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~転移魔法と火の精霊~

初投稿です。

 二月、まだ冬の寒さが残り吹きもまだ溶けきっていない頃。場所は伏す。

 その日はあまりの寒さに待ち歩く人々は白い息を吐いている。少し寒いだけでこの辺では今日は普通の日だ。

 いつもと変わらない日々、周期的な行動を繰り返すだけの時間が流れていく。ただ、いつもと違うところを挙げるのだとすればそれは彼女…新月幸奈が教室にいなかったことだろうか。頭脳明晰、運動神経抜群、さらには容姿端麗と三拍子そろった学園始まって以来の天才は今日初めて授業というものを休んだ。

「幸奈さんどうしたのかな?」

 学校中でそんな声が聞こえる。俺自身もそう思っている人間の一人なのだが正直なところそこまで心配しているわけでもない。なぜか?そんなことは少し考えればわかるだろう。

そう、なぜなら俺は新月幸奈の居場所を知っていて、さらには人目を蔓延り何をしているのかも知っているからだ。

 俺が心配しているのは〝また〟妙なことをして怪我でもしていないかということだった。様子を見に行くために俺がやってきたのは北棟の一階に位置する科学室だ。その床を引き上げると地下への階段が姿を現す。先程『新月幸奈は教室にいない』と言ったが察しのいい人ならわかるだろう。彼女はこの学校にはいるのだ。ただ、その場所が教室ないだけであり決して彼女は学校を休んでいるわけではない。

俺は百mほどの地下道を歩いてとある部屋に辿り着く。そこには彼女の直筆で立ち入り禁止と書かれた張り紙がされている。俺はノックと同時に合言葉を言わせられる。

「深淵のそこを歩く者よ」

「我が扉を開け」

 扉の向こうから声が聞こえてくる。

 察しが悪くても流石にもうお分かりだろう。


頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗の三拍子を揃えたスーパー最強完璧アイドルの新月幸奈は超病的なほどの中二病オカルトマニアだったのである。


 彼女に宇宙人がいるかと聞けば百パーセントの確率でYESと返事をし、超能力の存在を馬鹿にしようものなら軽く四時間は掛かるだろう彼女の超能力に対する見解を披露される。

 扉が開かれた向こうで彼女は椅子に座り目の下にクマを作った顔で振り向いた。

「おはよう、楯無くん。いい朝だね」

「いや、もう昼だよ。また徹夜したのか?」

今彼女がしているのは曰く一生をかけて研究しているという異世界転生について調べているらしい。ちなみに彼女の前で「馬鹿馬鹿しい」なんていう言葉を言ってしまった暁にはこの学園から物理的に消されるだろう。

「まぁね。しかし、徹夜も悪いものじゃない。おかげでアレできたんだ」

 新月は徹夜明けのクマを付けた表情で俺の手を引っ張り隣の部屋へと引き連れていく。その部屋は出入り口以外の扉と崩落しないように組んだ天井の木枠以外なんの設備も整えられていない岩肌が露出した部屋だったがよく見れば床だけは平坦にされておりそこにはいわゆる魔法陣的なものが彫り込まれていた。

「ふふふ、何か知りたいって顔をしてるね?知りたいかい?」

 思わせぶりな表情をする新月。しかしこもの状態になってしまえばこちらの意見など構わずに説明を始めてしまうのだ。最初のころ「別に…」なんて言ってしまった時は大声で泣きつかれて今までの人物像が崩れ去ったのを今でも思い出す。

「いや、でも本当になんなんだこれ?一応ラノベとか読みますけどそれに出てくるような奴じゃ…」

 無かった。明らかに。その魔法陣的なもの(今後は魔法陣と呼ぼう)からは何かしらからパクったような雰囲気ではなく、むしろ妙な…新月風に言うならば闇の力と呼ばれるものをこの魔法陣から感じた。

