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『世界の終わり』

「今日はいい天気だねっ」


ざざぁざざぁと波が押し寄せる海岸を歩く。きらきらと太陽を反射して輝く水面は無数のサファイアを敷き詰めたかのようで。

私はにっこりと笑いながら抱いている『はるか』に話しかける。

この子はまるで綿のように軽い。


「こうやって散歩してれば誰かに会うかもしれないね」


出会いに胸を膨らませてゆっくりと進んでゆく。

さくさく、砂を踏みしめるたびに心地よい音が鳴る。後ろを振り向けば、私の足跡が長く続いていた。

その光景がなんだか嬉しくて『はるか』を強く抱きしめてみる。


「がさがさ揺れる木の音や、そよそよ気持ち良い風の音しかないと落ち着くなぁ」


車が走る音もなく、テレビもラジオも流れない静寂は、自然の音の美しさを最大限に引き上げてくれる。

人の喧騒も、野良の犬猫の鳴き声も、うるさい音は何もない。

何も、ない。


「……一人ぼっちはつまんないなぁ」


誰かとお喋りしたい。

『はるか』に話しかけるだけではなく、人とお喋りがしたい。

このままずっと、孤独が続いていくのであれば私は耐えられないだろう。


「ねぇ……もう誰も生きてないのかなぁ」


私ひとりしか生き残ってないのかなぁ。

そう問いかけても。


縫い目がほつれた『はるか』は何も答えない。

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