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気に入らないランキングを、あなた好みのランキングに変える三つの方法

作者: 長谷川凸蔵

 価格.comというサイトがある。

 様々な商品の値段を、販売店ごとに順位付けしているサイトだ。

 

 例えばあなたが新しいMacBook Airが欲しい、と思ったら、価格.comの検索ボックスに該当機種の型番を入れると、値段の比較を見ることができる。


 この時に表示される「お店ランキング」は非常にわかりやすい。


 安値の順にお店が並んでいる。


 一位のお店が、価格.comに登録している多数の店舗、その中で、一番安い値段で商品を売っている。


 つまり最安値と、その値段で売る店をすぐに探す事ができる。


 じゃあ、一位のお店があなたにとって一番いいお店かどうか?


 それは私にはわからない。


 あなたが商品を選ぶ時に、値段のみを判断基準とするなら、一位が最適なお店である可能性はグンと高まる。


 しかしあなたが明日、出張で海外に向かう必要があるとか、好きな異性の誕生日プレゼントとして、今日すぐにでもそのMacBook Airが欲しいとする。



 その場合、一位のお店が「通販のみ、店頭販売不可」という販売形態なら、そのお店が当日発送で当日着といったサービスをしていない無い限り、選択肢から外れる。


 また、アップル製品は多くの店で「初期不良対応はメーカー対応のみ、修理の取り次ぎや返品、交換は不可」と注意書きがある。


 あなたが以前、商品の初期不良で嫌な思いをして、初期不良の対応があなたにとってお店選びにおける重要な基準なら、このランキングは全く参考にならない可能性が高くなる。


 あるいは、クレジットカードを利用して買いたい、と思っても、そのお店は現金販売限定かもしれない。

 その場合、値段を重視して現金で買うのか、あくまでもクレジットカードを利用できるお店の中で一番安い店を探すのか、という選択になる。


 結果、一位のお店では買わないかもしれない。


 このランキングでわかるのはあくまでも「値段の安い順番」だけだからだ。


 つまり何を基準にするか、という問題になる。


 その基準によっては、ランキング一位のお店があなたにとって「最良の店」とは限らない。


 もう少し価格.comの話を続けると、商品それぞれに「順位」がある。


 売れ筋ランキング、その順位だ。


 例えばノートPCなら、今どれだけそのノートPCがカテゴリー内で売れている(おそらくは検索されている)かを表す順位がある。


 もしあなたがゲーム好きで、ゲーミングノートPCが欲しいとする。


 価格.comは非常に親切で、なんとゲーミングノートPCのランキングもある。


 このゲーミングノートPCランキング一位の商品を見てみると、今日現在、該当のゲーミングノートPCは、ノートPC全体のランキングでは33位だ。


 これは裏を返せば、32位までの商品は、本格的にゲームをするには物足りないスペックだということがわかる。


 もしあなたが勘違いしていて、価格.comの売れ筋ランキングを、PCのスペック順に並んだランキングだと思っていたら、悲惨な結果になる。


 勘違いして、1位から32位までの商品を購入しても、ハイスペックを要求するゲームはできないからだ。


 そもそも、最先端のゲームがしたいなら、ノートPCではなく、拡張性の高いデスクトップPCを選ぶべきかもしれない。


 そして頭のいいあなたならわかるだろうが、「この売れ筋ランキングに、スペックの良さを反映させて欲しい」というのは非常にズレた要望だ。


 その場合「高機能順ランキング」でもあれば良いのかもしれないが、残念ながら価格.comにはスペックでパソコンを検索する機能はあるが、機能のランキングは存在しない。


 もしかしたら、他のサイトにはあるかもしれないが、その基準は価格ではないかもしれない。


 先ほどの「ゲーミングノートPCランキング」も、あくまでもそのカテゴリーでの売れ筋を表しているだけで、機能順ではない。


 この売れ筋ランキングが表すのはどこまで行っても売れ筋であり、機能ではないのだ。


 ましてや「だったら低スペックのパソコンなんて売るな、俺が知りたい情報の邪魔だ」などという暴論を言っても仕方がない。


 売れ筋ランキングはあくまでも需要をランキング化したものであり、スペックの良いパソコンが欲しいといった、個人の事情はあまり反映されないからだ。


 もっとメーカーさん頑張って、ゲームができるような高機能なPCを、企業努力で安く販売して売れ筋ランキングで一位を取って下さい、などと個人の事情を言うのは自由だが、おそらくそれに耳を貸すパソコンメーカーは現れないだろう。