「これはね、私が作った魔法陣なんだよ。どうだい?すごいだろう?」

 自信満々といった感じの新月は両手を腰に当て偉い人って感じのポーズで褒められるのを待っている。

「すごいな。で、肝心の起動はできるのか?」

「いや、まだ試してないんだ。君が来たらやろうと思っていてね。ちょうど目を覚ましたところに君が来たわけさ」

 なるほどと声を漏らす。しかし俺もこうやって一緒に喜んでいるがこういったものは総じて使えたためしがない。いや、使えたならばそれはそれで大問題だ。

「さて、やろうか。楯無くん、少し血をくれないかい?」

「まぁ、指先でいいなら…」

 新月のこの手の儀式には俺と新月自身の血を一滴、魔法陣の溝に垂らすことになっている。新月曰く「この方が起動確率は格段に上がるし何より起動する魔術陣に対して制作者を認識させる役割があるんだよ」だそうだ。

 指先を少しカッターナイフで切り一滴の血を垂らす。

「さて、始めようか。君も一緒に唱えたまえよ?」

 慣れた手つきで切った指に絆創膏を張った新月は俺に紙を一枚渡し、言葉を紡いでいく。


『夢を描きし環よ、言葉を聞け』

『紡がれよ言葉、選ばれた命』

『繋がれた世界、異動せよ環よ』

『廻れ、廻れ、廻れ。繋がれ』

『一を零に、零を千に』

『奏で、通じる環を通せ』


 全てを告げ終えた後、やはり何も起きなかった。いや、何も起きないはずだったんだ。

「やはりだめだね。またやり直しだ」

 新月は表情に出ていないもののかなり悲しいはずだ。前に魔法陣を作った時は三日徹夜したと言っていたから今回もそれくらい掛かったんだろう。

「とりあえず外の出ません?」

「…そうだね、気分転換も大切だね」

 新月が扉を開けるとなぜかそこには風が吹いていた。換気扇からの風ではなく明らかな自然の風だった。地下室だった部屋はいつの間にか森の中の建造物として存在していた。

「これは…」

「まじ…かよ?」

初めてみたその世界は今まで見てきたどんな景色より綺麗で、なにより隣にいた新月の嬉しそうな表情が今でも覚えているくらい印象に残っている。



「はぁ…はぁ…新月、もう無理だ」

「そうか、戻る手立てはなし、と」

 あれから一時間。絶え間なく例の詠唱を続けたものの一向に元の世界へと戻る気配はなかった。新月はメモを取りながら堅苦しい表情を見せている。三十分前、異世界と思われる場所に来た俺たちは辺りを散策したところ村や町のようなものもなく仕方なしにと帰還のための方法を探していたのだが…

