4話
喉を鳴らしてこちらを見るそのモンスターはまさに狼。いや、狼にしては体毛が緑がかっていて毛も多い。ゆらゆらと毛先は揺れ風になびいている。
「な、な、なにあれ？！え？！モンスター？！」
《お、落ち着いてください！あれはウッドウルフというモンスターです！》
「やっぱりモンスター？！えぇ、俺狙われてる？！」
じりじりとウッドウルフは近づいてきている。
《ウッドウルフは比較的低レベルのモンスターなんですけど、凶暴で人を見ると獲物だと思って襲ってくるんです！》
ですよね！そりゃ異世界だもんね！ファーストエンゲージがこんな早いなんて思ってなかったよ！！
「ど、どうする？！戦わないとか？！」
《だ、ダメですよ陸さん！陸さんにはっ》
「うぉりやぁ！！」
俺は女神の言葉を最後まで聞き終える前に足元に転がっていた大きめの石を投げる。
ゴンッ！という音とともにウッドウルフへ直撃する。
「やった！当たった！」
《あぁ！ダメって言ったのに！！》
「はぁ？！だって攻撃しないとやられちゃうだろ？！」
《だーかーら！能力のこと忘れたんですか陸さん？！見てくださいよウッドウルフを！》
ウッドウルフを見ると石が当たったのになんのリアクションもない。いや、正確には医師を投げた俺に先ほどよりも大きく喉を鳴らし、大きく口を開け牙を見せてはいる。ダメージが入ったというより俺への敵対心だけ上がったみたい。
「あれぇ？！なんで？！ダメージ入ってないよ？！」
《だって陸さん攻撃力0じゃないですか！そりゃダメージなんか入りませんよ！忘れたんですか姫プレイの能力！》
「あっ」
目の前のウッドウルフに精一杯ですっかり忘れていた。そうだ俺攻撃出来ねぇんだ。
攻撃できないって事は＝攻撃してもダメージ入らないって事なのね。俺終わってんじゃん。
《逃げましょう！はやく！》
「うわぁぁああ！！」
俺は叫びながら振り返り走り出す。
ヤバイ。これは非常にヤバイ。Lv.1のなんも装備もしてない状態でモンスターに襲われ攻撃手段もない。これゲームオーバーなりかけてるんじゃないか？
俺は必死に森の中を駆ける。木の根っこや土のくぼみで走りづらい。それが余計に俺を焦らせる。
「ハァッ、ハァッ、ヤバイよなんだよこれっ！異世界やばいよ！！」
《そんなこと叫ぶ前にもっと走ってください！追いつかれますよ？！》
女神の言葉に俺は後ろを振り返る。
そこには口を大きく開け全力で追いかけてくるウッドウルフ。
「めっちゃ追いかけてきてる！！嫌だー！！」
焦る俺。煽る女神。食べたいウッドウルフ。なにこれイメージしてた異世界の始まりと違う。
「っうわぁ！」
必死に走ってると足元を大きな石に取られ転ける。
ズサァと身体を転がしながら俺は痛みと恐怖に包まれる。
「いってぇっ！ってあぁ！」
身体を起こそうとすると目の前には飛び交ってきているウッドウルフが入る。そして、大きく一口がぶりと噛み付かれる。
「っあぁああっ！」
痛い、痛い、痛い！
ウッドウルフは左腕に噛み付いたままより深くまで牙を食い込ませようとして来る。
今まで体験した事のない痛みに俺は思考できなくなる。
「はなせぇっ！」
引き離そうと左腕を振るうが牙は筋肉の深くまで食い込み外れない。それどころか腕を振るったことでより牙が食い込み痛みは増す。
「っっっあぁ！」
言葉にできない痛み。
あぁ、もうこのまま俺は初めて出会ったモンスターに食い殺されるのかと考えた時だった。
ザシュっ
そして、何かが横たえるようにゴトっと音がする。
痛みに耐えるようにして目を瞑っていた俺は恐る恐る目を開くと、そこには首から下が無くなりぶらんと俺の左腕にぶら下がっているウッドウルフの首。
そして
「大丈夫か？！」
俺に声をかける女性。
鎧を着たその女性は手に剣を持っていて、あぁこの人がウッドウルフを倒してくれたのかと理解する。
そして思う。
「ジャンヌ・ダルクってこんな感じなのかな？」
ちゃんとわかり易く書けてるのか不安になるねファンタジー
