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第14話 デュエルバトル

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評価ポイントもいただきまして本当にありがとうございます!!

「ギャハハハハ! 上等だ! 受けて立とうじゃねえか! この鉄壁のジル様に盾突いたことを後悔させてやるぜ!」


「え……。な、何その変な呼び名。酷いのはプレイマナーだけにして欲しいわね」


「なっ!? こ、このアマ……!!」


 リーナの挑発でビキビキとこめかみに血管が浮き出るジル。ブチ切れ寸前といった感じである。


「い、言っておくがな。お前が今馬鹿にしたこの鉄壁っていう呼び名にはちゃんと理由があるんだぜ? これを見な」


 そう言ってジルはドヤ顔しながら、左手に持っていた盾を見せびらかす。


「ガロットシールド……。ふーん、結構良い盾装備を持ってるのね」


 それを見たリーナがそう感想を漏らしたが、ソウタはその盾が何なのか分からずリーナに尋ねる。


「おいリーナ。何なんだあの盾は? そんなに良い盾なのか?」


「うん。一応現時点では、ファース島で手に入る盾の中で最強の盾って言われてるわね」


「何っ!?」


「ほう、よく知ってるじゃねえか。そうさ、この盾のおかげで俺の防御力はそこらのプレイヤーとは比べ物にならないくらいに高くなってる。この盾をゲットしてから今日までの俺のデュエル戦績は13戦13勝。つまり無敗なんだよ。恐れ入ったか女剣士!!」


「そう。じゃあその無敗伝説も今日で終わりね」


「この……! 減らず口を……! 絶対ボコボコにしてやるから覚悟しろよ、クソ女。 じゃあデュエルのルールだが、オールゲージとハーフゲージどっちにする?」


「うーん……、そうだなあ」


 FLOのデュエルバトルには、大きく分けて二つのルールがある。

 一つは相手のHPを全損させたら勝ちのオールゲージ。そしてもう一つは相手のHPを半分削れば勝ちのハーフゲージだ。どちらを選ぶかによって戦略が変わってくるので、この選択は非常に重要である。

 ちなみにデュエルバトルでは試合が終わればHPはデュエル前の値に戻るので、オールゲージのデュエルで負けたからといって死亡したりはしない。


 リーナは数秒考え込むと口を開き、


「オールゲージでいいわ」


「そうか。じゃあオールゲージでデュエル申請を飛ばすぜ」


「ええ」


 ジルがデュエル申請をリーナに送り、リーナは申請を許諾した。

 するとレートかノーレートかの選択ウィンドウが表示されたので、リーナもジルもレートを選択する。


「さて、俺はそこの二人から勝ち取った装備を賭けるが、お前は一体何を賭けてくれるんだ?」


「うーん、どうしようかな? 別にあなたが選んでくれてもかまわないけど……」


「ほう……、それじゃあお前の持ち金全額賭けてもらおうか。ちょうど金が欲しかったところだしな。あんだけ大口叩いたんだからこのくらい当然賭けられるよなあ?」


「……がめつい男ね。まあそれでいいわよ」


 そう言ってリーナは全財産を賭けた。

 デュエル開始まであと十秒というカウントダウンが開始される。


「おい、いいのかリーナ? 全財産はさすがにやりすぎじゃ……」


「大丈夫よソウタ君。私、絶対勝つから」


 負ける気は毛頭ないと自信に満ちた表情でリーナはそう言い切ったが、ソウタは心配だった。

 もちろんソウタは今日のリーナの戦闘を見てその強さを分かっているので、リーナが勝つと信じている。

 だが、ジルというプレイヤーが現時点で最強の盾を装備しており、デュエルで今のところ無敗という情報を知ってしまっては、リーナの敗北が頭をよぎってしまうのも事実だった。

 これから戦うのはリーナでありソウタではないのだが、緊張と不安でその額にはジワリと汗が滲む。


 そうこうしているうちにカウントはあっという間に0になり、デュエルバトルが開始された。


「秒殺してやるぜ女ぁ! くらいやがれ!!」


 開始と同時に、ジルが強く地面を蹴った。

 盾を装備しているプレイヤーというのは、盾の重量によりAGIがいくらか落ちてしまうものなのだが、それを感じさせない速度でジルはリーナとの距離を一気に詰め、思い切り剣を振り下ろした。

