森林地帯へ
「アマネとオロールの万能さはよーく分かった。」
青筋を浮かべ腕を組みをするルイーズは怒気を孕ませ言った。
「いやいやいや待て待て待て、俺は命令されただけで決して俺の意志じゃない。」
「でも私は指示を出すだけで実行するのはオロールだよ?」
言い逃れしようとするオロールと逃がすまいと正座したまま退路を奪うアマネ。それとなくシリンダーを一番に回し土噛みの粘液を洗い流していく。
「それに万能っていうよりかは器用貧乏ですよね。虫だから出来ただけで、流石に動物相手には中々出来ないですよ。」
「杖と形容するものだから後衛かと思ってだと思っていたのだが、まさか遥か太古の銃剣突撃を実演する奴がいるとは思わなかったぞ…。」
苦笑と共に出た言葉は賞賛か呆れか、判断しかねるといった表情をアマネは浮かべる。
「と、ところで!さっきルイーズさんが使おうとした魔法ってなんですか?」
「誤魔化したな。」
「何?」
「いえ。」
そのやり取りを見て、フフと笑みを浮かべるルイーズ。今のアマネの質問に答えと言わんばかりに実際に発動する。
「これはな、遺跡発掘物を参考にした魔法だ。実際にはまるで原理が違うのだが、アフターバーナーと呼んでいる。」
タンっと足踏みすると足跡がうっすら燃えている。かつて大空を制したとされる兵器をイメージしたとルイーズは語る。
魔法とは魂から出でる魔力を燃料にイメージを具象化するものであり、原理や科学の話ではない。火を推進力に変えるというイメージがそのまま結果反映される。
加えて魔法は形態化されるものではなく、人の数だけ存在すると入っても過言ではない。
しかし具象化する範囲が大きくなるほど消費される魔力は大きくなり、例え星を割る魔法をイメージしたところでそれを具象化するのは不可能だ。
魔法とは違うものとして、魔石から作られる魔力は術式を組み込むことにより形態化された魔術と呼ばれる。魔力街灯等の生活に関わるもの、果ては魔力兵器までその運用のみ幅は広い。
「アフターバーナーはアタシ個人にだけ具象化される魔法だから燃費もいいし、使い勝手もまあ悪くないんだ。」
足を突き出し、攻撃にも使えるしなとルイーズは笑う。
「もしかしてその剣に付与したり?」
「正解!」
折り畳み式の大剣を展開し魔力を通し横なぎに振るう。音の壁を越えた衝撃と共に剣風で正座したアマネは後ろにひっくり返った。
「もしかして試しました?」
「分かっちゃう?」
アマネはこの威力なら最初の一撃で砂噛みを粉々に粉砕している。にも関わらず魔法を付与せずただ腕力で叩きつけていた。斬ろうとしたのではなく叩いたと指摘し、ルイーズもその通りだと肯定した。
「依頼主が戦えそうとは言っても、どれだけ戦えるかは知っておいた方がいいだろ?Cランク冒険者なら砂噛み位は訳ないだろうし、アタシの見立てではBランク以上は堅いな。」
うんうんとルイーズは唸る。
「確かにささっとCランクになってパパっとムガーリアに来ましたけど、Bランク相当もあるとは自惚れてませんよ。」
手を左右に振るアマネに、まぁアンタがそう言うならそれでいいよとルイーズは言う。
「さて、先はまだ長いよ。そろそろ出発しよう。」
ルイーズ案内の下、再びバイクで目的地へ向かう。
その後何度かの魔獣の襲撃を受けたが、様子見をやめたルイーズがその速力で殲滅していくのでアマネは特にすることもなく、森林地帯へたどり着いた。
荒野と森が隣接するこの場所で先に出発していたアティクシュのキャラバンの野営陣地を発見し、ここが入り口でしょうか?とアマネはルイーズに聞く。
「まぁそうだな、コイツらは持ち込んだ食糧や物質、回収した発掘物の管理の為の要員だろうな」
ルイーズがアマネに説明していると野営陣地から一人の鼠人が二人に気づき声を掛けながら近づいてくる。握手
「あっれー、ルイーズの姉御じゃないっスカ!アティクシュの旦那の依頼は受けないんじゃなかったんスカ?」
「バカを言うんじゃないよポロメア。アタシはコイツの依頼で来たんだよ。」
「やや、これは見た目麗しいお嬢さん!自分ポロメアッス!どうぞ宜しくッス!」
勢いよく挨拶とを求めるポロメアにどうもアマネです。と一言返しポロメアと握手を交わすが、その勢いに圧されてるようにみえる。
見かねたルイーズはオロールの事は伏せてアマネの紹介をする。
「ところでポロメア、アンタは普段前線だろ?どうしてベースキャンプにいるんだい?」
「オレは発掘した遺物を一旦ベースキャンプに運びに来たッス!この遺跡凄いッスよ!珍しいモンだらけッス!」
「じゃあ丁度良い、アタシは報告で場所は分かるが見たことはない。案内してくれよ。」
了解ッス!仕事片付けてくるッス!と手を上げ走っていくポロメア。僅かな時間の後、一行にポロメアが加わり森へと足を踏み入れた。