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第36話 メインボス

 ニックによると、ブルータルオーク・レックスは巨大なオークの王のモンスターであり、右手に剣、左手に盾を持ち、攻撃と防御をバランスよくこなす厄介なボスだそうだ。

 通常攻撃だけでなく、平気で剣スキルもバンバン使ってくるそうで、それを聞いたソウタは気負けしそうになった。

 また、取り巻きに四体のブルータルオークというモンスターもおり、たとえ倒しても一定時間ごとにリポップし続けるらしい。


 そこまでの話で十分お腹いっぱいだったのだが、中でもソウタを一番驚かせたのは、HPが半分を切ったところでブルータルオーク・レックスがブレス攻撃を使用し始めるという情報だった。


「オークがブレス攻撃って……。ハチャメチャすぎますよそれは……」


 ソウタが暗いトーンでそう発言すると、ニックも「本当ですよね……」と苦笑し、


「どうやらそれは少しドラゴンの血が入っているっていう設定のためらしいです。ただ、本当にハチャメチャなのはそのダメージなんです」


「え、そんなに凄い威力なんですか?」


「はい。防御できなければほぼ即死、たとえ防御行動をとったとしてもHPを七割持っていかれます。どうやら魔法攻撃とも違う特殊攻撃扱いらしく、ダメージ計算式が通常とは違う仕様のようなんです。しかも全体攻撃なので避ける術はおそらくありません」


 ニックはぴしゃりとそう言った。

 ソウタはしばし二の句が継げなかった。

 防御が大して意味をなさない全体攻撃など常軌を逸している。およそ一番最初の島のボスに設定する攻撃ではない。


 唖然とするソウタに向け、ニックは「ただ、その発動前に目が赤く光ることが分かったので、ブレスのタイミングは事前に察知できます」と前置きしてから、


「しかし、初見だった我々は当然そんなことは分かりませんでした。HPが五割を切ったところで突如放たれたブレスで一気に半数以上のプレイヤーが死にました。パーティは当然パニックとなってさらに数は減り、攻略続行不能と判断したリーダーのジェラルドさんの指示でプレイヤーたちは敗走しました……」


 ニックとリーナはその時の光景を思い出したのかしばし天を仰いだ。

 おそらく想像を絶する地獄絵図となったのだろうとソウタはゴクリと生唾を飲んだ。

 そこでニックが再び口を開く。


「ただ、FLOのボス戦はボス部屋の扉が閉じてしまうため、扉からの脱出は不可能だったんです」


「えっ……、じゃあどうしたんですか」


「ソウタさんはリザインルールという言葉を聞いたことは?」


「い、いえ、ないです。何ですかそのルールは」


「リザインルールとは、第一と第二の島限定でボス部屋からの緊急脱出を可能とするルールの事です。ボス戦が始まるとメニュー画面の中にリザインという項目が追加され、そのボタンを押すと『リザインしますか?』というメッセージが出るのでそこで『はい』を選べば脱出できます」


「なるほど。まだプレイヤーたちがメインボスとの戦いに慣れてないことを考えての仕様ということですね」


「そういうことです。ただ、ボスのHPが25%を切ってからは使えなくなるという制限はあるようです」


「そんな制限が……。でもまあ、リザインルール自体は素直にありがたいっすね」


 ニックはそこで少し間を開け、


「……それがそうでもないんです。もちろんありがたいですが、リザインするための操作でプレイヤーは数秒間無防備になってしまうため、ボスが暴れまわる中でのリザインは困難を極めました」


「え、じゃあどうやってリザインしたんですか?」


 ソウタの疑問にはリーナが答えた。


「ジェラルドさんがその時間を作ってくれたのよ。全員がリザインし終わるまで、たった一人でボスを引きつけてね。そうしてくれなかったら私やニックさん、そして他の生き残ったプレイヤーもどうなってたか分からないわ。けどその結果ジェラルドさんは……」


 リーナはそこから先の言葉を口に出さなかった。

 だが、リーナとニックの表情を見たソウタはすべてを察し、言葉を失った。

 ショックを受けたからというのももちろんあった。

 だが、それ以上にソウタの中にジェラルドというプレイヤーに対して尊敬の念とでも言うべき何かが生まれ、言葉が出て来なかったのだ。


 ソウタはジェラルドとはメインダンジョンが見つかった日に、二言三言くらいしか言葉を交わしていない。ほとんど赤の他人と言っていい関係だ。

 だがそれでも彼が抱いた覚悟と想いがソウタの全身を駆け巡り、その心をどうしようもなく揺さぶった。

 こんなにも誰かを賞賛したいと思ったのは生まれて初めてだった。


「だからソウタさん。ジェラルドさんや他の脱落したプレイヤーの想いを無駄にしないためにも、次こそは何としてもボスを倒したいんです。今お話ししたとおり手強い相手ではありますが、どうか協力してくれませんか?」


「私からもお願い、ソウタ君」


 二人はソウタに深々と頭を下げた。

 それを見たソウタは慌てて声を出す。


「ちょっ、頭を上げてくださいニックさん! リーナも何かしこまってるんだよ! 協力するに決まってるじゃん! 俺は元々何が何でもこの島のボス攻略に参加したかったんだからさ!」


