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『放課後の教室』
「夕日……綺麗だね」
彼女が言った。
燦然と黄金色に輝く教室に二人だけ、僕と彼女。
沈黙。
普段なら耳が痛いほどの静寂に包まれているが、なぜか今はそれが心地よくも感じる。
何か言うべきなのだろうけど、何か言いたいのだけど。
不思議なこの空間に気圧されたのか、二人の間にはただ沈黙があるだけ。
「……綺麗だね」
「うん…………」
もう何度目かになる掛け合い。先ほどから同じ台詞が繰り返される。
想いを伝えることも無く。
緩やかに夕日は沈んでゆく。