第22話 ビッグニュース
マナとミナの参戦により、戦況は完全にひっくり返った。
二人が放つ絶妙なタイミングの魔法攻撃によって、次々とナックルエイプは撃破されていく。
マナもミナもプレイヤーとしての実力は決して高い方ではない。個人の実力では平均よりも少し下くらいの立ち位置だ。
だが、姉妹ならではの抜群のコンビネーションでお互いがお互いをカバーし合い、二人は上級者プレイヤー顔負けの動きを見せていた。
そして、そこに体勢を立て直したソウタのリーサルウエポンのような拳も加わり、さらには麻痺から回復したリーナの防御無視の鋭い斬撃も追加。
そんなものを前にしては、どれだけ束になってかかろうともナックルエイプたちに勝ち目などなく、戦いは三分と経たずに終結した。
「ハア……、ハア……。何とか倒せたか……。ホントに助かったよ二人とも、ありがとう」
「本当だわ……。二人が来なかったら間違いなく私たちは死んでた。ありがとね、マナ、ミナ」
一度は死を覚悟した二人は、まだ少し呆然としながらお礼を言った。
「いえいえ、お二人が無事で本当に良かったです」
「はい、助けになれて良かったです」
お礼を言われたマナたちは笑顔でそう返した。
それを見てソウタとリーナもようやく安堵の笑顔となる。
そして、リーナはソウタの方を向くと、軽く俯きながらお礼を言った。
「あと……、ソウタ君も本当にありがとね。絶対死なせないって言ってくれた時、……凄く嬉しかった」
「お、おう。どういたしまして。……ん? なんかリーナ、ちょっと顔が赤くないか?」
「えっ。き、気のせいよきっと!」
「そ、そうか? というか俺、そんなこと言ったんだな? なんかさっきはとにかく必死だったから、正直ちょっと記憶が……」
「なっ!? い、言ったわよもうっ! まあとにかくありがとっ!!」
リーナはそう言ってプイッと顔を反らした。
何でちょっと怒ってるんだろうと首を傾げるソウタだったが、そこでふと別の疑問が湧いて出た。
「それにしてもどうしてマナとミナはこの森にいたんだ? いや、もちろんいてくれて凄い助かったけども」
「それは本当に偶然なんです。ミナと話して今日は南西の森エリアでレベル上げをしようってことになって来たんです。そしたらソウタさんたちがモンスターに襲われているのが見えて、それで助けに入れたんです」
「へー、こんなことあるんだなあ。運がいいにもほどがあるぜ全く」
「……ねえ、ソウタ君。二人に助けてもらったし、今度は私たちが何かお礼をするのはどうかな?」
「おお、そうだな。命を救われたんだからそれくらいしないとな」
「いえいえ、お礼なんてとんでもないですよ! 別にお礼されたくて助けたわけじゃないので気にしないでください!」
両手をバタつかせながらマナはそう言った。
するとそのセリフを聞いたリーナはクスッと笑う。
それを見たマナは少し慌てて、
「あれっ? 私、何か変なこと言いました?」
「ううん、ごめんなさい。マナってば昨日の私たちと同じじこと言ってるもんだからつい」
「あ……、本当ですね」
そう言ってマナもクスッと笑った。それにつられてミナも笑う。
「お姉ちゃん。せっかくお二人が言ってくれてるんだし、素直にお礼してもらおうよ」
「うん、そうだねっ。分かりました。お二人の気持ち、受け取ろうと思います!」
「決まりね。ちなみに二人は何か欲しいものある?」
「いえ、特には……。ミナ、なんかある?」
「うーん、私もないですね。あ、じゃあもう夕方ですし、美味しいご飯が食べたいです!」
「美味しいご飯ね。よーし、じゃあ私の知ってる美味しいお店に行きましょう。ご馳走するわよ。それでいいかな?」
「「はいっ!!」」
リーナの提案をマナたちは二つ返事でオーケーした。
「よーし、そうと決まれば出発しようぜー」
方針が決まり移動を開始しようとしたのだが、そこでリーナがソウタに向かって、
「……あ、でも鍛冶屋にだけは寄るからねっ」
「そこは譲れないのね……」
ソウタはスッと肩をすくめた。
その後街に戻ったソウタたちは、リーナの剣を強化するべく鍛冶屋へ行って剣を預けると、リーナおすすめの日本風の定食屋に入店した。
メニューを見れば、から揚げ定食やら生姜焼き定食やらお刺身定食などなど日本ではおなじみのものが並んでおり、ソウタは現実での生活が少し懐かしくなった。
リーナがここのおすすめはお刺身定食だと教えてくれたので、多少値は張ったが四人ともお刺身定食を注文する。
十分程して料理が運ばれてくると、ソウタたちは目を丸くした。
お刺身定食は赤身、白身、光物などの色とりどりの刺身が綺麗に盛り付けられており、想像以上の豪華さ。まるで高級料亭にでも来たかのような錯覚を覚える。
早速いただきますをし、刺身を口へ運ぶと味も大満足の美味しさで、四人はあっという間にそれを食べ終えた。
その後はリーナ、マナ、ミナのガールズトークが驚異の盛り上がりをみせ、結果として二時間以上も店に居座ったのだった。
食事を終えて店を出たソウタとリーナは、そのうち一緒にクエストでもやろうと約束してマナたちと別れた。
そして、お互いに宿へ向けて歩き出そうとしたところで、街の異変に気が付いた。
「なんか、街がざわついてないか?」
「ソウタ君もそう思う? 何かあったのかしら? ちょっと誰かに聞いてみよう」
リーナは近くにいた弓使いの男性プレイヤーの方へ歩み寄っていき声をかけた。
「あの、すみません。随分と街が騒がしいようですけど、何かあったんですか?」
声をかけられたプレイヤーは興奮気味に口を開いた。
「何かあったなんてもんじゃないよ! この島のメインダンジョンがとうとう見つかったんだ!!」
「何ですって!!」
「マジかよ!!」
ソウタとリーナが全く同時に声を上げる。
二人としてもただ事ではない話が聞けるとは思っていたが、まさかメインダンジョンが発見されたとは正直予想していなかった。
遂にこの時が来たかとソウタは思わずガッツポーズする。
「大マジだよ。怪しいと言われていた島の北西エリアで見つかったらしい。そんで明日から早速メインダンジョンに挑むらしくって、見つけたパーティのリーダーが、今北の広場で攻略パーティのメンバーを募ってるみたいだ」
「北の広場……。貴重な情報ありがとうございます。ソウタ君、行ってみよう!」
「おう!」
弓使いプレイヤーに会釈をし、二人は北の広場へと向かった。