「ほ、本当ですか!?」


 ニックがガバッと顔を上げた。


「はい、一緒にボスを倒しましょう」


「ありがとうございます!!」


 ニックは眩しいくらいの笑顔になった。

 リーナも嬉しそうにソウタに声をかける。


「また一緒に戦えるね。よろしくっ」


「ああ、前よりもっと強くなってるから期待しとけ」


「うんっ。あ、そうだニックさん。もう一つお願いがあるんですよね?」


「おっと! そうでした。 実はボス攻略パーティなんですけど、現時点でも戦力は足りてるとは思うんですが、出来ればソウタさんを除いてあと一人アタッカーとヒーラーのプレイヤーが欲しいんです。ソウタさん、どなたか心当たりはないものでしょうか?」


 そう聞かれたソウタの脳裏にすぐに二人のプレイヤーが浮かんだ。


「そういうことなら協力してくれそうなプレイヤーを丁度二人知ってるので大丈夫ですよ。と言うかせっかくなんでここに呼びましょう」


「おお、それは助かります! ぜひお願いします」


 ソウタは早速ライルとフィーネにメッセージを送った。

 そこにリーナが話しかけてきた。


「ソウタ君。私と別れてる間に新しくフレンド出来たんだ」


「まあな」


「どんなプレイヤーなの?」


「うーん、今呼んでからちゃんと紹介するけど、斧使いの男と魔法使いの女の子だよ」


「……女の子もいるんだ」


「……へ? そうだけど、何か問題が?」


「べ、別にないけど……」


「???」


 何か言いたげなリーナの様子が気になったソウタだが、そこで二人からすぐに向かうというメッセージが返って来たので、追及するタイミングを逸してしまった。


(まあいいか。とりあえず二人の到着を待とう)






「おう、どうしたんだよソウタ? 急に呼び出して」


「そうです。何かあったんですか?」


 五分後、店に入ってきたライルとフィーネが開口一番そう聞いてきた。


「まあ今から一から説明するからとりあえず座ってくれ」


 ソウタは二人を椅子へと促し、ニックとリーナに紹介を始める。


「こっちの斧使いがライル。そしてこっちの魔法使いがフィーネです」


「あ、えっと、ライルです。よろしく」


「フィーネですっ。よろしくお願いします」


 そして、今度は逆にニックとリーナのことをライルたちに紹介する。


「こちらがニックさんで、こっちの剣士がリーナだ」


 そこまで言い終えた途端、ライルの顔色が変わった。


「……リーナ? うおおお! 本物じゃねーか!!」


「……ん、リーナのこと知ってるのか?」


「当たり前だろ! どんだけ有名人だと思ってんだ! 美人剣士プレイヤーとしてもう結構ファンも付いてるんだぞ!!」


「えっ。そ、そうなのか……」


 これだけ美人で実力もあれば有名になるのも分からなくはないが、ファンまで付いていることにはソウタは素直に驚いた。

 リーナもそこまでは知らなかったのか苦笑いしている。


「おい、ちょっと待て? じゃああれか。お前がコンビ組んでたのってリーナだったのかよ! かああー! こんな美人とコンビだったとはけしからん奴め! こうしてやるっ!」


 ライルはソウタにお馴染みのヘッドロックをお見舞いした。


「うあっ、苦しいつーの! ライルこんにゃろっ、来て早々ヘッドロックはひどくね!?」


「うるせーい。これは全男性FLOプレイヤーの怨念だと思え! このっ、このっ!」


「意味分かんねーよ! つーか呼んだ理由を説明したいから放してくれ。ギブギブ!」


「おっと、そうだったな。しょうがねえ、今日はこれくらいにしてやろう」


 ライルはパッと両手を放し、ソウタはなんとか自由の身となった。


「ふう……、悪いなリーナ。変なとこ見せちゃったわ」


「ふふっ、いいわよ。仲がいいんだね」


「さあ、どうだかな。じゃあ説明を始めよう」






「もちろん俺も参加するぜ。ボスをボコボコにしてやろうじゃねえか!」


「私も参加します。特訓の成果を見せたいと思います!」


 一通り説明を終えると、二人は同時にそう言った。完全にやる気満々といった様子だ。


「ありがとうございます! 凄く助かります!!」


 ニックはお礼を言って大きく頭を下げた。


「これで戦力がかなりアップしましたね」


 リーナがニックにそう声をかけると、彼は笑顔で頷き、


「はい、何だかいけそうな気がしてきました。絶対にリベンジしてやりますよー!」


 とかなり士気が上がっている様子だった。


 その後、ライルやフィーネも交えた五人で少し一週間後の攻略のことを話し合った。

 話の中でリーナがニックに自身のユニークスキルの情報を開示している事をしったソウタは、自分のユニークスキルの事をすべて話した。

 それにならってフィーネも『ワンモア・ライフ』の事を話すと、あまりのユニークスキル取得率にニックは大いに驚いていた。

 ライルにいたっては「うおお、俺もユニークスキル欲しいよちくしょー!!」と魂の叫びを店内に響かせていた。


 そして、一通り話が終わると、ニックは総括に入る。


「では皆さん、ボス攻略は一週間後の一月二十四日に行いますので、その日の十時に北の広場に集合ということでお願いします。なるべくで構いませんが、それまでにレベル上げなどをしておいていただけると嬉しいです。では、一週間後はよろしくお願いします!!」


 各々が思い思いの返事をし、一同は解散した。

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