1話
大学のサークル、【アニメコスプレ研究会】の部室に俺、岡部陸は来ていた。
目的はもちろん姫に会うため。
「姫!今日もコスプレ可愛いよ!姫っ!」
「えへへーありがとー!」
活動内容はアニメキャラクターを追求するとともにコスプレをしてキャラクター自体になりきろうというもの。
そんな我がサークルに一際輝く一輪の花こそ、俺の愛する姫であった。名前?そんな俺何かが軽々しく本名なんて呼べませんよ姫は姫です。
「そーいえば今日は他の人きてないの?陸くんだけ?」
「はい!他のみんなは新しいコス作る材料買いに行ってます!」
「そーなんだ!なんだか2人っきりってドキドキするねっ」
オフゥっ!姫が!姫が俺と2人でドキドキすると!それって恋なんじゃないの?!loveはじまっちゃうんじゃないの?!いやいや待て待て俺はあくまで姫を守る騎士!しつこく姫を勧誘してくるテニサー(憎しみ)やチャラ男から守るという使命が!
「そ、そ、そう?!ど、ど、ドキッ、ドキドキってそれっ」
「あ、そーだ!喉乾いたしジュース買いにいかない?一緒に!」
「行きますとも!是非!」
はぁやはり姫は美しく。どもった俺なんかにジュースを誘ってくれるなんて何という女神か!まったく、他のサークルの奴らが「え?お前のサークルの姫?いや、姫ってより魔女……」「あれオークだろ。むしろ姫犯すほうだって。」「あれが姫なら俺が女装したら女神になれるわ」とかふざけた事言っていたがこの女神のような姫を見たら絶対考え改めるはず。
「あ!見てみて!道路の向こうにネコちゃんいるよ!にゃぁーん!」
「え、ネコ?」
姫が猫を見つけたと走り出す。とてとてと口に出しながら走っていく姿は姫そのもの。いや!二次元ですら姫の美しさには勝てないかもしれない。
「っ!姫!危ないよ!」
微笑ましく姫を見ていると、姫が渡ろうとしている道路にトラックが!危ない!
「姫ぇ!!」
「ぶぉっ?!」
俺は咄嗟に姫を押し出した。姫の口から驚いたような声。そして目の前には猛スピードのトラック。
「姫!ごぶz」
グシャリ。姫に無事か確認する前に俺はトラックに轢かれる。
身体中が痛い……意識もはっきりしない……でも、姫を守る騎士としては悔いはない!たとえ死んでも安らかに……
「ってぇーなんだよいきなり……うわグロっ」
安らかに逝こうとしていた俺の耳に入ってきた姫の声。
あぁご無事だったんですね……そう思ったところで完全に意識は途切れた。