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第3話 キャラクターメイク

 蒼太は気が付くと真っ白な空間に一人立っていた。

 先程までいた白い空間とは違って周りには何もなく、広さもかなり狭い。空間というより部屋と言った方がふさわしい広さだ。


「えーっと……。キャラメイクをしてもらうって言ってたっけか。どうすりゃいいんだ?」


 キャラメイクを進める手順を一切聞かされていない蒼太は、どうしたもんかと辺りをキョロキョロと見回し始める。

 あまりにも殺風景で無機質な空間に、もしかして手抜きか?とか思っていると、


『Fiftyland Onlineの世界へようこそー!』


「うおお! びっくりした!」


 突然女の子の大きな声が聞こえ、蒼太は軽く飛び上がった。


『ご、ごめんなさい! 私ったらいきなり大声出しちゃって。記念すべき第一声だったもので、つい張り切りすぎてしまいました……』


「い、いや、大丈夫だ。というか姿が見えないけど、どこにいるんだ……? あんたは一体……?」


『あ、すみません。自己紹介が遅れました。私はFLOプレイヤーの方々のキャラクターメイクを担当するナビゲートAIです。音声のみの存在なもので、姿形はありません。ただ、せっかくなのでとびっきりの美少女で脳内補完しといてくださいねっ♪』


「お、おう……。まあ俺としてもどうせなら美少女の方が嬉しいし、何とか頑張ってみるよ。ちなみに名前もないのか?」


『はい、名前も特に設定されていません。あ、そうだ。じゃあせっかくなので名前を付けてもらっていいですか?』


「え、俺が?」


『はいっ! ぜひ可愛い名前をお願いしますねっ』


「よーし、まかせてくれ。こう見えてもネーミングセンスには結構自信があるんだ。そうだな……。じゃあナビゲーターの女の子だからナビ子でどうだ?」


『え、ナビ子……ですか……? えーっと……、ワー、カワイイナマエダナー』


「絶対思ってないよね!?」


「い、いやいや。そんなことないですよ。ま、まあ、センスは人それぞれですからね。ナビ子も何だかんだでいい名前だと思ってますよ。ハハハ……」


(め、めちゃくちゃ気を使われている……!!)


 AIに気を使われるという貴重な体験をし、蒼太は普通にへこんだ。


「えーでは、気を取り直してキャラクターメイクを始めますね。まずはプレイヤーネームを決めてください』


 蒼太の目の前に半透明のウィンドウが現れる。どうやらここに名前を入力すればいいようだ。

 蒼太は基本的にVRMMOをプレイするときには、本名をカタカナ表記にした名前を付けている。たまに気分で好きなアニメのキャラクター名を付けたりするときもあるのだが、今はそんな気分ではない。


「よし、いつも通り本名をカタカナにしてソウタでいいや。ソウタ、と」


 ウィンドウを操作し、蒼太もといソウタは名前の入力を完了した。


『では次にアバターの設定です。ただ、FLOでは顔や体型は本人と同じものでプレイすることになります。変えられるのは髪型や髪色、目の色、髭の有無、傷の有無などになりますのでご了承ください』


「そうなのか、なるほどな」


 VRMMOのアバター設定では、プレイヤー本人の精神的な面や操作性を考慮して顔や体型が本人準拠とされるものが多い。

 ソウタは以前プレイしたゲームで、自分と全然違う体型のキャラを作ったら全然うまく操作できず、動きに慣れるのに一ヶ月近くかかった経験がある。

 その経験からアバターは自分と近ければ近いほど扱いやすいことを分かっていたため、この仕様はむしろありがたいと思った。


「うーん、髪型や髪色とかは変更できるって言ってもなー。俺ってあんまりそういう変更したことないんだよな。いいや、このままで決定っと」


 ソウタは決定のボタンを押し、アバターの設定を完了した。


『では、最後に職業を選択してください』


 ナビ子がそう言うとウィンドウに職業リストが表示される。剣士に魔法使い、斧使い、槍使い、弓使い、格闘家、生産職、盗賊、遊び人などなど豊富な職業がずらりと並んでいる。


「うおー、いっぱいあるなあ。でもやっぱ王道の剣士か魔法使いあたりが無難かなー。ちなみに職業は一度選んだらずっと固定なのか?」


「そうですね。ここで選択した職業は今後変えることは出来ません」


「変えられないのか。最長で三年プレイするかもしれないわけだしな。これはかなり重要だぞ。うーん……どうしよう」


 ソウタは眉間にしわを寄せて腕を組み、大いに悩みだす。


(剣士にするか魔法使いにするか……。それともあえてみんなが選ばなそうな職業を選んで、俺はみんなとは一味違うんだぜとカッコつけてみるべきか……。あー! 決められねえ!)


