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睦月キラー&インヴァルナラブル その3

久しぶりの投稿緊張します。

              

        *     *


 発射された水は少年に当たらず、頬をかすめた。

 それは偶然ではなく、僕の手を包むように清水が手を重ね、射線をそらしたからだ。

 彼女はゆっくりと口を開く。

「私、全部知ってましたよ。灯火くんが私を殺してしまうんじゃないかって悩んでたことも」

 僕はこぼれんばかりに目を見開いた。

 そんな僕に清水は優しい笑みを向ける。

「でもそんなの悩むまでもないんです。だって灯火くんは初めて会った時から今まで一度も私を殺してないんですから」

 普段の優し気な口調とは違い、凛とはっきりと反論を許さないような口調でいい放った。

 そう。僕は初めてあった日からずっと彼女を殺せなかった。

 今にして思えばあの時、僕は彼女に一目惚れをして、恋に落ちた。

「今まで大丈夫だったからってどうしてこれからも大丈夫だといえる?」

 話を聞いていた少年が口を挟む。

「今まで大丈夫だったからこそですよ。同じ屋根の下で暮らしていれば殺すチャンスなんていくらでもあったでしょう?でも私は一度も灯火くんに殺されたことは……いえ傷つけられたこともないんです」

 清水は一度、そこで深く息を吸って。

「どれだけ私が無防備に振る舞っても困ったような顔をするばかりで、灯火くんは手を一切出しませんでした。それなのに何を疑えっていうんです?」

 まるで挑むように断言した。

「清水……」

 僕は嬉しさで目に涙が浮かんだ。

 自分でも信じられなかったのに、清水は信じてくれていた。

 それがどれほど僕を救ってくれるのか、きっと清美にはわからないんだろうな。

「それにこの子は私と同じなんです。世界に絶望してて誰かに殺してほしいだけなんです」

「え?」

 清水の予想外の告白に涙も引っ込んだ。

 脳裏に浮かんだのは初めて会った時、殺そうとしているのに抵抗しない彼女にした問いの答えだった。

『誰も信じられない世界で生きるのは辛いです。それならいっそ貴方が殺してくれるなら死んじゃってもいいかなって』

 そういった清水は世界で一番綺麗な悲しい笑顔で僕に殺されようとしたのだ。

 彼女の過去はよく知らないけど、何度殺しても再生して死なないの体質からひどい扱いを受けていたことは聞いている。

 でもこの少年は彼女に殺意を向けて傷つけ、僕にも憎悪を持っているようだった。

 そんな人間が殺されたいだなんて思うものだろうか。

「あなたの家族の名前はなんですか?」

 戸惑う僕を余所に清水は続ける。

「……サーバルト家」

 ぽつりとかすれた聞きとりづらい声だったが、聞き覚えがあった。

 忘れるはずもない。

「き、君はデュアス……デュアスの家族なの?」

 そう。僕の人生の転機となった少年の名前こそがデュアス=サーバルトだ。

「そうだ。お前が最後に殺した標的の生き残り……弟だ」

 少年は憎々しげに僕を睨んだ。

「弟?デュアスから聞いたことないけど」

 内心、首を傾げる。

 父や母のことは聞いたが、弟の話は全く聞いたことがなかったからだ。 

「それはそうだろう。(あいつ)に……いや家族(あいつら)にとって俺は奴隷だった」

 思わず絶句する。

 デュアスはとても穏やかな少年で誰かを傷つけるような性格ではなかった。

 そう思っていた彼は僕の知らない残酷な一面を持っていたんだ。

 じゃあ彼は本当に僕のことを友達だと思っていたんだろうか?

 だが少年は畳み掛けるように事実を告げた。

「お前があいつらを殺した日、俺は憂さ晴らしに殴られていくつかの骨を折られたあげく、頭からお湯をかけられて治療もせずに物置小屋に放置されてた。だからお前は俺を死んでると思って見逃したんだろうな」

 あの日のことはデュアスを殺したショックでほとんど覚えていない。

 道具を使ったのか、どんな風に何人殺したのか、何も覚えていないのだ。

 覚えているのは友人を自らの手にかけたことだけ。

 だから生き残りがいてもおかしくはない。

 けれど、その前の僕でも、そんな状態の人間を見れば手を下すまでもないと見逃していた。

 自分で手を下さなくても、清美のような特殊な体質の人間じゃなければ死んでしまうから。

「あの後、大変だったんだぜ?死んだほうがましな痛みが何日……いや何か月も続いてやっと怪我が治ったと思えば、醜い火傷痕のせいでまともな仕事につけなかった。仕方なく生きるために人殺しだってやった。だから俺はお前を憎んだ。あの時、お前があいつらと一緒に俺も殺してくれてたらこんなに苦しまなかったのにってな!」

