女の・・・
「碧いおもちゃ箱」シリーズでご覧下さい。
「女の・・・」
初めて赤い刻印を見たのは
忘れもしない十四の冬
深紅の色を湛えた蛇が
するりするりと私の躰を降りてゆく
女に生まれてきて良かった
あの日から幾歳月が過ぎた今
大好きなあなたが
こんなにも私を愛してくれる
身も心も焼き尽くすかの様に
女である私を
「女」
平凡な女でも歳を重ねれば
どういうわけかそれなりに
悪い事ばかり覚えてしまう
酒を飲み、美食をたしなみ
嘘と知りながら甘い囁きに
酔い、身も心も投げ出して
そんな自分自身にさえなお
飽く事もなく酔ってしまう
誰もあたしのことなんか
背負ってくれる男なんて
ただの一人もいやしない
そんな繰り言もいつしか
日常の一部となりそして
また女は一つ、年を経る
「幸せな記憶」
どんな女でも時が満ちれば
幸せに想う記憶を必ず持つ
その至福を大事にしながら
感じながら女は生きてゆく
幾歳月を重ねても穏やかに
生涯たとえひとりきりでも
「性」
想いは遠く彼の人へ
なす術もなく
過ぎゆく人々と肌をあわせし夕べ
己の性を呪う
何故 女に生まれてきたのだろう
「性」
肌を合わせ
重ねかさねてなお
埋めやらぬ、この
空隙を持て余しつつ
泣くのは女
いつでもおんな
「泣けぬ女」
泣きたい 泣きたい
唯、泣きたくて
けれど泣き方を忘れてしまい
道化のように虚しく自嘲う
仮面の下には
一人で泣くのが惨め過ぎて
泣けない女が
今宵もここに
「疑問符」
男なんてそんなものよ
したり顔して彼女に
そう言ったけど
何がどれだけ理解っているのか
あたしという女
「口唇」
口唇が淋しい寂しいと
泣いている
そんな夜更の女の独り