「そもそもここは異世界なのか?どこか別の場所に転送されただけなのでは?」

それでもすごいとは思うが、明らかに外は日本の景色ではなかったことを考えるとそれはそれで面倒くさいのかもしれない。

「た、たすけてくれー!」

扉の外から叫び声が聞こえた。俺たちは扉を開き様子を見るとそこには男が二人、何かに襲われていて逃げてきたようだ。

「お、おい!お前たちも速く逃げろ!じゃないと奴が来るぞ!」

ドン……ドン……

何か大きなものが歩いてくるような地響きが近くへとやってくる。その正体はいわゆるRPGで言うところのオークやトロールなど言われる部類の巨大な亜人種だった。

「……!おい、新月!」  

 嫌な予感がして新月の様子を見る。…やっぱりだ。新月はその瞳を輝かせまるで子供のような表情を見せていた。

「おい、新月!」

「――あぁ、すまない、楯無くん。少し待っていてくれるか?」

 それって、つまりだ。

「そいつを食い止めておいてくれ」

「はぁ~っ!?」

 無理難題を押し付けられる。一方の新月は室内に戻ってしまって暫くは戻ってくる様子は無さそうだ。

「くっそが…」

「お、おい。まさか素手でやる気じゃないよな?」

 逃げてきた男の一人が恐る恐る聞いてくる。どうやら言語は通じるようだ。

「当たり前だろ。こちとらただ不良の頭やってたワケじゃないんでね」

 俺はとりあえず目標を反らすために魔法陣のある場所から離れる。二三メートルもの巨体はその体を動かし俺を追ってくる。

「―――ォラッ!」

 足を狙って。いや、足しか狙えないのだが。俺は拳の届く範囲にラッシュをいれる。

「全然効いてる気はしねぇし、手は痛ぇし…」

 ただ、新月に出会った頃に言われたことは頭に残していた。

『いいかい楯無、もしも自身より巨大な敵が現れたのならば足を…出来れば膝辺りを狙うと良い。たとえ聞いていないように見えても必ずダメージは蓄積されている筈だからな』

 膝…まぁその付近になってしまうが狙うようにしている。が、本当に大して効いているようにも思えない。

「楯無くん。私は嬉しいよ。あの時の言葉を覚えていてくれるとは。こちらも君のお陰で準備ができた。始めよう、魔法実験を」


『炎の精霊よ、我の名をもって命ずる。彼の者に力を与えろ』


 短い詠唱を終えた新月の目の前から炎が飛び出し俺の拳へと宿る。

「あっつ!」

「さて、楯無君、君ならわかるだうろう?」

 どうしてそこまで信用をおいているのかは分からないにしても今はただ直感的に動く他なかった。

「オラァッ!」

 ぺちん

 しょぼくれた破裂音が鳴る。

「……?」

 目の前の巨人は頭の上に?を浮かべる。それもそのはずだ。あれだけ意気揚々と殴ったはずなのに通常の威力よりも低かったのだから。

(呼べ、私の名を)

 頭に直接音声が鳴り響く。誰だ。

(呼べ、私の名前は―――)

 ただ、全力をもってその名を叫ぶと同時に巨人へと拳を放つ。その間際、先程の一撃で膝が限界越えた巨人はついに片膝を地面に着いた。俺は頭に響く声の主の名と共に全力の拳を腹に叩きこんだ。


「吹き飛べ、『火陣点火式-イグ・プロクスニア-』!」


バチッ


先程とは違う音が聞こえる。いや、これは聞こえたというよりも幻聴に近い。俺の拳が当たった腹に直線的な文字で書かれた『炎』の字が現れる。それを中心として魔法陣が形成されていく。外側の円に描かれた小さな円次々と炎を灯し、そして次の瞬間……巨人の上半身は吹き飛んだ。

生命活動を行うことのできなくなった巨人の下半身は力尽きその場に倒れる、そして光の粒となり新月の持っていた本の中へと吸い込まれていった。とても嬉しそうな新月の表情は自身の創った魔法の実現の嬉しさと自分で巨人を倒せなかったというちょっとした悲しさが入り交じったような表情だった。

「魔女だ…」

 さっきの巨人に襲われていた村人の一人が口にする。しかしその言葉の意図は明らかな恐怖心と昔から血をもって受け継がれた魔女という存在への怒りを感じた。

「魔女が再び現れたんだ!」

「なんだ、こいつ?」

「まぁ、魔法やそれを行使するものが忌み嫌われる世界があるのは知っていたがいざ当事者となるとなかなかくるものがあるな」

「あっ、てめー待ちやがれ!」

 村人二人は新月が落ち込んでいたところを隙と見て逃げ出してしまった。逃げ足だけは一流のようで一分もせずにその姿は森の奥へと消えてしまった。

「しかし、しまったな」

「はい?」

「彼らにこの建物を見られてしまった」

 特に悪い事はないと思うのだが。

「いや、悪いことだらけだよ、楯無君。ここを見られた上に魔女という存在が忌み嫌われているならば…」

「あー、大体わかった」

 みなまで言わずとも理解した。新月の言うような条件がそろっているならばやることは一つだ。

「なるほど、報復か」

 ―――!?

