公爵様との結婚
あれから何ヶ月経ったのでしょう。
私はお父様の紹介で、昨年奥様を亡くされた12歳歳上のドーベル公爵様と結婚しました。
ドーベル様は、昔は貞淑なお嬢様だった私が急に派手な娼婦のようになっていた頃に、大層心配してくださったそうです。
今回も、婚約破棄された私を可哀想に思い引き取ってくれたのだそうです。
なんと優しい旦那様でしょう。
私は旦那様と結婚し、本当に愛される事の幸せを初めて味わいました。
旦那様との些細なやり取り、何気ない会話の全てが穏やかで幸せでした。
旦那様との初夜ですが、、
それはもう甘くてとろけそうな素敵な夜になりました。
旦那様の手がとても優しくて、泣けてきそうでした。
あぁ、私は旦那様を愛してます。
ナダル様の事など、もう会いたいとさえ思いません。ナダル様に振ってもらえた事を寧ろ良かったとさえ思えます。
ナダル様と別れたからこそ、旦那様とこうして幸せに暮らせているのですから。
それにしても不思議です。あれほどナダル様を恋い焦がれた思いは、いったいどこへ消えてしまったのでしょう。
思えば、私は彼の何を愛していたのでしょう?
私は今、旦那様の本を読む時のページをめくる音ですら愛おしく思えるほど愛しているのに。。
ナダル様との三ヶ月は、私にとってなんだったのでしょう。
悪い夢を見たかのような、どこか現実味のない日々だったような、、
今にして思えば、私はただ単にナダル様の囁く愛という幻に執着していただけだったのでしょう。
サリーは、ナダル様の時の苦い失恋の経験があったからこそ、今の旦那様との幸せにより一層のありがたみを感じられるのかもしれませんね。