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第20話 VSソードゴブリン・ロード

 ボス部屋は半径十メートルの円形の部屋だった。部屋は松明で照らされてはいるものの、やや薄暗い。

 そして、部屋の奥には一体の巨大なゴブリンが立っていた。どうやらこのゴブリンがボスのようだ。

 ボスゴブリンの体長は二メートルを超えており、そこに全身が筋肉ですと言わんばかりの隆々とした体つきも加わって、凄まじい威圧感を放っている。


 ボスゴブリンは部屋に侵入してきたソウタたちに気付くと、腰に差していた大剣を引き抜いて手前に構えた。

 そして「グオオオオ!!」という大きな咆哮を放つと同時にHPバーが出現。バーの上にはソードゴブリン・ロードという名前が表示された。


「来るわよっ!!」


 リーナの緊張と焦燥の混ざった声が部屋に響き渡る。

 瞬間。ソードゴブリン・ロードは地面を蹴り、ゴオッ!!とソウタの方へと突撃してきた。


(速い――――ッ!!)


 一瞬で間合いを詰めたソードゴブリン・ロードは、ソウタに向けて大剣を横に大きく一振り。

 避け切るのは不可能だと咄嗟に判断したソウタは、その攻撃を両腕で受けた。

 これがリアルならソウタの腕はいとも簡単に斬り落とされ、そのまま体を真っ二つにされていただろうが、ここはゲームの中だ。その体勢がシステムに防御として認識されたため、HPは減少したものの腕は当然無事である。

 しかしながら、上手く防御できたとは言っても攻撃の衝撃までを防ぎきることはできない。その衝撃で数メートル後ろへ飛ばされた。


(――――――ッ!! 何だよ、これ……!! いくらなんでも攻撃が重すぎる!! こんなの素手で何発も受けてられないぞ……。腕の感覚がおかしくなっちまう……!!)


 今まで戦ってきた雑魚モンスターとは明らかに違うものを感じ、ソウタの額に汗が伝う。

 そして、間髪入れずに第二撃がソウタに襲い掛かる。


「ソウタ君!!」


 その攻撃をソウタとソードゴブリン・ロードの間に素早く入ったリーナが剣で受けた。


「くっ!!」


 さすがのリーナもその衝撃に声が漏れる。しかしながら、しっかりと受け切ったことでボスにわずかな隙が生まれる。


「今よっ!!」


「まかせろっ!!」


 ソウタは即座にスキル【破空拳】を使用し、ソードゴブリン・ロードの腹部に思い切り叩き込んだ。

 ドゴォン!!という岩でも砕いたかのような音が鳴り響き、ソードゴブリン・ロードの身体が大きくよろめいた。

 そこにすかさずリーナが連続斬りの剣スキルの一つ【三連剣】を使用し、ボスの身体を斬り刻む。

 ソウタとリーナの息の合った攻撃を続けざまに受けたソードゴブリン・ロードは、バックステップで二人から距離をとった。

 ソウタがちらりとボスのHPを確認すると、今の攻撃で一割ほど減っているのが確認できた。


「さすがはダンジョンのボスだな。今の攻撃を受けてもあれしかHPが減ってない」


「そうね。でも、今みたいに上手く連携を取って戦えば十分勝てそうね」


「ああ。じゃあ俺から攻撃するからバックアップ頼むぞ」


「うん、任せて」


 二人は一瞬目を合わせ頷くとソードゴブリン・ロードへ向かって走り出し、再度攻撃を叩き込んだ。




 その後はほとんど大きな問題もなく、戦闘は進んでいった。

 そろそろ戦闘開始から十分が経過し、ソードゴブリン・ロードのHPがとうとう一割を切る。

 そこで異変が起きた。


 「グオオオオ!!」という一際大きい咆哮とともに、ソードゴブリン・ロードは剣の属性付加スキル【雷剣】を使用したのだ。

 バチバチと大剣が雷を帯び、雷属性が付与される。

 それを見たソウタが目を輝かせ叫んだ。


「うおおおー! 何だあれ、かっけー!!」


「ちょっ、こんな時になに見惚れてるのよ! 絶対ヤバいわよあれ! 明らかにパワーアップしてそう!」


「しょうがないだろー。あんなの全男子がかっこいいって言うって! 雷の剣とかロマンの塊だよ!」


「もー、変なこと言ってると思わぬ一撃をくらっちゃうわよっ」


「大丈夫だって。あいつのスピードにはもう慣れたし、思わぬ一撃なんて――――がっ!!」


 信じられない速度で急接近してきたソードゴブリン・ロードの一閃を、ソウタはまともにくらった。

 武器に見惚れていたソウタではあったが、決して油断していたわけではない。

 どうやら何かしらの大技スキルを使用したらしく、その攻撃速度が先程までとは比べ物にならない速さだったのだ。

 ソウタは衝撃で真後ろに十数メートル吹き飛ばされ、壁に激突。そのまま前に倒れこんだ。


「ソウタ君!!」


 リーナが慌ててソウタの元へ走り寄る。

 ソウタは無事をアピールしようとすぐに起き上がろうとするが、なぜか体が全く動かなかった。


(な、何だ……!? 体が全然動かねえ……。一体何が……? ――――――ッ!!)


