ドーベル公爵side
サリーの元婚約者だったナダルの事は、色々と調べがついている。
ナダルは確かに仕事が出来る野心の強い男だった。
ナダルの家の商会は、少し変わっている。
商会の名前も、代々次の後継者の名前をとって付け替えている。
そして、扱う商品も他の商会と比べ物にならない程多い。
ただ唯一の弱点は、王宮の御用達でない事ぐらいだろうか。
とはいえ、多くの貴族邸の御用聞きもしているので商売は順風満帆だ。
人脈作りにも余念がなかった。
会計省に勤める貴族、街役人の上部への贈り物にもお金をかけていた。あからさまな賄賂ではなく、あくまでも友人として、それぞれの家族の誕生日などにプレゼントとして高級な品物を贈っていたのだ。
街の公共事業の入札の際は、驚いた。
まさか土木の分野にまで、手を広げているとは、、
しかも並み居る他の商会をおしのけてーー。
何にしても、得体の知れない不気味な商会だ。こんなに怪しい商会なのにーー
それでも、その豊富な品揃えと、ナダルの口のうまさ、そして強引なやり方で、街の人々から国の貴族達にまでと、幅広く商売をしているのだ。
ただ、、色んなところで同業者の恨みをかっている事も事実だ。
これまで取引をしていたお店や貴族邸から、ある日急に取り引きをやめさせられて、ナダルのところの商会にとって変わられた同業者も少なくない。
中には家族で細々と商いをしていて、それで生計をたてて暮らしている街の人だっていたのだ。
いくらなんでも、あれこれ手を広げすぎだとか、お金の力で何かいけない取り引きでもしたんじゃないか、島荒らしにも程がある等、散々な言われ方をしていた。
それに、多くのご婦人達がナダルとの関係を噂されていた。また、その事をネタに無理して大量の商品を商会から買っているのだとも。。そのご婦人達からも、注文した商品が一部届かないというクレームを沢山聞いている。
たいていは、ナダルに言いくるめられて、ろくに注文書や請求書を確認せずに、実際より多めの額を要求されてしまったり、しっかり納品書も確認せずに商品を受け取って、納品漏れの商品に気付かぬまま代金を支払って、領収書を貰ってしまうのだ。
その為、後でその事に気付いて騒ぎたててみても後の祭りなのだ。
商品を受け取って、領収書を貰っている時点で商品の売買取り引きは成立してしまっているのだから、、
つまり泣き寝入りをするしかないのだ。
「ハァーッ、全く騙される方も騙される方だが、、、やり方が汚なさすぎる!だいたい人を馬鹿にし過ぎてる!!」
ドーベル公爵は、怒りに身を震わせていた。
この怒りは、サリーを傷つけたナダルという男への怒りというより、沢山の人達を騙して傷つけてきたナダルという立派な悪徳商人に対しての怒りであった。
彼は、立派な悪だ!
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