「なんだお前!」

 俺の隣に現れたのは三十センチくらいの鳥と人が融合したような形の炎の塊だった。そいつは喋り出し、妙に偉そうだった。

「貴様が魔女か」

「あなたは…先程の精霊か?」

精霊?…それじゃあ、さっき俺に話しかけてきたのはこいつだったのか。

「ふむ、わかっているなら話は早い。やることはわかるか?」

「…しかし、私の創った部類にはそんな魔法など…」

「おいおい、待ってくれよ。話が全然見えてこねぇんだけど?」

 もしかしてこれは俺の方がおかしいのか?いや、そんなことはないだろ。新月のような超絶中二病ならわかるだろうがこちとら一般人だ。二人の言っていることは理解できるはずもない。

「まったく、こんな馬鹿なんかと契約させおって。お前も趣味が悪いな」

 炎の精霊は新月に向かって言う。だけど当の本人は契約させたことになんて気が付いていなかったようで驚いた表情を見せている。

「…いや、責めるつもりはない。貴様たちに圧倒的に足りないのはこの世界に関する知識だ。魔女、この建物を隠したのちに西の神殿へ向かえ。かつて魔女崇拝のあった地だ。貴様らを狙うことはないだろう」

 隠すって…さっき新月は自分の考えた魔法にこの建物を隠すだけの魔法は

ないと言っていたのに何を言い出すのだこの精霊は。

「それが何だというのだ従者。ないのならば作ればいいだけだ。この世の摂理を魔力(マナ)によって造りだされたエネルギーにより書き換え、精霊に魔力(マナ)を与えこの世の理を作り替える。それがこの世界における新月幸奈、そして魔女というものだ。それは貴様のような従者にとっても同じこと。貴様は魔女の呼び出した精霊と契約し我らの力を行使する特権を与えられる。いわば精霊たち(我ら)の手足でもあるのだ。さぁ、血を示せ魔女の従者よ。我の名を答えた者よ」

 精霊が喋っている間、新月は鉛筆を持ち、ノートとにらめっこしている。

さらにいえば、精霊は今とんでもなく重要なことを言った。しかし、魔女の従者というのは存外悪くない。なにせ魔女=新月なのだから。俺はあいつに初めて出会った時、誓ってしまったのだ。言うなれば今後の人生を決めるような誓いを。

「これでいいか。精霊」

 自分の親指の皮を噛み血を流す。しかし、精霊は首を振った。

「名を名乗れ従者」

「…楯無だ。楯無侑那」

 魔女(新月)と同じ名を持つ者。それが彼女との契約の一因となったがいまはそんなこと語るときじゃないだろう。

「従者楯無。我が名はプロクスニア。血の契約を持って我は貴様と契約を結ぼう」

 精霊『プロクスニア』は俺の血に炎を灯し暖かな炎で身体を包み込む。そしてプロクスニアは俺にだけに聞こえるような声で呟いた。

精霊たち(我々)がなぜ魔女ではなく従者と契約するか、よく考えるんだな」

 次の瞬間、体を包み込んでいた炎は晴れそこには俺と新月だけが立っていた。

「できた。…どうかしたのかな、楯無君?」

「いいや、なんでもないよ。急ごう、夜になったら厄介なんだ?」

 プロクスニアの言葉の意味は分かっていた。そしてその答えが合っているという確信もあった。けれど、今は新月のことを信じていたかった。


『転送式、自壊せよ』

『再生せよ、貼付式』


 一節目を唱えると建物は破壊され光の粒子となり本に吸収され、二節目を唱えると建物は本から出てきた光の粒子が集まり再び再構築された。これはつまりこの建物を持ち運びできるようになったということだ。

「ほう、すでにここまで出来るとは。しかし魔女よ、わかっていると思うが精霊の力が行き届いていない範囲では魔法の行使は不可能だからな」

 プロクスニアはいつの間にか再び顕現している。俺の方から炎の線を伸ばしてその先にプロクスニアがいる。正直近くにいると熱い。

「…なるほど、つまり従者…楯無君は精霊たちを宿すということは彼を中心としてあなた方の力を行き届かせているということか」

「ん?だとしたら精霊はどれくらいの種類がいるんだ?」

「ふむ、詳しいことは歩きながら話すべきだな。もうすぐ夜になる。私を連れていれば明かり環確保できるだろう」

 自分のことを明かり扱いする火の精霊が今迄にいただろうか?