 ましてや「高機能なパソコンがもっと売れ筋ランキングに載るように、みんな高機能なパソコンを買おう」と呼び掛けても、なかなか難しいかも知れない。


 私の個人的な要望を言えば、軽くて持ち運びに便利なモバイルノートが欲しい。


 PCに個人が必要とする機能もまた、個人の環境によって変わる。


 だから「高機能なゲーミングノート」が、あまり持ち運びに適さないなら、それが私にとってベストなPCとはとても言い難い。


 別のランキングを見てみる。


 漫画の、現在のウイークリーランキングを見ると、なんと20位までに3作品しかない。


 20のうち、17が今人気の「鬼滅の刃」で、それぞれ別の巻がランクインしている。


 仮に「面白い漫画ランキング」がここに載っているとしたら、それは「鬼滅の刃」となるだろう。

 

 しかし、このランキングは売れている漫画を表しているだけだ。


 「鬼滅の刃」は私も好きな作品だが、あなたに合うかどうかはわからない。


 ここまで見てわかるのは


「ランキングとは、ある一定の基準によって作成されている。裏を返せば、その基準から外れるものは残念ながらあまり反映されない」


 ということだ。


 だからまずは「このランキングは、どのような基準で作成されているのか」を正確に読み取る必要がある。


 そうしないと、不要なPCを購入してしまったり、「鬼滅の刃」があまり自分に合わないにも拘わらず、ランキングを信じて全巻揃えて後悔する、といった失敗をするかもしれないからだ。


 つまり、もしあなたがランキングに望むことが、そのランキングが表す基準から大きく外れている場合、反映される可能性は低いだろう。


 では、あなたが何かしらのランキングに、自分の意図を反映させたいとする。


 例えばノートPCの、スペックの高さとお買い得さ、その二つをランキングに反映させたいとする。


 その場合、別にパソコンを作る必要はない。


 あなたがランキングを作成し、同じように考える人たちで集まり、そのランキングの影響力を世間で増やせばいいのだ。


 つまり、上で記した「ゲーミングノートPCランキング」のようなものを新設する、ということだ。


 つまり、なろうのランキングが「少なくとも自分には当てにならない」と感じていたとしても、別に悲観的になる必要はない。


 俺には作品なんて書けないし、と諦める必要もない。


 あなたが、あなたと同じように考える人と協力して、自分たちのためのランキングを作ればいいのだ。


 それは作品が書けなくても、やる気と時間をかける覚悟があれば、今すぐにでも始められることだ。


 もちろん、あなたが頑張って作ったランキングが支持されるかどうか、その輪が広がり、影響力を発揮するかどうかは、私にはわからないし、責任は持てない。


 「参考になる」と言って貰えるかもしれないし、「このランキングは下らない」と汚い言葉を浴びせられるかもしれない。


 だが少なくとも、自分の意図や要望が反映されないランキングをいつまでも眺めたり、作品をクリックして「やっぱりね」とため息をつくよりは、建設的かもしれない。


 その結果、あなたの作るランキングが、多くの人々から支持を獲得し、そのランキングに載ることで、逆輸入されるようになろうのランキングに影響を与えるような状況が見られたり、出版社が注目する規模にまで育てば、そのランキングを目指そうとする作者が増えるような未来もあるだろう。


 ここまで書いてきたことでわかるように、ランキングとは、ある一定の基準で物を見ることにしか役に立たず、そこから外れる個人の事情なんて、徹底的に無視する存在だ。


 あなたが「演歌が好きなんだ!」と思ったら、J-POPランキングのトップ10を眺めることにあまり意味はない。演歌ランキングを見るべきだ。


 基準によって「参考になる」「参考にならない」がくっきりと分かれる、それがランキングだ。

 

 そして小説の「面白さ」など、個人個人で違って当然ではないだろうか。


 つまりなろうのランキングなんて、いや、ランキングというシステム自体が、参考になる人、ならない人がいて当然なのだ。


 あなたがあくまでもなろうのランキングを変えることにこだわりたいなら、上記のような「俺ランキング」を作成し、その影響力を拡大するか、有名レビュアーとなり、自分がレビューすればランキングに載せられる、といった存在を目指すしかないだろう。


 つまり現在の「小説家になろう」のランキングに「自分が面白い」というものがなく、それを悲観している人がいたとして、私がアドバイスできる事は、思い付く範囲では三つだ。


 他の作者に「これは面白い!」と影響を与えるような名作を書くか、新しく「自分が面白いと思うランキング」を作って発信し、なろうのランキングに影響を与えるほど賛同者を集めるのか、有名レビュアーになる、そのどれかを目指すことだ。


 そしてそのどれもが嫌なら、たぶんランキングを眺めながら、あくまでも他人に期待するような愚痴を言ったり、諦めの気持ちから、ため息をつくしかないように私には思える。


 世の中に完璧なランキングがあるとすれば、それは各々の、心の中だけに存在しているのかもしれない。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに、誰にとっても最高なランキングはないですよね~ [一言] 運営にはジャンルの表示順を隔週でいじってほしいと密かに思ってます(笑)
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