選択
「究極の選択、ってしってる?」
無邪気に微笑みながら、目の前の少女は口を開く。
「たとえば、『今すぐ死ぬか、死ねなくなるか』とか、『1週間しか生きられないが自由な蝉と、1000年生きられるが動けない木』とか。」
まあ野生の蝉はもう少し生きられるけどね、と笑いながら、つけたす。
「それで?なにがしたいの?」
そんな少女ー俗にいう『神』に、静かに問う少女がいた。
親に虐待され、殺されかけ、そのせいでいじめをうけ、最終的には自分で命を絶ったという、凄惨な過去を持つ少女。
「自殺した人間は、どんな理由だとしても、罪になる。
罰として、私にその究極の選択とやらをさせる気?」
目の前の相手の、冷めた目を愉快そうに見ながら、答える。
「まあそんなところね。」
手を合わせ、テンション高めに言い放つ。
「てことで選んでね!異世界に召喚され、魔王を倒す為に戦う勇者か、次期魔王として生まれ、仲間の魔族を守る為に、戦う魔王か。」
というか、召喚ってこの漢字であってたんだっけー?
自分が言うべきことが書かれた、紙を眺めながら、呟く。
それくらい覚えとけよと、突っ込みが入るが完全無視。
「村人Aとかいう選択肢は?」
「ない。」
善か悪か。人間か人外か。愛か信頼か。
究極の選択。
そして彼女が選んだのはー
『こちら魂管理本部。2つの魂を回収した。1つは国民の為に死に、死を惜しまれた、魔王の少女。
もう1つは、勇者として召喚され、最終的に無抵抗の魔族と、それを守る為に戦った魔王を殺した後、仲間の裏切りにあい死亡した勇者の少年。』
「一回醜い所をみた者は、観察眼が鋭くなる。
この少年は人を疑うってことを、知らなかったからねぇ。」
神である少女は、悲しそうに呟いた。