 そこでソウタは、自分の名前表示の横に麻痺アイコンが付いていることに気が付いた。どうやらスキル【雷剣】によってあの大剣に麻痺の効果が付与されていたようだ。

 そして、麻痺の持続時間として150秒という時間が表示される。


(150秒!? 冗談だろ……!? 俺の麻痺耐性がレベル0だからか? いくらなんでも長すぎる!!)


 とてもそんな時間地面に這いつくばってはいられないが、幸いなことに今の大技使用によってボスには硬直時間が発生しているようだった。


(しめた! この隙に麻痺を回復してとっとと反撃だ!!)


 ソウタはかろうじて動く指先を動かし、アイテムボックスを開こうとしたが、そこで自分が麻痺回復用のアイテムを所持していないことに気付いた。


「り、リーナすまん……。 俺、麻痺しちゃったみたいなんだけど、麻痺回復用のアイテム持ってないんだ。だから、持ってたら使ってくれないか……?」


「えっ。ご、ごめん……。私も持ってない……。状態異常になる攻撃をしてくるモンスターなんて今まで相手にしてこなかったから、いらないかなって……」


「マジか……」


 しっかり者のリーナにしては迂闊だなと思いつつも、まったく人のことは言えないのでソウタは軽くうなだれる。


「ちなみに麻痺が回復するまであと何秒なの?」


「あと140秒」


「うわー……、二分以上かー。長いわね」


「ホントごめん! だけど、その時間持ちこたえてくれれば、俺も加勢できる。だから悪いが何とか踏ん張ってくれ!」


「うん、頑張る……って言いたいとこだけど、実はちょっとまずいのよね……」


「何がだ?」


 表情が明らかに曇っているリーナにソウタは尋ねる。


「ついさっき気付いたんだけど、私の剣の耐久値がこのボス戦でかなり削られてるみたいなの。たぶんあと一、二回攻撃したら壊れちゃうかも……」


「何だって!?」


 思わぬ事態にソウタは声を上げた。

 それだけ弱っているとなれば、ソウタが回復するまでリーナがひたすらボスの攻撃を防御するという訳にもいかない。あれだけの威力の攻撃を受けていれば防御しているだけでも耐久値が下がり壊されてしまうからだ。


 つまりはもうリーナがソロでボスを倒すほかないわけだが……。


「となるとあと二撃以内で一気にとどめを刺すしかないのか……」


「うん……、そうなるね」


「……そうだ! この前使ってた剣スキルの閃光なんちゃらを使えばいけるんじゃないか!? 相当な威力のスキルみたいだし!」


「閃光颯刃よ! 私のとっておきなんだからちゃんと覚えてよね! まあ確かにそれならいけるかもだけど、あれは普通の剣スキルよりもスキルの立ち上がりに少し時間がかかるから、相手にそれなりの隙が無いと使えないのよね」


「そ、そうなのか……。じゃあ無理……いや待て。だったらリーナ、次の攻撃の時にひとまずあいつの顎を狙ってみてくれないか?」


「顎?」


「ああ。人体って顎に衝撃を受けると、脳が揺れて昏倒しそうになったりするだろ? その原理でVRMMOの人型モンスターは、基本的に顎にダメージを受けると隙が出来るように作られてるもんなんだ。だから、おそらくあいつも顎を狙えば大きく怯むはずだ。顎の位置が高いから当てにくいだろうけど、何とか顎を攻撃して怯ませてから閃光颯刃を発動すればきっとヒットする」


 ソウタのアドバイスを聞いたリーナは一瞬逡巡したが、小さく頷くと、


「わ、分かった。やってみる」


 そう言って剣を構え直したリーナは、ちょうど硬直の解けたソードゴブリン・ロードと再び対峙した。


「さあ、来なさい! 真っ二つにしてあげるわ!!」


 そうリーナが言い放つと、ソードゴブリン・ロードはリーナを叩き斬ろうと唸り声をあげ、雷を纏った大剣を振り上げながら突っ込んできた。

 目にも止まらぬ速さでリーナへと剣が振り下ろされるも、彼女はそれを剣で受けることはせずにするりとかわす。

 そして体勢を一瞬で整えると、がら空きの顎へ思い切り鋭い突きを打ち込んだ。


「せいっ!!」


 渾身の力を込めた突きが顎に突き刺さると、ソウタの予想通りソードゴブリン・ロードは大きく身を反らして怯んだ。


「今だ!!」


 ソウタがそう叫ぶと同時にリーナは剣スキル【閃光颯刃】を発動。ソードゴブリン・ロードの巨大な体を見事に斬り裂いた。

 そのHPは0となってソードゴブリン・ロードは弾け飛び、同時にリーナの剣も耐久値が0となって飛散。勝負は決した。


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