死した魂は生を尊び彼女を救う
首吊り自殺した男の霊とそこに住まう娘のお話。
17年前に首を吊って自殺した俺は今でも家で地縛霊として生き長らえている。誰とも話せず触れ合わずに17年もの月日を過ごすのはそれなりに苦痛だ。
神はなぜ俺をここまで苦しめるのだろう。
「結愛~、早く学校行きなさい遅刻するわよ~」
何年かぶりに越してきた家族『今宮家』の母が台所から娘を呼ぶ。
今宮家は父の都合上引っ越すことが多い家系らしい。
「うぅん…だってぇ」
「だってじゃありません!」
ぐずる娘を母は怒鳴り付け娘は渋々といった様子で学校へと向かった。
◇◇◇
「もうやだよ…」
その日の帰宅後自分の部屋で塞ぎ込んでいた娘はおもむろに鞄を漁り、美術の時間にでも使ったであろう木工用ナイフを握りしめる。
ナイフを手首にあてがった。
「それはだめだ!!」
俺はなぜだかわからないが咄嗟に叫んでいた。
「やめろ!」「こっちにくるな!」「生きるんだ!」
無我夢中で叫び散らす。
娘は不思議そうに天井、俺の自殺したそこを見上げて顔をひきつらせる。
きしくもそこは俺が死ぬのに選んだ部屋だったのだ。
「おかぁさぁぁぁん!!」
娘は家族のもとへ走り出す。
なんだか思っていたのとは違うが彼女が死ななくて本当によかった。
俺はその日のうちにこの世に別れを告げた。
超短い。
短編をそれなりの長さで書くのって大変やね…。