 少年は自分の凄惨(せいさん)な過去を容赦なく僕に突きつけた。

「なあ、殺してくれよ。今さら一人や二人くらい増えたって変わらないだろ?」

 フードの影から覗く少年の目は僕に向けられているはずなのに、何も映っていない。

 希望も何もない死人と同じどろりと濁った虚ろな目。

「…………っ!?」

 何も答えられなかった。

『殺人鬼となってしまっては何人殺しても、来世で人間にはなれない』

 そう、天使のヴェルから聞いている。

 だからといって、少年を殺すのは違う。

 うまく説明できないが、これ以上の殺人を犯すことに、自殺したくなるほどの強い拒否感があった。

 でも、それが償いになるのかもしれない。

 かつて僕が見逃したせいで苦しんだというのなら、少年の命を絶つのは解放になるのではないだろうか?

 これ以上の苦しみを与えないためにも少年の望みを叶えるべきなんじゃないか?

 それに、もしここで見逃したら、また清水やアパートの住人達が犠牲になるかもしれない。

 僕が手を汚すことでみんなが救われるなら、僕は……。

「変わりますよ」

 揺れる心を断ち切ってくれたのは清水だった。 

「結果は同じでも、ただ命令されて殺すのと、自分の意志で殺すのは全然違います。だからさせません」

 清水は真っ直ぐな目を少年に向ける。

 彼女の手に力がこめられた。 

 振り払おうと思えば、簡単にできるが、僕は何もできなかった。

「月並みなことをいいますが、あなたは私よりも若いんですよ。一度も幸せになったこともないのに死んでいいんですか?」

「お前は幸せを知らない人間が幸せになれると本気で思ってるのか?」

 少年は歪に唇を吊り上げてあざ笑う。

 人を殺しすぎた殺人鬼の僕か。何度殺されても死なない清水か。それとも不幸に不幸を重ねたような人生の自分自身に向けてか。

 僕にはわからなかった。

 でも清水にとってはどれでもよかったらしい。

「だったら私が……いえ。私達が教えます!ね、灯火くん!」

「え!?僕が教えられるかな……」

 急に話を振られて驚くが、すぐに不安になり眉尻を下げた。

 だって幸せなんて最近知ったばかりだ。

 そんな僕が幸せを教えるなんてできると思えない。

「大丈夫ですよ!だって私達は幸せ知らずの先輩ですから!」

 そんな情けない僕に清水は胸の前で両拳を握り、笑みを見せた。

 彼女らしい前向きな言葉だ。

「それ全然嬉しくない先輩だよ……。でも事実だから否定できない……。でもそうだね。その通りだよ」

 清水も僕も幸せといえない過去を持っている。

 けれど、今は違う。

 大家の四方山久遠や他住人達に救われて、今幸せに暮らせている。

 そんな二人だからこそ教えられることがある……かもしれない。

 少なくとも少年を殺してしまうより、生かすほうが償いになるような気がする。

「はっ……。なんだよ、それ。バカじゃねえの」

 少年はそんな二人を鼻で笑い、気を失った。  

 急所を外したとはいえ、出血量が多い。

 このままでは出血死してしまうが、少年の怪我と武器のことがあるため、救急車は呼ぶことが出来ない。

「とりあえず傷の手当をしないといけませんね。ヴェルさんって魔法が使えるんですよね?猫さんみたいに治せませんか?」

 勤務先の店長の猫はなんでもできる魔法使いだが、今の時間帯に電話をかけるのははばかられた。

 猫より、住人のヴェルの方が同じ歳で気安いが、彼はバイトを何件もかけ持ちしているので、家にいるのかさえわからない。

「うーん。どうだろう?ちょっと電話してみるね」

 僕は少年の上からどき、ポケットから携帯を取り出して電話をかけた。

「あ、ヴェル?今、大丈夫?よかった。あのさ、ちょっと怪我人がいるから治療してもらえないかな?うん。色々あって……ありがとう。今からそっちに行くね」

 ボタンを操作して、通話を終える。

「大丈夫だったよ。家で治療することになったから早く帰ろう」

「よかったです。じゃあ行きましょうか」

「あ、その前に」

