2話
はっ!姫は?!姫はどうなった?!
ばっと起き上がり周りを見渡すが姫の姿はない。
姫どころか周りには何もなく、霧がかかり真っ白だった。
「あ、目が覚めました?」
後ろから声が掛かる。振り返るとそこには……
「……女神……?」
「え?あ、はい女神ですけど。よくわかりましたね?」
「え?!ほんとに女神?!」
「はーいそうでーす!女神ですよ!女神!」
緑色の長い髪に白いドレスを着た女性は美しい……なんて言葉じゃ足りないくらい綺麗な人で思わず女神と呼んでしまったがなんか正確みたい。
「えっと……ここどこです?俺確か姫庇って……」
「ここはですねー女神エリアっていって転生する前に通らなきゃいけない場所でいわば受付ですね!」
女神エリア?転生?え、俺死んだ?夢?
「転生……ってことは俺死んだんですか?」
「そうですよ!ほら、見ます?あなたが死んだ場所。リアルタイムですよ!」
そう言って女神は手をかざすと何やら霧に映像が映し出される。
そこには血まみれの道路に横たわっている俺と駆け寄ってくるトラックの運ちゃん。そして無傷の姫。
「姫!っあーよかった、姫は守れたんだ……」
それを確認した俺は心底安心する。これで姫を守れていなかったら姫の騎士として不甲斐なさすぎる。
「姫?あーあの女の人ですか。はい、確かに傷一つついてないですね。」
そう言いつつ女神は映像の音声を0にする。
(なんかグロいとか押されて痛かったふざけんなとか言ってるみたいですけどこの人に聞かせるのは酷ですよねぇ……)
「……あれ?俺死んで、転生ってことはまた生まれ変わるんですか?」
「お!そうですそうです!話が早くて助かりますよー!」
姫が守れたのなら悔いはない。気持ちを切り替え転生について聞く。
「転生ってことはまた赤ちゃんからかぁ。今度はイケメンになりたいな……あ、できればまた日本がいいです!アニメ見たい!」
「あー……えっとですね、転生は転生なんでけど、あなたのいた世界じゃなくて違う世界に転生してほしいんですよ」
「い、異世界?!ほんとに?!」
「え?あ、はいそうですけど」
「いやったぁぁぁああ!!」
俺は大喜び。異世界!まさに夢に見た場所!なんど妄想してきた事か!アニメだけかと思ってたらまさか現実になるとは!!
「そ、そんなに嬉しいですか?」
「はい!もちろん!それで、どんな世界なんですか?!」
「あ、はい。それで異世界についてなんですけど、魔王がかなり調子に乗っちゃっててですね、もう無視できないなーって事で勇者を1人転生させようって上からの通達で……」
へぇ、女神にも上司とかいるんだ。神様かな?あれ?女神も神だよな?
っていうか!
「魔王!勇者!なにそれファンタジーの王道じゃないですか!えぇ?!俺でいいんですか?!」
「なんかテンション高いですね……まぁ、はい、あなたにお願いできればなぁと」
「謹んでお受け致します!是非!」
「ほんとですか?!良かったァ最近異世界とか信じてくれない人多くて大変だったんですよぉ。早く決めないと残業になっちゃうし、上には残業するなって言われちゃうからしくしくサビ残するしかないかなって……」
聞きたくなかったそんな現実。
「でも!あなたがやってくれるみたいで安心です!それでですね!サービスとして赤ちゃんからじゃなく青年からのスタートになります!」
あ、そっか。普通に転生したら赤ちゃんからだったのか。よかったぁまたおむつとか嫌だったし。
「あとですね、いくつか渡したい能力とアイテムが……」
「チートですか?!チートなんですか?!」
「うーん……まぁチートとまではいかないんですけど、まずは限界突破の能力ですね。まぁステータスが上限なくなります。」
ステータスとか普通に言ってるけど転生する先はかなりゲームに近い世界なのか?なにはともあれ限界がないってのは重要だな。
「あとは……え、なにこれ。ほんとに?上は何考えてるの?は?」
「?どうかしたんですか?」
「……えっとですね、もう1つ上からあなたに渡せっていうか、つけろって言われてる能力があってですね……」
「それがどうかしたんですか?」
「姫プレイ……物理、魔法両方の攻撃が出来ない代わりにサポート魔法を際限なく使用可能……とのことです。」
は?攻撃できない?え?俺勇者になるんだよね?
「……その能力はつけないってできるんですか?」
「すいません。上からの通達でして……」
俺はどうやって勇者をしていけばいいのかわからなくなりそうだった。