 最初の場所から歩くこと一時間。幸運にも村人達と邂逅することもなく安全な旅路を送っていた。

「そろそろいいのではないのか?」

「あぁ、話せることは極僅かだがな」

 最初に聞くならばきっと精霊たちについてだろう。今は炎の精霊であるプロクスニアを宿しているが他にもいるならせめて名前だけでも知っておきたい。

「…いや、まずなんでプロクスニアは新月の魔法で呼び出せたんだ?それだったらほかの精霊も呼び出せるんじゃ?」

「なるほど、ならばまず精霊の属性を話そう。我は火の種族だが他にも水、木、光、闇の精霊がいる。さらに各種族には属性が付与されており我は死と生を付与されている」

「不死鳥ってコトか?」

「近いな。水には氷と粘質。木には成長と退化、光には反射と時間、闇には吸収と空間といった具合にな」

 吸収と…空間!?

だとしたら俺たちがこの世界に飛ばされたのは――。

「いや、闇の精霊ではない。奴の空間という属性には制約が多くその一つが異世界への干渉なのだ」

「なら、俺たちはどうやってこの世界への転送魔法を使ったんだよ。お前の話なら5人?の精霊の誰かが異世界である俺たちの世界に干渉したことで魔法陣の行使ができたってことになるんだが?」

「それを調べに神殿へ向かっているのだろう。さて、なぜ我が魔女によって呼び出せたか…だが精霊にも種族があるように貴様たちにも適性種族というものがある。それが今回の魔女は火だったというだけの話だ」

「なるほど。だが楯無君はこれからその身に五体の精霊を宿すのだろう?彼の適性種族はどうなるんだい?」

 それもそうだ。こいつの話はおかしなところが多い。いや、別に細かいことは気にしていたら面倒なだけなんだが。

「無属性だ」

「ほう…」

「は?」

 呆けた顔の俺と面白いものを見つけたという顔を見せる新月は足を止める。

「無属性。魔女とその従者というのは毎度この世界の者ではない人物が選ばれるのだが、魔女の適性はまちまちにしてもその従者は必ず無属性となる。これはこちらの世界へ飛ばされた時に無属性になるのではなく、魔女に選ばれる者と無属性の人間は必然的に出会うのだ。その確率は…お前たちの世界の時間に換算して百年に一度、こちらでは三百年に一度だ。さながら運命とも言えるな」

 な!?い、いや、さっきっからこいつは大事なことをサラッと言っていくな!こっちと元の世界の時間の差だの、運命だの、さらには前の魔女だって?

「前の魔女ってことはそいつは元の世界に……」

「「いや、この世界で死んだ」」

新月とプロクスニアの声が揃う。プロクスニアはともかく何でそんなことを新月が知っているのだろうか?

「察しがいいな、魔女」

「さっきまでの話を聞けばわかるよ。それに、少なくともこの世界で十年以上生きなければ神殿が作られるほどの功績を残せないだろうからね。十年もこの世界にいるならば戻れなくて仕方なくここで生きる道を選んだって感じだね」

「……」

 プロクスニアはかなり驚いた表情を見せる。恐らく新月の言っている通りの結末だったのだろう。それにしてもさすがは頭脳明晰の学園始まって以来の天才だ。いや、それだけでこの結論を出せるようなものなのか?

「聞きたいことはこれだけか?」

「ああ。ありがとう」

「今回は期待しているぞ、魔女。それと、従者。私のことはプロクスと呼べ。堅苦しいのは嫌いだ」

 新月はにっこりと笑って無言の返事を返す。まぁ、この中二病のことだ、プロクスが嫌と言っても無理やり連れていくだろう。

 まだまだ続く森は明日には抜けられるだろう。西の神殿はまだ遠い。

 

続く…?



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