 上着を脱ぎ、清水の肩にかけた。

 少年に襲われたせいで服が血まみれだったのだ。

 そのままでは家に帰りつく前に警察に捕まってしまう。

「えへへ、ありがとうございます。やっぱり灯火くんは優しいですね」

 清水は上着を両手で握りしめ、頬を染めて笑みを浮かべた。

 傷つけられたというのに、清美はまったく気にしていない。

 きっと彼女にとってこれくらいの怪我は軽傷と変わらないんだろう。

 そう思うと、胸の奥がずきりと痛くなった。

 なんだかその笑顔が痛々しくて、僕は不自然にならないように顔をそらして、少年を背負って歩きだす。

 何もいわなくても清水はその隣をついて歩いてくれた。

 日は完全に落ちて暗かったが、不思議と心細さはなかった。

 変わらず隣に清水がいてくれるからかもしれない。

 しばらくしてやって来た僕達を見て、ヴェルは顔をしかめたが、わけも聞かずに治療してくれた。

 僕よりもずっと賢い彼はいろいろわかっているのに、僕たちが引かないとわかっているから言葉を飲みこんだ。

 お礼をいって別れて自分の部屋に帰った。

 少年はまだ目を覚まさなかったが、怪我は治ったらしい。

 とりあえず彼を布団に寝かせることにした。

 後のことは彼が目を覚ましてからだ。

 その間に風呂を済ませた清水が椅子に座っていた。 

 僕は清水の側で、土下座した。

「清水、謝ってすむことじゃないけど巻きこんでごめん」

 床に頭を擦り付けるように深く深く下げる。

 清水は不死とはいえ、痛みを感じないわけじゃない。

 文字通り、死ぬほど痛い思いをさせたし、嫌なことも思い出させた。

 いくら謝っても謝り足りない。

 この命を差し出して許されるなら喜んで差し出す。

 いや、許されなくていい。

 少しでも清水の気持ちが晴れるならなぶり殺されてもいい。

 本気でそう思うのに。

「灯火くんが謝ることは何もないですよ。ただ今回は運が悪かっただけです。おみくじにもそう書いてありましたし」

 清水は笑って許してくれた。

 でもそれじゃダメだ。

 被害者で誰よりも大切な君に何も償わずに許されるなんてありえない。

「なら……責任とってずっと隣にいてください」

 心の声を聞かれたのかと思った。 

「……僕が隣にいていいの?」

 今回のようなことがまたあるかもしれない。

 それでも君は僕の隣にいてくれるの?

「灯火くんがいいんです。灯火くんは私にとっていつでも助けに来てくれる白馬の王子様ですから」

 清水はうっとりと頬を赤く染める。

 白馬の王子様なんてきれいな者じゃない。

 むしろ人に恐怖を与える死神に近い。

 もしかしたら彼女はまだ僕に殺してほしいと思っているのだろうか?

 僕のわがままでしかないけど、清美にはずっと隣にいて笑っていてほしい。

 いつか彼女が自分自身をもっと大切に思えるようになるといい。

 いや違う。僕の事情に何度も巻きこんでおいていうのはおかしいかもしれないけど、彼女をもっと大切にしよう。

 そうすればきっと彼女も、自分を大切にできるはずだ。

 僕は新たな決心を胸にした。

 

        *     *


 灯火くんに初めて会った時に思ったのは、“やっと私を殺してくれる人に会えた”だった。

 繰り返される実験に、心は擦りきれていつからかずっと死にたいと思うようになった。

 そして、普通の人に生まれ変われば幸せになれるってずっと信じてた。

 でも現実はそうじゃなかったんだ。

 灯火くんに出会って、いろんな人に出会って。

 気づいたら死にたいなんて考えなくなった。

 そうしてようやく気づいたんだ。

 幸せってこんなに近くにあるんだって。

 それを教えてくれて、絶望から救ってくれたのは灯火くんだった。

 灯火くんは自分のことをすごく汚いもののようにいうけれど、私は人の形をした化け物だ。

 彼が思うような綺麗な存在じゃなくて、生き物の理を外れた気持ち悪いものだ。

 それでも許されるなら、私はどちらかの人生が終わるその時まで隣にいたい。

 

