三匹の子ブタ (もうひとつの昔話17)
ブー、フー、ウー。
三匹の子ブタがおかあさんと暮らしていました。
ある日。
おかあさんが子ブタたちに言いました。
「おまえたち、大きくなったんだから自分の家を作りなさい」
ブーはワラの家、フーは木の家、ウーはレンガの家を作りました。
そこへオオカミがやってきます。
オオカミは子ブタたちを食べようと、ブーの家を息で吹き飛ばし、フーの家は火をつけて燃やしました。
しかしウーの家だけは、息を吹きかけても、火をつけてもびくともしません。ならばとオオカミは、屋根にのぼって煙突から忍びこみました。
ところが待っていたのは火の燃える暖炉。
オオカミは大ヤケドをして、いちもくさんに森へ逃げ帰りました。
そんなある日。
「こまったわねえ」
おかあさんが空を見上げて言います。
「どうしたの?」
子ブタたちも空を見上げました。
「ちっとも風が吹いてくれないんだよ」
「風が吹かないと、どうなるの?」
ブーが聞きます。
「風車がまわらないんだよ」
「風車がまわらないと、どうなるの?」
フーが聞きます。
「小麦をひけないんだよ」
「小麦をひけないと、どうなるの?」
ウーが聞きます。
「パンが作れないんだよ」
「たいへんだ!」
三匹はそろって声をあげました。
「だけど、お天気ばかりはどうにもねえ」
おかあさんはあきらめ顔で家に入りました。
でも、くいしんぼうの子ブタたち。パンが食べられないとあっては一大事。
「風を吹かせよう」
「風車をまわそう」
「小麦をひこう」
三匹そろって森へと出かけたのでした。
森についた三匹の子ブタ、さっそく森の中に向かって叫びました。
「オオカミさーん」
「出ておいで、オオカミさーん」
「いるなら出ておいで、オオカミさーん」
――だれだ?
オオカミは声のするほうを見ました。
するとなんと、そこにはあの三匹の子ブタがいるではありませんか。オオカミはこっそり森を出ると、そっと三匹に忍びよりました。
それは百も承知の子ブタたち。
捕まる前に走って逃げ帰り、おかあさんのいる家の中にかけこみました。
風車がまわり始めました。
「あら、風が吹き始めたのね」
おかあさんが風車のまわる音に気がつきます。
「風じゃないよ」
「オオカミの吹く息だよ」
「オオカミの吹く息でまわってるんだ」
外には家を吹き飛ばそうと、ひっしに息を吹いているオオカミがいました。