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短篇集

アンドロイドはバスタイムの夢を見るか

作者: まんぼう

およそ、古代から色々な発明品があり、それぞれ人の暮らしを豊かにして来たが、

近年に置いて、最高のそれは家庭内アンドロイドの出現だろう。


何しろ、およそ家庭内で人が行動するあらゆる作業をこなし、その知識はインタ-ネットを通じて無限の教養を誇り、またその器用さは人の及ぶ処では無かった。

あまつさえ、その姿は年々改良され、今では本物の人間と区別がつかない様になっている。

只、声だけは合成音声であり、その点だけは改良が許されていなかった。


だが何処にも裏の道と言うものはあるもので、闇社会ではより人に近い音声に変えるプログラムが取引されており人気の声のプログラムは高値で取引されていた。

中でも人気の女優や声優の音声が人気となっていた。


家庭内アンドロイドにはタイプがあり、それぞれ得意な分野別に別れて発売されていた。

・Aタイプは、一般的な家事が得意なタイプでこれが一番売れていた。

・Bタイプは、介護に特化していて、血圧や脈、簡易な健康診断機能も備えていた。

・Cタイプは、心のケアが必要な患者のために作られていて、精神病患者に対する備えも

織り込まれていた。

そして、裏ルートでこれらを改造されて販売されていたのが、Dタイプ、性を奉仕するために改造されたものだった。

皮肉な事にAタイプを購入しても、Dタイプに改造を頼む者が多く、それらの改造業者は大層繁盛していた。


政府はこれを厳しく取り締まったがイタチごっこを繰り返していた。

政府としては只でさえ人口の減少に悩んでいる時に、生殖機能を保たないアンドロイド型ロボットとの行為は許してはならなかったのだ。

そこで、アンドロイドGメンと言う組織が結成された。

その改造を行っている業者を徹底的に壊滅するのが目的なのだ。


宏はこの組織のメンバーの募集に応募した。

元々はアンドロイドのエンジニアをやっていたが、その仕事に疑問を持ったのだ。

それと、機械相手じゃ無く人間相手の仕事をしてみたかったからだ。

組織の大元の経済産業省でも、メンバーに専門家が居るのは願っても無かったので、採用されたのだ。

給料も今までよりかなり良かった。

「これで、嫁さんに旨い物でも食べさしてやれる」

宏はそう思っていた。


仕事に就いてからの宏の活躍は凄まじかった。

以前の仕事からの知識や人間関係を通じて、常識では考えられない線で連中を吊し上げる事に成功していた。

いわゆる「蛇の道は蛇」と言う事である。

いつしか「鬼の宏」と呼ばれる様になって行った。


そんな時だった。

家庭用アンドロイドは通常はそのプログラムの更新のために二ヶ月に一度ネット回線を通じて、

制作した会社のサーバーと交信をしなくてはならなかった。

そして、その日は地球上にある、Aタイプのアンドロイドが交信をする日だった。

だが運が悪いと言うか、その日はサーバーに接続するプロトコル解析サーバーの調子が悪く、申し込むアンドロイドに対して更新の処理が追いついていなかった。

更新が終わるまではアンドロイドは作業をする事が出来ない。

プログラムに書かれた作業をするにはサーバーから更新の許可を貰わないと出来無いのだった。


「いったいどうしたのだ!アンドロイドが動かないじゃ無いか?」

あちこちでそう言った声が聞かれ始めていた。

やがて、それはアンドロイドの販売会社に抗議となって現れた。

会社側も原因を突き止め様としているのだが、原因がこの会社の責任外だったので、判り様が無かったのだ。

頭に来た持ち主が更新の済まないアンドロイドのリセットのスイッチを押してしまった。

一見正常に動き出したかに見えた為、ぞくぞくと真似をする人が増え始めていた。

暫くすると問題が起き始めた。

家庭内の作業がひどく乱暴になってしまったのだ。

それは段々ひどくなり、ついに人が事故で亡くなる事態になってしまったのだ。

いわゆる、暴走が起こってしまったのだ。

更新プログラムが動作しない為、初期の不完全なプログラムのままになったしまったからだった。

経済産業省は事態を重く見て、Gメンに、全ての家庭用アンドロイドを回収する様に命令を下した。

家庭用アンドロイドを持つ事は違法となったのだ。

この回収は徹底的に行われ、この世には裏世界のセックスアンドロイド以外は無くなっていた。


宏の忙しかった仕事もやっと一息だ。

今後は裏のセックスアンドロイドの取り締まりだけがメインの仕事となる。

こちらは、見逃せは沢山の賄賂も見込めるので宏としては悪く無い仕事だった。

性の相手をさせられて人身売買なんかをするより、アンドロイド相手の方が何倍も良いと思ったからだ。

必要悪と言う事だと思っていた。

一日の仕事を終え家に帰る宏

「ただいま、今帰ったよ」

「おかえりなさい!ご飯にしますか?お風呂にしますか?」

愛妻が聴いてくれる。十年一日の如くなのが玉にキズなのだが……

「風呂にする」

そう短く言うと愛妻は着替などを用意してくれる。

「貴方のお好きな40℃にしてあります」

そう言われ温度を確かめると

「一緒に入ろう」と愛妻を誘うと

「はい」と短く言って浴槽に入って来る。

「防水は大丈夫だろうな?」

そう訊くと愛妻は

「大丈夫です。パッキンは新品ですから。自己管理プログラムは正常に動作しています」

「そうか、なら安心だ。さあおいで」

宏はそう言うと見事な肢体の愛妻を抱いたのだった。


「全く、人間は愚かだ、アンドロイドだってメインサーバーの電源を切ればそれで動かなくなるのに、初めに原因を追求なんかするからさ。そんなのは後でいいんだ。ひとは過去の災害の教訓も忘れてしまう生き物なんだな。こいつは俺が個人的に改良したタイプだから会社のサーバーの影響を受けない。その点では裏のアンドロイドと同じだが、こちらは万能型さ。それに誰にも見破られはしない……」

「ご主人様、今日はお仕事大変でしたか?」

「ああ、大変だったけど、お前とこうして楽しんでいると、全て忘れてしまうよ」

「それは嬉しいです」

そう言ってアンドロイドは唇を重ねてきたのだった……



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