* *


「あぁあああ゛!もう嫌だ!なんだよ、こいつら!バカじゃねえの!?」

 このところ毎日のように響く声はもはや、朝の恒例行事となりつつあった。

 灯火と清美の宣言通り、少年に幸せを教えるために、半年も一緒に暮らしていた。

 名前がないという少年に二人はまず名前を与えた。

 『聖川幸永(ひじりかわこうえい)』。

 二人の苗字をとって、いつでもいつまでも二人と一緒だと、今まで知らなかったこと幸せが末永く続くように、という二つの意味をこめた。

 幸永は意外にもすんなりと住人達とも打ち解けて仲を深めていた。 

 住人達は個性的な人が多いために器が大きいからだろう。

 特にヴェルと気があったようで、一緒にいることが多い。

 ヴェルは一人でいることが多いので、誰かと一緒いる姿を見るのは少し新鮮だ。

「幸永、朝からそんな大きな声を出したら近所の人の迷惑になるからだめですよ!あ!灯火くん、そっちのケチャップとってもらえますか?」

 清美は姉のようにやんわりと幸永の声量を注意した。

「幸永、それにバカだなんて僕達はともかく他の人にいったら嫌な気持ちさせるからいったらだめだよ。はい、清水」

 灯火は兄のように幸永をたしなめながら、自身の目の前にあるケチャップをとり、隣に座る清美に手渡した。

「ありがとうございます。あ、灯火くんのにもかけますね」

 清美は灯火の目玉焼きに多すぎないように気をつけつつ、けれども綺麗なハートマークを真ん中に大きく描く。

「え、ハ、ハート!?」

 灯火くんは大げさなくらい目を見開いてそれを見つめる。

「私の気持ちです!どうぞ遠慮なく召し上がってください!」

「あ、うん。あ、ありがとう。い、いただきます……」

 付き合い立てのカップルのような二人だけの甘い雰囲気に幸永は内心で砂糖を吐く。

 最初は二人を傷づけた幸永に対する当てつけかと思っていたが、いつでもどこでも始まるそれに、この二人はいつもこうなのだと理解した。

 やや乱暴に朝食を口に詰めこむと、牛乳で胃に流して席を立った。

「ハイハイ。毎朝、仲がよろしいことで」

 幸永はわざとらしくうんざりした声を上げて、自分が使った食器をまとめてシンクに置く。

「仲がいいなんてそんなこと……」

「灯火くんと私は仲良しですか?」

 灯火と清美から向けられる正反対の言葉に幸永は頭が痛くなる。

「誰がどう見ても仲良しだろうよ。ウザイくらいにな。それじゃ俺は出てくから後は2人でよろしくしてろよ」

幸永は座っていた椅子の下に置いていた荷物を持ち、玄関へと向かう。

今日は、幸永がマンションを出ていく日だ。

「待って!ちゃんと見送るよ」

「まだ飯の途中だろ?んなのいらねえって」

「やっぱり考えは変わらないんですね。……幸永がいなくなると寂しいですよ」

清水の言葉に幸永は足を止めた。

「そんなもん、ガキができればすぐになくなるだろうよ」

「子どもなんて僕達にはまだ早いよ!」

「まだ、ねえ。その気がねえのかと思ってたが違うみたいだな。こりゃ兄弟の顔を見る日も近いな」

「え!?いや、それは……」

「産まれたら連絡くれよ」

幸永は今度こそ足を止めずに、玄関へと向かい、靴を履いて外へ出ていった。

「……幸永、行っちゃいましたね」

清水の表情には隠しきれない寂しさが浮かんでいた。

「そうだね。でも彼ならきっと幸せになれるよ」

しんみりとした雰囲気を破るように、灯火は姿勢を正して清水と向き合う。

「き、きき、清美!」

緊張のあまりに声が上ずった。

「な、なな、なんでしょう、灯火くん!」

灯火の真剣な雰囲気に清水も背筋を伸ばし、向きあった。

「好きです!僕と付き合ってくだひゃい!」

灯火は深く頭を下げた。

清水に見えない顔は耳まで赤く染まり、彼の動揺をさらしていた。

「はい、喜んで」

 対して、清水は心の底から嬉しそうに笑った。

おまけ


エレベータを使い、エントランスまで降りてくると赤い髪が見えた。

もちろん灯火ではない。

彼は清水といちゃついているはずである。

こっちから声をかける前に男が振り返った。

「今から出ていくのか?」

たんたんと事実を確認するような声だ。

まあ、前もって伝えていたからな。

「あぁそうだ、ヴェル」

そのまま立ち去ると思っていたヴェルはじっと俺を見つめた。

「本当に行くんだな」

ぽつりと零した言葉に思わず苦笑いが漏れた。

「いつまでも世話になるのもな。それに何もわからねえガキじゃともかく、独り身には仲良すぎて肩身が狭いんだわ」

「まあ……確かにな」

同年代だからと2人の傍にいることも多いヴェルには俺も気持ちもわかるのだろう。

「ここのヤツらってホント呆れるほどお人好しだよな」

これが最後かも知れないと思うと、いうつもりのなかった言葉が盛れだした。

「自分を殺そうとしたやつ助けただけじゃなくて、服を買って、飯食わせて、こんな暖かい家にまで住まわせて。甘すぎるだろ……」

情けなく声が震えた。

顔を見られたくなくて俯く。

「そうだな。俺もそう思う」

「幸せって多分、こういうことをいうんだろうな」

家なんて最悪の場所だった。

それが帰る場所になるなんて思ってもみなかった。

やりたくないことはいくらでもあるけど、やりたいことはわからない。

だから俺は旅に出てそれを探すことにした。

死ぬために生きてきたから、今まで見ていた世界とは違うものが見えるはずだ。

「いつでも帰って来ていい。みんなお前のことを待ってるから」

ヴェルは俺の頭をくしゃりとかき混ぜて、背中を押した。

温かい手の温度に何かが零れ落ちた。

俺は乱暴にそれをぬぐって、背筋を伸ばした。

「じゃあ、いってきます」

振り返らず、一方的にいい捨てて俺はその場を後にした。



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