に物狂いで反撃に転じる。

 その顔は焦りと恐怖で引きつり、攻撃に先ほどまでのキレはもはやない。

 すべての攻撃は見事に盾で防がれ、攻撃をはじかれて隙のできたラスターに無慈悲なボスの一撃が放たれる。


「だ、誰か、助け――――」

 

 直後、ラスターの身体は真っ二つに斬り裂かれた。

 二つに分離したその身体は同時に飛散し、ラスターはこの世界から消滅した。



「り、リーダー!!」


 ラスターの仲間の一人が叫んだ。

 その声に反応したのか、ブルータルオーク・レックスは次の攻撃のターゲットをラスターの仲間四人に決める。

 その場で剣を構えると、剣スキルを立ち上げた。

 それを見たソウタの背筋が凍る。


(あ、あの構えは……!! まずいッ!!)


「避けろ!!!」


 ソウタの絶叫もむなしく、四人はボスのスキル技の餌食となり一瞬でその命を散らした。

 放たれた剣スキルは【閃光颯刃】。

 ソウタの知る限り現時点ではリーナしかマスターしていない攻撃力抜群の上級剣スキルだった。


 順調に見えたボス攻略は、この時を境に地獄に変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