 並のプレイヤーなら直撃していたであろう強力な一撃だったが、リーナはその攻撃を見事に見切り、しっかりと剣で受けた。リーナのHPゲージが少し削れる。

 FLOでは攻撃を武器や盾などで防御しても多少はダメージを受けるので、そのための被ダメージである。


 ちなみに今のような防御はソウタのような素手でも可能で、防御姿勢をとってそれがシステムに上手く認識されればダメージを軽減できる。防御によるダメージ軽減の度合いは素手→武器→盾という順番で大きくなる。


「おらあ! どんどんいくぞ!!」


 ジルは畳みかけようとさらに数回リーナを斬りつける。しかし、リーナはそれもすべて完璧に受け切って見せた。

 まさか全部防がれるとは思わなかったジルは、そこでわずかに怯む。その隙をリーナは見逃さない。


「せいっ!!」


「うおっ!!」


 放たれたリーナの鋭い中段斬りをジルは何とか盾で受けた。するとジルのHPが一気に三割近く削り取られた。


「なっ!?」


「えっ!?」


 ジルと同時にソウタも思わず声を漏らした。

 ジルは今、間違いなく盾でリーナの攻撃を防いだ。ただでさえDEFの値が高いはずのジルが盾で攻撃を防げば、HPは一割すら削られないはずだ。

 リーナはレベル11で特段ソウタのように高レベルという訳でもなく、特に強い剣装備を身に付けている訳でもない。こんなにも一気にダメージを与えられるなどあり得なかった。


「くっ!!」


 想定外のダメージ量に動揺したジルは、バックステップで一旦リーナと距離をとろうとする。

 だがそこで逃がすリーナではなく、追撃の上段斬りがジルに襲い掛かった。さらにHPが大きく削られHPゲージは五割を切った。


「く、くそっ! 何がどうなってやがる!! なんでこんなにダメージが入る!?」


「ふふっ、だいぶ焦ってるわね」


 ジルの焦りっぷりを見て、リーナはクスリと笑う。


「何を笑ってやがる! ちくしょう! これじゃまるで俺の防御力が無視されてるみてえだ! おい女! もしかして何かチートまがいなことをしてるんじゃねえだろうな!?」


「チート? まさか、そんな訳ないじゃない」


「じ、じゃあどうしてこんな…………!!」


「ユニークスキル【ペネトレイト】」


「……何?」


「私の持っているユニークスキルの名称よ」


「何だとっ!!?」


 リーナの発言にジルは驚き、大きく目を見開いた。

 そしてソウタも同様に驚愕の表情となった。


(ユニークスキルだって……!? リーナも持っていたのか……!!)


「そしてその効果は、相手の防御力を無視したダメージを与えられるというものよ。つまりあなたがどんなに必死で防御したところで、私の攻撃力がそのままダメージになるってわけ」


「な、何だよそりゃ……、無茶苦茶だそんなの……!!」


 狼狽えるジルにリーナは続ける。


「盾の防御力が自慢みたいだけど、残念だったわね。私にとってはどんなに頑丈な盾も、紙切れ同然よ!!」


 鋭い連続の突きがジルを襲った。その攻撃により、とうとう残りのHPが一割を切る。


「くそっ! くそっ!! くそおおおおおおおお!!」


 ジルはもうやけくそといった感じでリーナに突っ込んでくる。その隙だらけの姿を鋭い眼光でとらえ、リーナは剣を構えなおす。

 そして呼吸を整え、とどめを刺すべくスキルを立ち上げた。


「【閃光颯刃】!!」


 ズパァン!!という凄まじい音が辺りの空気を震わせ、リーナの姿が掻き消えた。

 まるで瞬間移動かのごとく、いつの間にか十メートル先にその姿はあった。

 そしてソウタは見た。ジルのHPバーが0になっているのを。


(え……?)


 ソウタはそこでようやくリーナによってジルが斬り伏せられたことに気が付いた。

 あまりの速さに斬る動作など微塵もその目に捕らえられなかったのだ。

 おそらくそれはジルも同じなのだろう。何が起こったのかまるで分からないといった顔をしている。

 だが、目の前に現れた<YOU LOSE>の表示を見て自らの敗北を悟り、その場に両膝をついて崩れ落ちた。


 リーナはふぅと一息ついて剣を鞘に納めると、ジルの方へ振り返り告げる。


「どう? 私の勝ちよ。女はゲームが下手だなんて二度と言わないでよね」


閃光颯刃の颯刃は「そうは」と読みます。

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