 お湯を注いだカップラーメンがいい感じに出来上がりそうな時間悩み抜いたところで。


「よし決めた! さっきプレイしたゲームでは剣士だったし、今回は魔法使いにする! いろんな魔法を使って冒険ってのも楽しいもんだしな」


 ソウタは魔法使いを選択して決定ボタンを押した。


『これでキャラクターメイクは完了です。さて、ここで私からソウタさんにプレゼントです。アイテムボックスをご覧ください』


「プレゼント? どれどれ」


 ソウタは言われた通りウィンドウを操作し、アイテムボックスを開く。そこには『FLO大全』というアイテムが格納されていた。


「ええっと、このアイテムは何なんだ?」


『これはですねー、FLO大全というFLOの基本情報やお得情報が載っている本です。プレイヤー全員に配布されるものでして、ゲームを進める上で重要な情報がたくさん載っているので、ぜひ読んでくださいね』


「おう、分かったよ」


 ソウタはゲームをする際、説明書はあまりしっかり読まずにプレイしながら覚えていくタイプだが、今回ばかりは時間を見つけて読んでみようと思うのだった。


『えー、では最後に何か質問はありますか? と言っても『FLO』大全に書いてあるようなことしか私は答えられませんが……』


「そうなのか。まあせっかくだから質問しようかな。フィフティはクリアの期限は三年って言ってたけど、FLO内の三年はどのくらいの期間なんだ?」


『はい。FLO内の時間の流れはソウタさんの世界と同じで、一日が二十四時間の一年三百六十五日という設定になっています』


「現実と同じか……」


 ということは一つの島の攻略にかけられる時間は一ヶ月もないという計算になる。

 FLOの難易度はまだ未知数だが、そこまで優しい時間制限ではなさそうである。


『あ、ちなみにですが、ゲームが始まる年月日はFLO暦五〇〇年の一月一日に設定されています。なので、FLO暦五〇二年の十二月三十一日がタイムリミットとなります』


「十二月三十一日……、それは覚えやすくていいな。いろんな意味で」


『いろんな意味?』


「あ、いや、何でもない。気にしないでくれ。他にも質問していいかな?」


『はい、どうぞ」


「このゲームはスキルとかってあるものなのか?」


『はい、あります。剣士なら剣スキル。魔法使いなら魔法スキルといったように様々なスキルが用意されています。あ、あとユニークスキルっていうものもありますよ』


「ほう、ユニークスキルか。やっぱりそれってかなりレアなスキルなの?」


『そうですね。数が全部で五十しかないので、希少性は極めて高いです。そして、ユニークスキルには無作為に選ばれたプレイヤーに初めから与えられる『ギフトタイプ』と、取得条件を最初に満たしたプレイヤーに与えられる『フラグタイプ』の二種類が存在します』


「ギフトタイプとフラグタイプ……。じゃあ運が良ければ、ゲーム開始直後からユニークスキルを持っていることもあり得るのか」


『そういう事です。なので、この後ステータス画面のスキル欄を確認してギフトタイプのユニークスキルを持っていたら、内心ガッツポーズでもしてください。あ、でも、たとえ持っていなかったとしても、フラグタイプのユニークスキルを得られる可能性はあるので、あまり落ち込まないでくださいねっ』


「ああ」


 ソウタはうんと頷いた。


『まだ何か質問はありますか?』


「あ、じゃあ最後に一つだけ。FLOってPKは出来る仕様なのか?」


『はい、出来ます。出来るといってもPK可能エリアはフィールドやダンジョン内のみで、街の中では出来ませんのでそこはご安心ください』


「そっか、PKありか……」


 それを聞いてソウタは一抹の不安を覚えた。

 三年以内にクリアしなければ全員死ぬという状況下でPKをして和を乱すプレイヤーはいないと信じたいが、ゲーマーの中にはマナーの悪いプレイヤーが一定数いる。

 二万人ものプレイヤーが参加しているFLOでも、PKを行うプレイヤーが存在してしまうのは避けられないだろう。

 余計なプレイヤー間のいざこざで、ゲーム攻略が遅れることがないことを願うソウタであった。


『さあ、いよいよゲームスタートですよ。プレイヤーはファース島の中心部にある始まりの街からスタートとなります。準備はいいですかソウタさん?』


「ああ、準備はもう万端だ。早くプレイしたくてウズウズしてるよ」


『ふふっ、そのようですね。では、FLOの世界を存分に楽しんでくださいねっ』


 ナビ子がそう言うとソウタは全身を光に包み込まれ、FLOの世界へと旅立っていった。


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