推測、その正体
「ルイーズさんも強いんですけど、ポロメアさんも強いんですね。」
飛びかかろうとする猿型魔獣を撃ち抜きながらアマネは縦横無尽に森を駆けるポロメアを誉めた。
「オレは強いってよりも遺物の扱いが人より得意ってだけッスよ。」
ポロメアは両脚にある金属製のブーツとナイフを見せる。学者たちは分からないだろうが、その遺物は過去の大戦の際人類が使用したパワードスーツと呼ばれる兵器の一部だ。本来は全身に施す装備ではあるが、ポロメアが言うには動いた部分が脚部だけであったそうだ。
足を踏み降ろした際に生じる衝突エネルギーを蓄え、任意で解放する移動用補助具の遺跡発掘物。この時代の学者たちはそう結論付けた。だからこそ学術的価値はないと発掘員の装備品となったのであろう。
そして手に持ったナイフはどれほど振るっても刃こぼれ一つしない。現代の技術ではナイフを構成する金属の精製など到底出来ることはないだろう。加えて巨木すらも容易く斬り倒すナイフはただ切れ味がいいでは説明仕切れない。
「超音波ナイフ…ですか?」
「当たりッス!よく分かったッスね!まぁオレなんてアティクシュの旦那の足下にも及ばないッスけどね!ルイーズの姉御なんか遺物なんか無くても同じ様なことやるッスから大概ッスね!」
アマネが横目に見るとルイーズが狭い森を物ともせず大剣を振るいアマネを苦笑させる。
森の魔獣を蹴散らしつつ、二つの遺跡発掘物を使い分けるポロメア先導で一行は更に森を突き進む。
「ポロメアさん、これから行く遺跡の入り口って崖の中程って話でしたけど、中はどうなってました?」
「入ってすぐ斜面になっていて上に垂直に伸びてたッス。足場を作りながら中まで入るのは大変だったッスけど、中は宝の山って感じたったッスね!」
もうすぐ到着するから実際に見てみると良いッスと言うポロメアに、アマネは近くまでで良いと言った。それに真っ先に反応したのはルイーズだ。
「どうしたんだい?遺跡に行きたがった割には近くまででいいってのは。」
「いえ、恐らくそこは出口、廃棄物を捨てる穴だと思うんです。だから入り口は近く、別の場所にあるかと。」
アマネの説明はこうだ。遺跡とは過去に使われていた遺構である。よって外敵を防ぐにしてもそこまで極端に出入りの難しい場所はそこを利用する者にとって不便極まりない。であるならばそこは入る為の場所ではないと。
「なるほど、確かに今まで報告されていない形式だとは思ったが…。しかし付近に入り口らしきものがあると報告は上がってないが。」
「恐らく外から分かりにくく隠してあり、外からなんらかの操作によって現れるかと思います。」
訝しむ表情のルイーズだが、構わずアマネは続ける。
「地図では近くに湖がありましたね。とりあえずそこに行ってみましょう。ポロメアさん案内出来ますか?」
親指を立てて方向転換し、ポロメアは湖に向けて走り出した。その後に続くアマネ。ルイーズの視線は険しくアマネの背中に向けられていた。
湖に到着すると三人は辺りの散策を始める。何かしらの端末があればそこが入り口に違いないだろうとアマネが言ったのだ。正解に限りなく近いだろう。三十分も経たないうちに畔にある岩にある隠し戸に気付く。
戸をあけるとコンソールがあるが、アマネが幾ら触っても操作を受け付けない。ロックされているから当然だ。
「オロール。」
「当たりだな。」
大きく息を吸い込み怒声を上げる
「ずって見てたんでしょ!!会いに来てやったわ!さっさと開けなさい!!」
僕達の姪に当たるであろう少女は酷くご立腹だ。